第6話 アンジーとグレン 獣人と人も一緒に


今日も明日も休みです。

それは、仕事を辞めたからです。

ええ、憧れのニート生活を満喫しています。


という事で今日は、某ロボットのプラモデルの組み立てをやってみよーと思います。

えぇこれは私の趣味のひとつです。

なぁーに設計図どおりに組み立てるだけです。

いろいろな物を組み立てる、これを苦手という人がいますが、何故にせっかく設計図あるのに

出来ないのか?失敗は無いと思いますが?ね?


さて、少し休憩しよう。

猫ちゃん来てないかなー?

お茶を飲みながら庭を見る。

おっ来たぞー。今日の癒しはアールだ。

グレーで長い毛足で、金色の目。ロシアンブルーかと思ったんだけどコラットというらしい。

体つきはガッチリ系でかっこいい系の猫。

ちなみに名前は紅茶のアールグレイからとった。グレーだからアールグレイが浮かび、アールとグレイで迷ってアールにした。


やっぱりまただ。

アールはアレを桜の木まで連れて来た。

何やら話をしている。

するとアレは人の形に変わってきた。女の子だ。長い金髪にグリーンの瞳。髪に赤いリボン

ピンクのワンピースに赤い靴。左足にはゴールドのアンクレット。

天使のように可愛らしい女の子だ。


その女の子が「こんにちは。」と可愛らしい声で言った。私も「こんにちは。」と返した。

「待ち合わせかな?」

「はいそうです。ここで待たせて下さい。」

「どうぞ。こちらで待つといいですよ。」

椅子に座ってもらう。彼女はアールを抱いてちょこんとお座りをした。


「お茶いかが?」

「はい。いただきます。」

私は紅茶とシュークリームを出した。

彼女はシュークリームをモグモグと食べた。アールには煮干し。食べる姿を見るのは癒しだ。


彼女の名前はアンジー。生まれはアスール国の公爵家のお嬢様。幼い頃は毎日幸せに暮らしていた。ある日、庭で遊んでいると怪我をした子犬が倒れていた。アンジーはその子犬に手当をしてあげた。その後、すっかり傷が癒えた子犬はたびたびアンジーの所へやってきて遊ぶようになった。アンジーはこの犬にグレンと名をつけ、とてもかわいがった。実はグレン、犬ではなく狼の獣人だった。時々、人型になってアンジーを驚かせる事もあった。やがて、数年が過ぎ、アンジーは遠くの学校に行き寮生活になることになった。グレンとは一緒に行けない。アンジーは「長い休みの時は必ず帰るから、また遊ぼう。大好き。」と泣きながらしばらくの別れを告げた。グレンは人型になり「僕も大好き。待ってる。」そう言った。アンジーが何度目かの休みにグレンは来なかった。噂では、ズール国の騎士団がアスール国との国境にある森で狼の群れを討伐したという。リーダーを含む数匹は大怪我をしていたが取り逃したらしい。もしかしたらグレンも群れにいたのではないか?グレンは逃げ切れたかな?アンジーはとても心配し過ごしていた。

それからしばらくしてグレンが人型で現れた。

「しばらく会えないけど必ず会いに来るよ。今度は僕の棲家に行こうね。待っていて。約束だよ。」「うん。待ってるわグレン。楽しみにしてる。大好き。」「僕も大好き。」そう言って二人は別れた。それが最後となった。


アンジーは学校を卒業しズール国の王太子に嫁ぐ事になった。和平の為の人質としての政略結婚だった。拒否はできなかった。

ズール国の王太子には婚約者がいたが今回の政略結婚で婚約を解消しアンジーと結婚しなくてはいけなかった。そのため罪もないアンジーに冷たく接し妻として扱うこともなかった。アンジーは離宮に幽閉されとても苦しい人質生活を強いられた。ある日、王太子はアンジーに毒を盛る。苦しみながらアンジーは亡くなった。その後の事はわからないとアンジーは言った。

ゆめちゃんは、「やはりこの話…。」と思った。


急にアールが「にゃーん」と鳴いた。

ザッと雨が降りすぐに日が差した。

桜から虹が空にのびる。桜の横では白い塊が現れ人の形なる。男の子だ。

シルバーにも見えるグレーの髪、瞳は金色。

目鼻立ちがくっきりとした凛々しい男の子。歳の頃はアンジーとおなじぐらいか?

白いシャツに茶色の半ズボンにベスト、黒い靴。左足にはグリーンのアンクレット。グレンだ!こちらに走ってやって来る。


「お待たせ。迎えにきたよ。」

「うん。お迎え嬉しいわ。」二人は微笑み合う。

「ねえ僕の棲家に来てくれる?」

「もちろんよ。楽しみにしていたの。」

グレンは嬉しそうにアンジーを見つめ

「行こう。すぐに行こう。」と手を取った。

「うふふっせっかちさんね。」

二人は桜の木へ歩いていく。

すると、男の子はだんだんと大きな狼の姿に変わる。

「ゆめちゃん、ありがとう。シュークリーム美味しかったー。またね。」

「今度は幸せになってね。またね。」

グレンはアンジーを背中に乗せて虹を渡っていった。


私は手を振って見送った。

アールは「にゃーんにゃーん」と鳴いた。

虹が消える頃アースは行ってしまった。

いつもの事だが、あっさりとしたものだ。


夕方、パートナーが帰って来た。

晩ご飯は、金糸たまご、細切りきゅうりとハム

そしてトマトをたっぷりのせた大盛冷やし中華。

デザートは練乳をかけたイチゴ。


食後の日課、ゆめちゃんが話す。

プラモデルが完成した事、シュークリームが喜ばれた事、人が狼に変身した事。

「シュークリームは残ってないの?」

「しゅんちゃんの分はちゃんと残してあるよ。食べる?」

「うん。後で食べるよ。それにしても、狼ってテレビとか本ぐらいでしか見た事ないなぁ。」

「犬好きなしゅんちゃんは狼も好きなの?」

「そうだねー。犬科の動物はみんなかっこいいでしょ?」

「そう?私は猫派だからなー。まー動物は嫌いじゃないけど。」

「うちもさーそろそろ犬でも飼おうか?」

「えっ。やだよー。無理だよー。猫ちゃん達が来なくなっちゃうよー。」

「それはそうなんだけどさー。」

しゅんちゃんは犬猫以外のペットを考える。しかし、どれもゆめちゃんは否定する。

犬や猫は嫌いじゃない、むしろ好きだ。

しかし、生き物を飼うには責任も伴う。

自分一人の世話をする?だけでも大変なのにペットの世話するのはー?無理じゃん!

そこでゆめちゃんは「ペットにシュンちゃんが取られちゃうのはやだなー。」と言ってみた。

しゅんちゃんは「仕方ないなー。」と少し嬉しそうにした。

ゆめちゃんの思惑どおりペットはしばらく飼わないこととなった。


その夜の夢。

森の中にテラスがある小さな家がある。庭には花壇と畑がある。

テラスではアンジーが狼姿のグレンにブラッシングをしている。グレンは気持ちよさそう。

アンジーはこちらを向いて「私達ここに住むことにしたの。」そう言った。

「そうなんだー。よかったね。でも、二人だけで寂しくない?」

「ううん。ここならグレンと一緒だから寂しくないわ。ゆめちゃんは寂しい?」

「えっ私?私は…」

そこで目が覚めた。


となりでパートナーが穏やかな顔をして寝てる。

ゆめちゃんはベッドからそぉっと出て洗面所へ行く。顔を洗いながら考える。

うーん。寂しい?いや多分寂しくないな。


「しゅんちゃんおーきーてー。朝だよー。」

「うぅ。はぁ〜い今おきますぅ〜。」

たまにはしゅんちゃんより早くおきるのもいいな。穏やかな寝顔やこんな寝ぼけた顔がみれるもん。それって私だけの特権だよね?


さて、送り出したら何しようかな?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ゆめちゃんはアンジーのお話をもとに本を探す。なかなかアンジーの名前が出てこない。

狼が出て来るお話はー。あったこれだ。


やっと見つけた本は[狼王は小さな姫を寵愛す]というファンタジー恋愛小説。

主人公は狼の若いリーダーで後にフィール国(元ズール国)の王様になる。ズール国の騎士が国境の森で討伐した狼の群れのリーダー。このリーダーと共に逃げた仲間にグレンはいた。

アンジーがきいた噂では狼の群れの討伐という話であった。狼の群れはズール国まで入り込み暴れ回るので仕方なく討伐したという事であった。実際は狼達はズール国には入る事はなく森の中で穏やかに暮らしていた。討伐は森に住む狼を一掃しここを足がかりとして、攻め込むズール国の作戦であった。大怪我を負い逃げた狼達は隣国への反撃を誓う。


グレンはズール国へスパイとして入り込むが身元がバレてしまい殺されてしまう。隣国へ行く前にアンジーに会いに行ったのだった。


アスール国王は森での出来事を重く受け止め、隣国と戦争回避の為に数人の令嬢を嫁がせることにした。この令嬢にアンジーが含まれていた。

王太子にアンジーが殺された後にズール国と戦争になった。


その戦争で先陣を切って活躍をしたのが狼のリーダー。ズール国を滅ぼし新しい王になった。ズール国の元王家の者達や貴族達は収監され裁かれた。ズール国の騎士団は解体された。

もちろんあの王太子も収監されたのち処刑された。


その後、新王はアスール国から幼い皇女を娶る。以前から慕いあう二人は仲良く暮らしていく。どちらかというとこの辺がメインの内容

だった。


恋愛小説の中に悲哀な物語が入っていた。

登場人物の数だけ物語はあるんだな。


ゆめちゃんはそう思った。





















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