『ニンジン召喚』の可能性
そして翌日。俺達は辺境ムーンフォール領に到着した。
正確には昨日止まった宿があった町もムーンフォール領の一部だったらしい。
(ちゃんと使用人用の部屋で寝かせてもらえたし身体を拭く水と布ももらえた)
辺境ってこんな近いのか、と思ったのだが、俺がナミミ様にニンジンをあげている間に転移ゲートを通ったりしていて大幅ショートカットした結果だった。普通に馬車旅をすれば2ヶ月はかかるんだとか。
このゲートも普段は使えず、元々前線から忙しいムーンフォール辺境伯を呼ぶために金バニー女王が準備してくれていたんだそうな。もっとも、急な襲撃があり来れたのは娘のナミミ様だったわけだが。
「……夢じゃなかったなぁ」
「どうしましたか、コガネ?」
「いえ。これは夢で起きたら元の世界、とか少し期待してたのが外れただけです」
馬車内で正面に座る金髪赤バニー美少女のご主人様を見て、本当に異世界に来てしまったんだなぁとしみじみ感じ入る。それもこんなバニーガールだらけの頭のオカシイ世界に。
でも美少女のバニーガールがわんさといるとなれば、むしろアリだ。
そう思って馬車の外を見ると、洗濯物を干すでっぷりしたオバちゃんが居た。勿論バニーガールで……布のスーツがミチミチと悲鳴を上げているようだった。
俺はそっと目をそらした。
美女ばかりの世界じゃなかったんやなって。
バニーならなんでもいいんですかね? 逆にちょっと見直したよ神様。
「……城のバニーさんはみんな美少女でしたね?」
「ええ、城仕えする者は身だしなみも整える物ですから」
「あ、でももちろんナミミ様が一番可愛いくて素敵なバニーでしたよ!」
「ふえっ!? そ、それは、ありがとうございます……」
照れて顔を真っ赤にするナミミ様。よし、ペットポイントを稼げたぞ! いっぱい媚び売って可愛がってもらわなきゃな……!
「それと昨日言いそびれました。『ニンジン召喚』についてなんですが」
「あ、キントキ下さい」
「どうぞ。……えーっと、どうやら出せるニンジンは1種類ではないようでして」
「ほむ?」
ポリポリと金時ニンジンを齧りつつナミミ様は首を傾げた。このうさちゃん可愛いなオイ。
「『ニンジン召喚』!……こちらが昨日召喚されたときに見せたニンジンです」
「まぁ! これは美味しそうで立派なニンジンですね! 一級品です。特級に手がかかるかどうかといったところでしょうか」
「そして先ほどの金時ニンジン……少なくとも2種類のニンジンが出せています」
「となると、3種類目、4種類目のニンジンが出せてもおかしくないということですね」
ごくん、と金時ニンジンを飲み込むナミミ様。
「――『ニンジン召喚』にはまだ見ぬ可能性が埋まっている……ということですね」
「はい。ナミミ様のニンジン係を務めつつ、そこを追及してみたいんですが……良いでしょうか?」
勝手にやっても良かったかもしれないが、俺は
「許可します。……では早速新しい種類のニンジンを出してみてもらっても?」
わくわくとキラキラした瞳を向けてくるナミミ様。……そして勝手にやらなかった理由がもう一つ。
「……すみません、ネタ切れです」
「えぇ……」
俺はニンジンに詳しい人間ではなかったのである……!
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