検証結果のまとめ(2)


 引き続き黒板に板書を続ける赤バニー女教師ナミミのターン。


「次に。『ニンジン召喚』では一点モノの装備とかも複製して増やすことができます。ニンジン限定ですが」

「えっ?」


 ここで再びナミミ様が頭を下げる。


「すみません。実はニンジンスピア。あれ、兵士の装備といいましたが、兵士の装備を特別に加工して用意したものだったんです」

「……そうだったんですか? 一般装備にするにはやけにカワイイ槍だと思いましたが」


 バニーガールが使うならそんなもんだろう、と思って何も気にしていなかった。


「召喚、というからにはどこからか持ってきている可能性もあったので。知らないうちに窃盗しているというのは困りますよね? だから確かめる必要があったんです」

「ああー、そりゃ確かに。むしろ確認してくれてありがとうございます」


 知らないうちに泥棒になってるかもしれなかったわけか。助かった。



「そして、召喚にはMPを消費します。野菜としてのニンジンから離れているものはMPを消費するようです。特に魔法は本来発動に必要なMPが上乗せですね」

「あ。この間色々なニンジンっぽいものを召喚したときのヤツですね」


 おかげで魔法もファイアーニンジン、アイスニンジン、アースニンジン、と、ナミミ様が使える『ニンジン系魔法』を使えるようになっている。

 自力での魔法はまだ生活魔法の『浄化(消費MP1)』くらいしか使えていない。洗濯や洗い物、シャワーの代わりにも使える清潔魔法で、これは必死に覚えた。



「というわけで、今後の方針です。コガネには引き続きLv上げをしてもらうと共に、日常生活で見かけるあらゆるものを『これはニンジンと言えるな』と紐づける訓練をしてもらいたいです。そして、それを基に異世界の物品を色々召喚できるようになってくれれば最上ですね」

「? これはニンジンと言える……というと?」


 ふむ、とナミミ様は3秒だけ考えて、手に持ったニンニクを見せて口を開く。


「たとえば、ニンジンって野菜で、円錐形状ですよね? あと、皮を剥いて食べます」

「はい」

「じゃあこのニンニクもよく見たら潰れてるけど円錐形状だし、皮を剥いて食べますよね? そして野菜です」

「はい」

「……つまりニンジンと言っても過言ではないのでは?」

「いやいやいやいや!? 過言では!?」


 あまりの暴論に思わず突っ込みを入れてしまった。


「コガネのスキル的に、コガネがそう思い込むのが大事なんです。……ほら、食べ方的にはほぼニンジンですよ? 皮剥いて食べるんですから」

「……いや、でも」

「信じてください。私を」


 上目遣いで俺を見るナミミ様。だから、その、胸元丸見えなんですけどバニースーツ!

 くっ、ドキドキする……!


「ニンジンですよね?」

「は、はい。……うー、うーん、言われてみればニンジン……?」

「どっちも野菜ですし、焼いても生でも美味しく食べられる。名前もニンが被ってる。これはもう50%以上ニンジンでしょう? ほら、四捨五入すればニンジンですよ」


 言われてみると、なんかそんな気もしてきた。

 ……確かに半分以上ニンジンなら、もうニンジンでいいんじゃないか?

 白いニンジン、ってのもあった気がするし……ドデカ白ニンジンもあるし……


「今ですコガネ、召喚を!」

「『ニンジン召喚』!……おお!? ニンニクを召喚、できた!?」


 俺の手の中には、ちゃんとニンニクがあった。


「……フフフ、元々昨日の時点では召喚できてたんですから、行けると思ってましたよ」

「な、なるほど」


 そしてナミミ様は、黒板に『ニンジン判定はガバガバで思い込めば大体行ける。やっぱり万能では?』と書き加えていた。


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