そうだペットになろう!


 そうしてしばらく歩いていると、馬車乗り場へとたどり着いた。

 幸い、馬は普通だった。ここまできたら馬にもバニースーツ着せててもおかしくないんじゃないかと思っていたが、馬は馬でありバニーガールではないようだ。


 馬車に乗せられながらそんなことをナミミ様に言うと、


「面白いことを言いますね。……いえ、馬がバニーガールに……? ニーガール……ふむ。軍馬としてはアリかもしれません。かあ様に話してみましょう」


 とのこと。余計なこと言ったかもしれん。


 ナミミ様が御者の赤バニー(エナメルだけど黒ストッキングだったので貴族ではない模様)に声をかけ馬車が動き出すと、ナミミ様はふぅと息を吐いた。


「さて。これでもう城からは出たも同然。ここからはあなたを『人』として扱いますね」

「えっ。いいんですか?」

「はい。辺境では王都ほど差別が激しくありません。私の所有物どれいである方が安全なので首輪は外せませんが……陛下もそのあたりを配慮して私に託したのだと思います」


 金バニー、そこまで考えていたのか……

 あと辺境でもヒバニン差別はないわけではないらしい。王都ではヒバニンはケダモノらしく四つん這いで歩けと言われ、そこに座られたりするんだとか。……あ、うん。一部の界隈ではご褒美になりそうだな。


 ちらりと馬車の外を見ると、丁度ロリバニーにリードを引かれ、獣人の猫耳女性が四つん這いで散歩していた。……あ、ペットなんですかアレ。王都では至って普通の光景らしく、猫耳女性は笑顔で飼い主のロリバニーに笑顔でじゃれていた。「もー、歩きにくいよぉ」「えへへ、ご主人様好き好きー!」「私も大好きだよ! なでなで……」と、馬車が通り過ぎたので見れたのはここまで。目の保養だったわ。


 うん、ああいうのもあるのか。ますます一部の界隈でご褒美っぽいぞ。いや、やってることは完全に動物扱いで、猫耳さんの人権無視なんだけどさ。あれはあれで幸せそうだよなぁ……


 頭の中で自分とナミミ様に置き換えてみる。

 ナミミ様にじゃれついて撫でられる生活……悪くない。悪くないぞ! え!? そんなところまで撫でちゃうんですか!? ひゃっほう!


 よし、俺もあんなペットを目指すとしよう……!!



「それでは、まず名前を教えていただけますか?」

「あ、はい。虎金と言います。月兎虎金げっと こがねです。ナミミ様」

「コガネですね。改めて、私はナミミ・ムーンフォールです」


 ナミミ様が手を差し出してきて、握手する。小さく柔らかい手だ。……この手がハルバード振り回すのか。恐るべしバニーの力。


「コガネ。これからよろしくお願いします」

「はい、ナミミ様」


 名前を呼ばれるの、なんか新鮮だ。このバニー世界に来てからヒバニンとばっかり呼ばれてたからな。主に宰相に。……いや、宰相にだけだっけか?


「ところでコガネ。ずっと聞きたかったのですが……ウワェロ、とはどういう意味ですか? コガネが私を見て言った言葉です」

「え、あ、ハイ。すみません!」


 すみません悪気はなかったんです! 下心しかなかったんです!!


「? いえ、恐らく言葉の響きからして異世界の言葉なのですよね? 意味を教えていただきたいなと。……謝るような内容なんですか?」


 あれ? あ、もしかして俺が一人で呟いた言葉だったから、翻訳が働かないで日本語だったってコト? ま、まだ誤魔化せる!

 考えろ、ペットとして、最高の言い訳を!


「ええっと、異世界の言葉で『とても綺麗で目が奪われる』という意味です!」

「……! そ、そんなことを、言ってたんですか……」


 きゅっとナミミ様の頬が赤くなった。……嘘は言ってないよな? ヨシ。


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