キントキ
しかし馬車で移動しているわけだが……思っていたよりも全然揺れない。
道は整備されているし、馬車自体もサスペンション(あるいはそれに相当する魔法か何か)とかで対策されているような感じがある。
「ナミミ様。俺、なんか役に立てますかね?」
「あら、気にしなくてもいいですよ。一応とはいえコガネは私の奴隷。奴隷の生活の面倒をみるのは主である私の義務ですから」
どーんと頼ってください! と胸を張るナミミ様。
「でも、魔王との闘いで最前線の領地なんですよね? 流石に奴隷が遊んでるわけにはいかないでしょうし」
「……それは、まぁ、確かに。何かしら仕事をしていただければ助かりますが……コガネは何ができるんです?」
「うーん、文字の読み書き、は、コッチの言葉でできるのか分からないし……一応簡単な計算とかはできます。書類仕事の手伝い、とか?」
「ふむ。ではちょっとテストしてみますか。821の二乗は?」
「えっ」
「……すみません、ウチの文官達ならこれ暗算で簡単に解くのです」
尚、文官バニーのINTは平均8213を余裕で越えるらしい。頭の中に電卓あるだろそれ、強すぎる……!
そんなんじゃ俺が書類仕事を手伝おうとしても足を引っ張ってしまうな。むむむ。
「そうだ! コガネには『ニンジン召喚』というスキルがあるそうですね。それを生かすのはどうでしょうか?」
「でも、名産品で売るほどあるんですよね? 出せて8本ですよ? 休憩入れても一日15本が限界かと」
既に宰相バニーの前で使った分は回復しているので、出せと言われれば8本一気に出せるだろう。
「……最悪飢え死にすることはないですね。とりあえず、ニンジン係としてよろしくお願いします」
「ニンジン係」
小腹が空いたときにニンジンを提供する係、らしい。
「非常時はコガネのニンジンが生命線になるかもしれませんね。頼りにしますよ?」
「は、はい!」
俺を元気づけるためだろう、ナミミ様は笑顔を浮かべてそう言った。
くっ、可愛い! ニンジンを胸元に挿し込んで差し上げたい!
でもあの立派なニンジンだと流石に服がペロンとめくれてしまうだろうか? ならもっとこう細いニンジンとか何本も差し込む感じで……スーパーであったよな。そういう細いニンジン。
「試しにニンジン出してもらっても良いですか?」
「え? あ、はい。『ニンジン召喚』!」
と、そんな雑念のせいか、俺の手に出たのは細く小さなニンジンだった。
「……小さくて細いですね」
「す、すみません。ちょっと考え事をしててつい」
しゅん、とバニー耳を垂らすナミミ様。
「……あれ、ちょっと待ってください。……この色……このサイズ……うん、間違いない。金時ニンジンだ」
金時ニンジン。丁度スーパーで売っていたのを思い出していたそのままのニンジンだった。
「キントキ? なんですかそれ? でも確かに言われてみれば私の知るニンジンより色がかなり濃いです。なんとなく栄養たっぷりで美味しそうに見えてきました」
「ああ。えっと、柔らかい肉質で、甘みが強い……だったかな? 食べてみます?」
「いいのですか! 頂きます!」
ナミミ様に金時ニンジンを渡すと、早速あーんと咥え、生で齧る。
「……!! これは美味しいですね! 香りも澄んでいて甘くて、小さいのも食べやすくていいかもしれません!」
「お気に召しましたか」
「召しました!」
ニンジンを食べながら、よほど嬉しいのか目をキラキラさせて身体を揺らすナミミ様。バニー耳とおむねが縦揺れした。おおっとめくれそう……みえ……みえ、ない! 加護でもついてんのか!? ポロリはないのか……!? 谷間だけで満足するしかねぇ!
「ハッ、もうなくなってしまいました!?」
「おかわり、いかがです?」
「……いただけますか?」
俺はそっと2本目の金時ニンジンを出し、ナミミ様にお渡しした。
……計5本も食べてしまい、宿で晩御飯が食べられなかったのは俺悪くないよね?
あ、ニンジン以外もちゃんとあって、晩御飯はチキンとニンジンがゴロゴロ入ったクリームシチューとパンだったよ。ナミミ様が食べられない分は責任をもって俺が平らげておきました!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます