ヒバニンに人権はないようです。
そしてステータスを見ると、『ニンジン召喚』でMPが10減っていた。
俺はMP82なのであと7本のニンジンを召喚できるわけだが……それだけだ。
名産品として、文字通り売るほどあるニンジンをたった8本出せるだけ。
ステータスも兵士の100分の1という雑魚。
異世界言語はこの国の言葉が話せるという、この国では当然の価値のないもの。
そう。つまり。つまりこれは……
「完全にハズレか。使えんな」
黒バニーの宰相が舌打ちしながら言った。
「王よ、判断を」
「……ふむ。魔王討伐には使えそうにないな」
えっ、魔王? 今魔王とか言った? ファンタジーの定番。って、そういえば俺のことも勇者だとか言ってなかったか?
「あ、あの。俺が勇者ってことは、魔王を倒して来い、ってことですか? それとも元の世界に帰してもらえたり?」
「は? 王の話を聞いていなかったのかヒバニン! 貴様如きが魔王に勝てるハズ無かろう! そもそも今、王が討伐に使えそうにないと仰ったばかりだろうが! 送還? そのような術などないし、たとえあっても貴様にかける魔力がもったいないわ!」
くっ! これが美人の黒バニーじゃなかったら凄いイライラしてしまうところだが、俺は実はバニーガールが大好き……! バニースーツだけでごはん3杯イケる男……! 真正面から美女バニーさんに怒鳴られて、ちょっとご褒美っぽく感じてしまっている!!
「何ニヤニヤしてるのだ、気持ち悪い! 王よ、こやつは処分しましょう! 次の勇者こそ本命です!」
「む、うーむ……こちらの都合で呼び出したのだから、多少の配慮はしてやってもよいのではないか?」
「ふむ。分かりました。おいヒバニン。手を出せ」
と、宰相バニーが俺の手を取る。そして――バニースーツのガラ空きの胸元に、ズボッと突っ込んだ! ふにょんとしたささやかな、しかし確実な柔肌が俺の手に触れる。こ、これが、バニーさんの中……! あったかい……! 冷酷宰相なのにあったかい!!
「んっ……! ふぅ……っ」
「って、いきなりなにを!?」
俺は思わず宰相バニーの手を振りほどきつつ、その胸元から手を引き抜いた。
「よし、ヒバニンよ。貴様はヒバニンでありながら我が貞操を
「ええええ!? アンタが勝手に手をツッコませたんじゃないか!?」
「知るか。そもそもヒバニンに私の、貴族の生肌を触らせてやったのだ。死出の旅に持っていく土産としては十分すぎる配慮だろう?」
「り、理不尽すぎる! 裁判を! 裁判を要求する!」
「ははは! ヒバニンに人権はない!! 家畜と同じなのだ! バニーガールでない己を恨むんだなぁ!!」
そう言って宰相バニーは俺を蹴って倒す。ぐあっ、黒い網タイツとハイヒールっ! くそっ、バニー最高、じゃなかった、なんて酷いやつなんだ! こんなことならつねってやれば良かった!! どことは言わないけど! つねってやれば、良かった!!
「……くうっ……!」
「書類仕事をしているひ弱な私にも勝てないんだ。ヒバニンに魔王討伐などできるハズもなかろう? その上に使い道もないんだものなぁ。死ぬのは当然だなぁ? うりうりっ」
と、倒れた俺の頭をぐりぐり踏む宰相バニー。すみませんこれ料金発生しますか? え、命で払え!? そ、それは流石にボッタクリがすぎるんじゃないですかね……?
「よせ、宰相」
「はっ」
女王様の一言で、スッと足をどけて畏まる宰相バニー。あ、目の前で膝立ちで座るもんだから股間がドアップに。うわ鼠径部近い。良い匂いする。冷酷宰相のくせに……!
「ムーンフォール辺境伯令嬢を呼べ。確か城に来ていただろう?」
「はっ。おい!」
女王様が命じ、宰相が指示を出す。しばらくして、カッカッカッと石床を駆け足で走るハイヒールの音が聞こえてきた。
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