バニーにあらずんば人にあらず ~バニーガールに支配された世界でニンジン屋を営む~

鬼影スパナ

これはよくあるハズレ召喚ですね?

女王バニーは金バニー


 【 神曰く、「バニーガールしか勝たん」 】

              ―― 兎娘教聖典第一章第一節より抜粋 ――



  * * *



「神はおっしゃられた。バニーガールこそ至高、バニーガールのみが勝利を得る権利を有し、バニーガール以外は無価値・・・・・・であると」

「は、はぁ」


 目の前のゴージャスなラメ入り金色バニースーツに身を包んだ金髪爆乳美女、この国の女王様が俺の前でそう演説をする。場所は石造りの部屋。床には魔法陣が描かれており、こいつに俺、月兎げっと虎金こがねは召喚されたらしい。


「問おう。そなたはバニーガールか?」

「……いえ。普通の一般成人男性です」

「そうか……」


 落胆のため息をつく金バニー。整った美女のため息は、やたらと艶っぽい。

 というか、俺がバニーガールじゃないのなんて一目見ればわかるだろうに。こちとらただのジャージだぞ。

 しいていえば、一般人程度にバニーガールは大好きだ。でも、家にはバニーガールの写真集、バニーガールのフィギュアがあるくらい普通だろう。いつか彼女ができた時のためにバニーガールの衣装を買って風呂場に置いては「今バニーガールが風呂に居るんだ……!」と妄想するくらいは誰でもするだろうし。


 周りを見回せば、そこにいたのはバニーガール、バニーガール、ひとつも飛ばさずバニーガール。多くは黒くてツヤツヤエナメルなバニースーツだ。うち半数が飾りにしかなっていない小さなメイドエプロン(某ネコ型ロボットのポケットみたい)と、バニーカチューシャにフリルをつけている。この国のメイド……だろうか?

 残り半数は肩と足と頭に鎧をつけているので兵士だろう。ボディガラ空きなんだけど守備力どうなってるのそれ。あと兜がちゃんとバニー耳付きである。


 と、女王様の隣にいる黒バニーガール――メイドや兵士ではなく、余計な装飾のないキチッとした伝統的バニーガールで、耳までエナメルの黒バニーさんが俺をキッと睨む。胸はあまり大きくない。いや、女王様の金バニーが爆なだけで普通サイズか?


「おい! 王の御前でキョロキョロするなヒバニン!! 不敬であるぞ!」

「は、はいっ! すみません。ええと……ひ、ヒバニン、とは?」

「は? バニーガールではない『できそこない』の事に決まっているであろう? そんな常識も知らんのか、これだからヒバニンは」


 ああ。Not・バニーガール・人。縮めて非バ人って感じの単語か。そんなこの世界の常識なんて、召喚されたばかりの俺が知るはずもないだろう。

 あ、この人って宰相さんなの? へぇ。宰相もバニーガール美女……ホントどういうことなの。どうなってるのこの世界は。

 右を見ても左を見てもバニーガールだらけ。俺の知っている異世界と違う。男の人はどこー?


「しかし勇者を召喚したはずが、ヒバニンが出てくるとはな……」

「も、申し訳ありません。魔法陣は伝承の通りのはずですが……」


 やれやれ、と額を押さえる黒バニーの宰相。態度はアレだがきゅっと締まったお尻とふわふわの白い尻尾が非常にエッチだと思います。

 宰相に頭を下げているのは大きな杖を持った緑バニーのメガネ女子。バニー耳のついた魔女帽を被っている。こちらは俺を召喚した魔法士らしい。……色違いで役職や階級が違ったり? 冠位十二階みたいな?


「良い。此度は実験だ。……せめて国に有用なスキルがあれば、バニーガールであらずとも使い道はあるであろう。おいそなた、ステータスオープンと言うてみよ」


 金バニーの女王様が威風堂々に言う。

 あっこれ、ダメな異世界召喚だ……とは思いつつも、断ったら兵士バニーさんの持つ槍がすぐさま突かれてきそうだったので、従うしかない。


「……す、ステータスオープン」


 そう言うと、目の前にふわっと薄緑色のホログラムが現れ、俺のステータスが表示された。


 ======================


 【名前】月兎げっと 虎金こがね

 【種族】人

 【ステータス】

   LV  1

   HP  82/82

   MP  82/82

   STR 82

   VIT 82

   INT 82

   MND 82

   AGI 82

   LUC 82


 【スキル】『ニンジン召喚』『異世界言語(バニガルド)』


 ======================


 なんだこの82ばっかりのふざけたステータス……いや、LV1でオール82って結構強いんじゃないか? そう思ってニヤッとしていると、宰相の黒バニーがステータスを覗き込んでくる。


「どれどれ……ふん、奇妙に数値が揃ってるな。ステータス値はヒバニンにしてはマシだがどれひとつとっても100も越えない最下層か。成長してもタカが知れてるだろう」


 あっ、最下層なんですね。調子こいてすみませんでした……

 ちなみにバニーガール兵の平均ステータス値は8213らしい。おい神様バニー優遇しすぎだろふざけんなよ。


「スキルは――『ニンジン召喚』だと? おい、ちょっとやってみろ」

「は、はあ……」


 俺は心の中で「ニンジン召喚!」と念じてみる。――すると、ぽんっと俺の手の中にツヤツヤとして美味しそうなニンジンが現れた。


「……それだけか?」

「えーっと」

「ちなみにニンジンはここ王都の名産品だ。この程度の品質のものならいくらでもある」


 えっ、なにそれ。そんなんじゃ俺、無価値じゃん……!?




――――――――――――――――――

(8/21はバニーの日なので見切り発車です!!!)

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