地元じゃ負け知らずのオレと悪役令嬢な姫様の入れ替わり戦記〜オレは馬鹿だから姫がどうとか知らねぇ件〜

うめつきおちゃ

第1話 プロローグ

 ドガーンッ!!!!!!

 バコーンッ!!!!!!!!


 荒くれ者たちが宙を舞う。というかぶっ飛ばした。


「なぁ!待ってくれ!俺らが何したってんだよ!?」


「うるせぇええー!テメーらが最近この辺の村を荒らしてる盗賊団だってのは分かってんだよ!!!」


 真っ直ぐいってドガンッ!!

 右ストレートでボゴンッ!!!


「あとはテメーだけだぞコラ?!今更、逃げんなよ!!」


 「頼むよ、お嬢ちゃん!俺らが悪かったよ!謝るから許してくれ!」


「ああーん?!謝るくらいなら最初からナメたマネしなきゃいいじゃねーか!?それによー聞いたぜ、テメーらは命乞いしてるそこらの村の奴らから色々奪って殺して楽しんだんだろうがぁ!?」


「違う!違う!俺らは元々盗賊団じゃなくて普通の傭兵の集まりなんだよ!」


「元がなんでも今は犯罪者集団だろうが!?わけわかんねぇ御託並べんなタコがっ!」


「待ってくれよ!!俺らだって大変なんだよ!戦争が起こるかもって噂を聞いたから王都まで来たのに公告の馬鹿姫様のせいで戦争が無くなったから帰れとか言われて!

 そんなんいきなり言われても明日食う金も泊まる場所もねぇんだ!もう、奪うしかねぇだろ!俺たちだって被害者なんだよ!」


「テメーが人の事情無視して生きてるくせにテメーの事情は聞けって舐めてんのかゴラァ!それにオレはお嬢ちゃんじゃねぇ!


 オレがこの国の姫様だよコラァ!!」


「は??そんな育ちの悪い口調の姫様が…………ひぃーー!!やめてくれ!!」


「やめねぇ!!歯ぁ食いしばれアホンダラぁ!!」


 ボッゴーーーンッッッ!!!


 ガードの上から叩き込んだ完璧な右ストレートで最後の一人も吹き飛んでいった。


 ふぅー……。


 

 

 やり過ぎた。


 

 

「ひぃぃぃ、姫様ぁこれ何人倒したんですかぁ?やり過ぎですよぉ……。」

 

「どーよ?コレでこの辺りも平和になったろ?あと、数が気になるならシャーリー、お前が自分で数えろ。」


「えー……そんなぁ、……それはめんどくさいです。」


「ちょっと!アンタいい加減、私の身体でむちゃくちゃするのやめなさいって何回言ったらわかるのよ!!このバカ!!カス!ゴミ!私の可愛い顔に傷跡でも残ったらアンタ責任とれるのっ!?取れないでしょ!?このくそ庶民!治安とかくっそどうでもいいから早く入れ替わりの魔法使える奴見つけなさいよ!無能!!!」


 物陰に隠れていたオレ(姫)がコチラに吠えている。


「オレの姿でチワワみたいに震えて隠れるのやめろって、いつになったらわかんだよ、このビビり!」


「誰になんて口聞いてんのよ!私はこの公国の王女よ!!本来ならアンタみたいなどこの誰かもわからないようなゴミカス下民がね……」


「ひぃぃーー!レオンさん、落ち着いてください……。」


「レオンはあっちで私はレオノーラ姫だって何回言ったら分かるのよアンタはぁぁ!!!!」


「ひいいいいいーーー!!!」

 シャーリーの鳴き声がこだまする。


 ……よし!これでこの辺も多少は安全になったな。


 オレの襲撃を受けて壊滅した盗賊団のヤツらは「うぅ……」とか「ぐっ……」とかいって倒れてる。大丈夫だ死んでない。

 

「よし、とりあえず城に帰るか。シャーリー!自警団のやつらに連絡入れて呼んで連行させろ。」


「はいぃ!わかりましたー!!」


 本物のレオノーラから逃げながらシャーリーが返事をした。

 

 シャーリーに声をかけたことで本物の姫様(見た目俺)の怒りの矛先はこちらへ向いた。

 

「ちょっと!!そのガニ股やめなさいよ!変な脚になったらどうすんのよ!!」


 うるせぇ……コイツ、マジで一生誰かに嚙みついてるのイカれすぎだろ。


「あー……しかたねーだろこの歩き方は癖になってんだから治せねぇよ。」


 無視してガニ股で歩き続ける。


「あぁーー!姫様!置いてかないでくださーい!!」


「あああぁぁっ!!人の話聞けよ!このあほゴリラ!!」


「残念、ゴリラはお前だ。俺は今……美少女だ。」


 はぁ、自分で言ってて恥ずかしくなる。


―――――― 


 道すがら近くに住む村人たちに、盗賊団を壊滅させたことを伝えるとお礼をされた。

「まぁ国民のために姫が頑張るのは当然っしょ。」とテキトーに伝えるとみんなして泣きながら握手を求めてきた。


 知らん人の為に言うけど姫様業って結構ちょろい。

 

 特に前の姫様(現在オレの体の持ち主)がクソ令嬢だったので上がり幅がすごい。

 なにしてもみんな褒めてくれる。

 ちょっとお礼言ったり褒めたりするだけで好感度爆上がりする。

 

 村人の中にいた小さな子供たちが「将来は姫様を守る騎士になるんだ!」とか言ってくるくらいだ。

 仲間も友達もいない敵だらけの人生を歩いてきたオレには信じられないほど慕われている。

 「まずは親御さんや周りの人の手助けをしてやれ。その先に騎士道ってヤツが続いてるもんさ。」とこれまたテキトーなこと言ったけど「姫様は聡明な方じゃ。」とか言い出すのが聞こえた。ホントこの世界生きやすい。


 晩飯食ってけとか言われたけど何食わされるかわかったもんじゃないのでテキトー言って逃げた。

 

 村から脱出すると俺の姿の姫様(好感度ゼロ)が不機嫌そうにしていた。


「どうした?バナナ出なかったのに怒ってるのか?」

 

「普通の姫は庶民と気安く握手なんてしないものなのよ!!それに姫が自ら戦うとか本当にそんなのありえないから!何のために騎士団とか衛兵どもがいると思ってるの?!」


「で、でも私は今の姫様の方がカッコよくて好きですよ!優しいし、頼れるし、気前もいいし。」


「あああ!?駄メイドォ!アンタつまり、それは前の私はダサくて嫌いってことよねぇ!?」


「ひぃいぃ!そんな事言ってないですよー!!」


 と、シャーリーが逃げ出す。

 鬼の形相でオレ(レオノーラ)が追いかける。


 

 シャーリー、お前ってさ、めっちゃ面白いけど……

 壊滅的にレオノーラと相性悪いよな。マジで。


「姫様ー!笑ってないで助けてくださーーい!!」

 

 オレさ……心底、シャーリーの事を侍女にしてよかったって思うよ。




 

 だって面白いもん。



 

 ムキムキでイカつい不良男が古い形のメイド服の可愛らしい少女を追いかけてる。

 

 ぱっと見オマワリ案件待ったなしの地獄みたいな光景だがコレには理由があるのだ。


 

 それを説明するにはオレがにきたところから話すべきだろう。



 



 

 ひいいいい!!ご勘弁をぉぉぉ!!!!


 残念、どうやらシャーリーは捕まったようだ。 


 ご愁傷様です。 

 

 ―――――― 


 


 

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