コンビニ店員、真夜中の戦い!

夏目 漱一郎

第1話 コンビニ店員、真夜中の戦い!

「いらっしゃいませ~~!」


俺の名前は、七瀬十一ななせといち。深夜にコンビニ店員をやっている。


繁華街のコンビニと違って、この辺りのコンビニは深夜ともなればお客も少なく、眠いのを我慢すれば結構楽な仕事だ。


平日なんかは一時間くらい全く誰も来なくて、暇つぶしに雑誌なんかを読んでることも珍しくはない。


ところが、こと今夜に限っては少し様子が違っていた。


          *     *     *


「煙草の72番下さい!」     「はい!」

「チキンとポテト下さい!」    「はい!」

「お弁当、温めて!」       「はい、かしこまりました!」


平日深夜の水曜日なのに、まるで昼食時のような忙しさ。


なぜこんなに混んでいるのかというと、実はつい30分程前に、この近所の住宅でのだ。だから深夜だというのに、ヤジ馬がみんな集まってきているらしい。


この辺で深夜開いている店はここしかないので、皆こぞってこの店に買い物に来る。


平日深夜は俺一人しかいないのに、これじゃあ完全に容量オーバーだよ……


ああ、早くこの並んでいるレジをさばいて、ゆっくりと……………









……………


          *     *     *



 コンビニで働いていると、賞味期限が過ぎて販売出来ない弁当なんかをもらって帰ることができるんだけど、俺が昨日もらってきた親子丼……どうもあれがヤバかったらしい。


冷蔵庫に入れておけばどうってことはなかったんだけど、どうせすぐ食べるからと思ってテーブルの上に放置したのが間違いだった。


おかげで今日は腹の調子がすこぶる悪い。


あ~~超ウンコしてぇ~~!




「煙草、マルボロの赤!」      「はい!」

「ラーメン、お湯いいですか?」   「はい、そちらお使いください!」

「唐揚げ下さい」          「はい、お待たせしました!」


よしよし、あと二人……なんとかだけはまぬがれそうだ……



と、思ったら……



「あのぅ~……公共料金いいですか? スマホ代と、電気代と、水道料金とぉ~それからぁ~~」


おい! なんだそのはっ!

それはわざわざ今この時間に払わなきゃならね~ものなのかよっ!

そんなの引き落としにしろよっ!


「え~と、八万三千二百円ですね……」


「まったく、便利になったわねぇ~コンビニも」


まったく、とんでもねえ!誰だ、こんなシステム考えたやつは!


やれやれ、でもあと一人だ。さっさと済ませて……


「すみません、?」


「は?……」


「いやあの、トイレ貸して欲しいんですけど」


「あぁ……どうぞ、その右手奥です……」


「ありがとうございま~~す」


「……………」



クソッ!


クソッ!クソッ!クソッ!


なんてタイミングが悪いんだ!



 そして、ほどなくしてトイレを借りに来たお客は帰ったのだが……


それと入れ替わりに深夜便の配達業者がやってきた。


「毎度~。いやあ、なんか今夜は表が騒がしいですね」


「ええ、何か近所でガス爆発とかあったらしいですよ」


「へえ~、それでかぁ~」


軽い会話を交わしながら、業者は手際よく商品を運び入れる。


しかし、俺の方はそんな余裕なんてない。いったいどれだけガマンすればいいんだ?



「じゃ、これで全部ですね。受け取りのハンコ下さい」


「えっ、ウンコ?」


「いや、ハンコです……」


ああ~ダメだ! 頭の中がウンコの事でいっぱいになってる!


「ハイ、ありがとうございました。それじゃあ失礼します」


受け取りのハンコをもらうと、業者は帰っていった。



          *     *     *



今だ!トイレに行くなら、このチャンスを置いて他にはない!


今のうちにとトイレに向かいかけた俺の背中越しに、自動ドアの開く音が聞こえた。

まさかお客!?


「おい! この包丁で刺されたくなかったら、レジの金をよこせ!」


「うるせぇ~~っ! んだよっっ!! ゴタゴタぬかすとぶっ殺すぞ!」


「ひゃあああ~~~っごめんなさあああい~~っ!」



あれ、思わずデカイ声出しちまったが、なんだ今の……?



まあ~いいか、トイレへ……



いや、ダメだ……俺がトイレ行こうとすると絶対誰か来やがる……



もう、すんなり行ける気がしない



商品も並べなきゃならないし……



よし、こうなったら店長に電話して応援に来てもらおう……



最初からそうすれば良かったんだ!



          *     *     *



「もしもし!店長ですか? 俺です!七瀬です!」


『ああ、七瀬君か……どうしたんだこんな時間に?』


「お願いです店長!今から店に来て下さい!」


『え、何かあったの?』


「今夜はもう、俺一人じゃムリです!」


『ん?そういや近所でガス爆発があったみたいだね……それで何か影響があったの?』


「もう、漏れそうなんです!」


『漏れそう?』


「ていうか、もう半分漏れてるかもしれません!」


『何?漏れてるって……まさか……』









「もう、なんですよおおぉぉぉぉぉ~~~~っ!!」


『なにい!爆発だって~!!』



五分後……



血相を変えた店長と……



消防車5台

パトカー2台がこのコンビニにやって来た。


店長……


ウチの店、ガスなんて使って無いですよね……




END










 




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