第2話 悪役王女と入れ替わり
オレ、
いつもの道をいつもと同じように歩いていると急に目の前が暗転し、視界が戻ったと思ったらここに居た。
異世界転移、そんな言葉を知っていたらもう少し早く自分の置かれた状況を正しく理解できていただろう。
と言ってもすぐにわかることなのだが。
――――――――
気がつくと周りの建物は煉瓦造り。
道行く人たちは皆、外国人のようだし、服装もなんだか、大昔の海外の画家が描いたような古い感じのものを着ている。
なんだここは……テーマパーク?いやなんでそんな所に?……もしかして瞬間移動的な超能力に目覚めた……とか?
いや、そんなはずない、と馬鹿げた考えを一蹴するが目の前の現実に対する答えとしては否定できない。
道ゆく人たちが
「何ジロジロ見てんだ!」と言いたい気持ちを抑えつけて誰ともなく話しかける。
「なぁちょっといいか、誰かここがどこから教えてくれ。」
誰も立ち止まってくれない。
(……そうか!言葉が違うのか……って英語なんて出来ねぇよ!!)
日本人か日本語ができる人を探さなくて、そう思って少し人通りの多い方へ向かい辺りを見渡す。
?!
「は?!なんだアレは…………城?」
ドラマやら映画のセットとは思えない、どデカい城が遠くに見える。
チバラギーランドのナントカ城のような城だ。
だがオレはチバラギーランドの城なら飽きるほど見てきた。
だからわかる……アレはナントカ城じゃない!!
そう、つまり!ここはチバラギじゃない!!
(…………となると……ここはどこだ??)
なにもわかってなかった。
そんな訳のわからない状況にテンパっていると鎧みたいなのを着た奴らに取り囲まれていた。
「なんだ、アンタら……ここの警備員かなんかなのか?よかったら帰り道というか帰り方を教えてくれねーか?って日本語通じねぇか、」
兜の隙間から見える顔は明らかに自分と違う外国人のそれだ。
しかし日本語しか話せないので日本語で話しかけるしかない。
するといきなり斧だか槍だか、よくわからない武器をコチラに向けて構え始めた。
(は?武器?え……
いやいや、おかしいだろ!)
「警備……員?キサマなにを言ってる?!どこの国から来た!」
「キサマこの国の人間ではないな!どこから来た!?このチンピラ異国人!!」
「オレは生まれも育ちもこの国だコラ!テメーらこそ何人だ!つーかここどこだっ!」
反射的に怒鳴り返してしまった。悪いくせだ。
つーかあれ?コイツら明らかに見た目は外国人なのに言葉が通じる??
やっぱここはテーマパークなのか!?
「キサマ、公国騎士団たる我々になんという口の聞き方!許さんぞ!」
「ふざけるな!キサマのようなヤツが公国民な訳ないだろ。怪しいヤツめ!」
こーこく騎士団??そういう設定?
「おい、ちょっと待ってくれ、今なんて……」
「まぁいい、おい!お前ら連れて行け。」
偉そうな警備員たちが周りを囲っていた若そうな警備員にアゴで指示を出す。
(これゼッテーやばいパターンだ!直感でわかる!捕まったら終わる!)
オレはとりあえず全力で逃げ出した!!
中学卒業の朝、お礼参りのために他校の奴らが通学路で張っていて見つかった時と同じくらい全力で逃げ出した。
うおおおおおお!!!!動けオレの脚!!!!
「まて!!!逃げたぞ!!」
「全員追え!!!応援も呼べ!!王都から絶対に出すな!!」
――――――
…………どれくらい逃げただろう。
右も左もわからない街で息が切れるほど走り続けたので時間がわからない。
今更気づいたがスマホも財布もない。
膝に手をついて息が整うのを待つ。
ヤバかった。逆に城の方へ逃げたのが良かったな……。
オートから出すなとか言ってたから機転を効かせ逆をついたがどうやら上手く行ったようだ。
とりあえず街ん中は警戒されてるからな、ここもいつまで安全かわからんな……。
城があって騎士団?とかいうのがいて、昔の服着た人たちが山のようにいる、ということは、きっとここはどっかの国の有名な観光地かテーマパークなんだろう。
(ほんとにそうか?)
少しだけ自分の推理に疑問が浮かぶ。
(アジア人ってだけで武器とか構えねぇよな普通……でも海外は差別とかあるっていうし、わかんねぇ……。)
騎士団とかいう奴らは日本語ペラペラだったしアイツらに帰り方とか聞けるのが一番よかったんだが[話は通じるが会話は通じない]とかいう最悪のやつだったから期待できなそうだ。
(んーー。悩んでても仕方ないし、せっかくだから城ん中でも観てみるか!)
城の正面へ周り入り口でチケット売り場を探すが誰もいないし売り場もない。
(あれ?これ勝手に入って良いやつ?ダメなやつ?)
わからなかったけど悩むのは嫌いなので入ってみた。迷わず行けよってやつだ。
生まれて初めて西洋風の
(なんだこれ、すげーな……コレほんとにヨーロッパのお城だろ?!瞬間移動ってのは本当にあるんだなー、海外なんて初めて来たぜ。)
これで確信した。俺は海外へ瞬間移動したんだ。
「なんだか、騒がしいわね。」
(おっと、人だ。メイド服?なんか古臭いな。いや観光向けに当時の再現とかしてる……のか?)
怒られたら嫌なので物陰に隠れて様子を伺うと立ち止まって話し始めてしまった。
いなくなるのを待つ、ついでに暇なので聞き耳をたてる。
「城下町に不審者ねぇ……最近、王都も治安が悪くて嫌だわ。」
(不審者、オレのことか?てかコイツらも日本語で話してる?……つまり、……どういう事だ???)
「本当怖いわよねぇ……いっそ、ウチの姫様でも攫っていってくれないかしら。」
?!姫様を?なんか酷い話をしてるな。
「こら!アナタなに言ってるの!誰に聞かれてるか、わかんないんだからダメよそんなこと言ったら!」
「でもみんな言ってるわよ、このままじゃ公国は姫様のせいで終わるって。」
「ダメよ!ダメダメ!ホントだとしても、もしあの鬼姫様に聞かれたらどんな目に遭うか……。」
「はー怖い、想像しちゃったわ、お掃除しましょ!」
「そうね!お仕事しましょ!」
(公国、姫、騎士団……?まさか観光地でもテーマパークでもなく本物??もし、そうならオレってマジの不審者で侵入者じゃねーか?!!)
ここに居るのがもしバレたら大変なことになりそうなので、掃除を始めたメイド服の二人の視界に入らないようにその場を離れようとした……その時。
「おい!お前そんな所で何してる!!!」
(ヤバい!バレた??!)
声のする方を振り向く
「なんだそれは??」
騎士団とかいう奴らが服をたくさん運んでいる男を止めていた。
(ふっー、オレじゃなかったのか。ってアイツら外にオレのこと探しにいったんじゃねーのかよ?!)
「はい?コレはレオノーラ様から頼まれたものでして……」
「ん?姫様に……だと?おい、どうする?」
厄介な話のようで騎士は二人とも、うーん、と唸っている。
「ここで時間を使わせて、もし姫様を待たせた。なんてことになったら……。」
「たしかにな……もういい、行ってよし。」
さっきのメイドと今の騎士たちの反応からすると、ずいぶん厄介な姫様らしいな。
「つーかマジに姫様いるのか……どこの国なんだ結局。」
(おっとそれどころじゃない。騎士団とかいうやつらも戻って来ているしココは離れるのが正解……)
ドンッッ!
「うっ!?」「きゃっ!!」
誰かにぶつかって尻餅をつく。
ちょっと振り向いただけでこんなに弾き飛ばされるなんて相手はどれだけのスピードで走っていたのか……。
「いってーな……お前どこ見てんだよ!ってやべ!!大声出し……ちゃ……」
?!
オレの声が高くなってる?!
「アンタこそどこ見てんのよ!私を誰だと思ってるの?!!」
ずいぶん低い声で怒鳴られる。
声の主の顔を見る……
目つきの悪い大男が目の前に倒れている。
……………………
「オレ?!!」「私?!!」
目の前にいる男はどう見てもオレだ!!
大男も「あんた!なんで私と同じ顔してるのよ!!」とな騒いでいる。
なんだコレ?!何が起きてる??
「なんで私が?っえ?てかなんで私の声がこんなに低い……手もゴツいし何これ!?!!」
「姫様?!!どうかなされ…………なんだキサマ!どこから入った!!」
「侵入者!侵入者ぁ!!」
しまった!思わず叫んでしまったのでさっきの騎士たちに見つかってしまった!!
「いや、違うんだオレは……」
「侵入者よ!!誰か早く捕らえて!!」
目の前でオレが叫んでる。
異様な光景だ!
「大丈夫ですか姫様?!お怪我は?!」
何故かオレが介抱される。
は?
そして、集まってきた騎士団に囲まれる目の前のオレ。
「この侵入者め!キサマが城下町を騒がしていたやつか!」
「なんで私を連れて行くのよ!私が誰かわからないの?!ちょっと!どこ触ってんのよ!!」
「なんだコイツ気色悪い!」
「暴れるな暴れるな!」
騎士たちは暴れる俺を取り押さえようと必死だ。
(何が起きてるんだってばよ…………。)
「私がレオノーラよ!!!!」
「そんなわけあるか!この不審者が!!」
「さっさと地下牢へ連れて行くぞ!!」
「姫様、あとは私たちに任せてください……。」
騎士団のリーダー格がこっちを向いてそう言った。
「は?」
オレの後ろには誰もいない。
「………………姫様?」
…………(え?姫様って、まさかオレのこと?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます