第7話 ローゼリッテとレオン 獣人どうしも一緒に
私はニート仕事は当然していない。
毎日が休みでも暇じゃ無い。
せっかく時間がたっぷりとあるのだから趣味に没頭するのもいいだろう。やりたい事が山積みだ。しかし組み立てる物はしばらく出来なくなった。置くところが無い。
プラモデルに立体パズル、カゴも作ったな
一個や二個の世界じゃない。やりすぎた。
では、今日は本でも整理してみるか?
気になるヤツもあるし。
ローズの物語は[[魔女は今日も旅をする]]というファンタジー小説だ。
意外とあっさりとこれは見つかった。
ローズがほうきに乗ってる絵が表紙だった。
デュークが亡くなって一人になったローズが旅立つところから始まる。各国をめぐり、体験した事が書いてあった。標高が高い山をほうき無しで登って見た景色、広い海でイルカと戯れるとことか、オーロラを見たり、砂漠で砂嵐にあったりとか。ウェートレス、八百屋さんの手伝い、占い師など様々な仕事も経験したようだ。最後には、「魔女はこれからも旅を続ける。」で締めくくられていた。けして悲しい物語ではなく楽しいものであった。この物語[[魔女は今日も旅をする]]はローズの一生の中のほんの一部。
ちなみに宅急便はしていなかった。
さて、休憩しよう。
お茶を飲みながら豆大福を食べる。
ダイエット?そんなん知らん。
しばらく癒しと白いアレは来ていない。
今日は来るかな?来ないかな?
来たっ!
今日の癒しは茶トラのチャチャだ。
茶トラ模様のフサフサな毛並み、金色の目。
体が大きく凛々しい猫だ。性別不明。
颯爽と歩いている。
白いモヤの塊を連れて桜の木までやって来た。
そして、チャチャと塊が何か話している。
すると白い塊はだんだんと人の形になってくる。ここまではいつもの通り。さて今日は?
女の人だ。あれっ?何かが....?
薄いピンクの長い髪、赤い瞳の大きな目。
肌は白くこじんまりとした鼻と口。薄いブルーの豪華なドレスと紺の靴。金のネックレス、頭には金の髪飾り。
うぉっ!長い耳が生えてる?うさぎの耳??
これって獣人??ってこと?
獣人は綺麗なカーテシーをした。
「ごきげんよう。」チャチャを連れてこちらに歩いて来た。
私は慌てて庭に出た。
「少し休ませていただいてもよろしい?」
「はい。どうぞ。」
軒下の椅子に優雅に座る。
「お茶をお出し致しましょうか?」
「ありがとう。頂くわ。」
私は迷った。大福を出していいものかどうかと。うさぎに豆大福ってどうだろう?でも今はそれしか無いんだよなー。よしっ物は試しだ。
日本茶と豆大福を出してみた。チャチャは煮干しで決まり。
彼女は珍しそうにそれを眺めた。
「この、グリーンのお茶、あとこのフニフニした物も初めてだわ。」
「美味しいですよ。どうぞ。」
すると彼女は恐る恐る食べ始めた。
「まぁモチモチしてるわぁ。このお茶に合うわぁ。」口のまわりを白くして食べる。
お気に召したようだ。
そう豆大福には日本茶と決まってるんだよ。
可愛い顔をして口のまわりに白い粉を付けてムニムニと食べる。ふふっ、癒し。
チャチャは煮干しをガツガツ食べる。それはそれで癒しだ。
彼女はローゼリッテ。うさぎ獣人の国の二番目の王女様。隣国と交流も盛んで子供の頃は隣国の王太子や王女とも仲良く遊んだ。とても楽しかった。特に隣国の王太子レオンと仲良しだった。ある日、子供達が遊んでいるとそこに誘拐しようと敵国の大人がやって来た。女の子達を庇い男の子達は勇敢に戦った。怪我をした子もいたが何とか皆が逃げ切る事が出来た。その時にローゼリッテを庇って怪我をしたのが隣国の王太子のレオンだ。いつも泣いている泣き虫だったレオン。そのレオンがローゼリッテを庇い怪我をしたのだ。
そりゃ好きになっちゃうわなー。
暫くして怪我が癒えたレオンは「本当はローゼリッテともっとお話したり、遊んだりしたいけど帰らなくちゃ。今度来る時はたくさん鍛えてローゼリッテを守れるようになるよ。」そう言って帰って行った。
数年後、敵国と戦争が始まる。隣国では王太子が戦場に行き戦った。その中にはレオンもいた。激しい戦闘でレオンは兄弟を庇い戦死した。その頃、ローゼリッテの国は隣国に攻め込まれた。うさぎ獣人は戦いには長けていなかったのですぐに降参。国王は密かに皇女や幼い王太子を逃がした。しかし追っ手に追われローゼリッテは囮となり亡くなってしまう。
そんなローゼリッテの悲しいお話しだった。
うさぎ国ねぇ。なんの本だったかなー。
チャチャは食べ終わると「にやーん。」と鳴いた。
すると、虹が桜から空に向かってのびる。
雨が降らないパターンもあるのか。
そして、いつものように桜の木の隣には白い塊が出てきた。この塊がだんだんと人の形になる。大きな男の人だ。
金髪に金色の瞳。ワイルド系のイケメンだ。
シルバーの鎧に腰には長い剣を帯剣している。そして赤いマント。かっこいい。王子様だ。
頭の上にはー少し丸みがかった耳。トラ?
その耳には赤いピアス。レオンだ!
レオンってトラ獣人なんだ。
なんだか最近は銃刀法違反に慣れてきたかも?
そして彼はこちらにやって来た。
「やあ。お待たせ、ローゼリッテ。子供の時も可愛いかったけど、すごく綺麗になったなぁ。」
「ふふっ。ありがとう。あのレオンがこんなに大きくなって。」二人で抱き合った。
「もう、泣き虫レオンじゃないよ。僕、頑張ったんだよ。君を守れる強い男になるために。」
「そう、頑張ったのね。あの頃の可愛いレオンも好きだった。かっこよくなった大人のレオンも大好きよ。」
「嬉しいなぁ。僕もだよ大好き。」
「ふふっ。」二人は見つめあって笑った。
チャチャが「にゃーご。にゃーご。」と鳴いた。
すると桜の木から虹が空に向かってのびる。
二人は手を繋ぎ虹に向かって歩いていく。
「ゆめちゃんお菓子美味しかった。ご馳走様でした。」「どういたしまして。」
二人は手を繋いで歩いて行く。
「またねー。」「うん、またねー。」
手を振って見送る。
二人は虹を渡って行った。
私は手を振り見送った。
チャチャも「にゃーん。にゃーん。」と鳴く。
やがて虹は消えていった。
チャチャは知らん顔して行ってしまった。
いつもながらに冷たい。
夕方、パートナーが帰ってきた。
残業した事ないのかな?いつも同じ時間。
晩御飯はカツ丼、小松菜のお味噌汁、お漬物。
食後のお茶は日本茶。そして日課。
「ローズ」の本を見つけた事、それが思いの外面白い事。獣人が二人も来た事など。
「ゆめちゃんさーいつも誰か来る時にお茶出してるよね?」
「うん出してる。お話聞くし、なんか出さないって出来なくて。」
「一緒にゆめちゃんもお茶飲んだりお菓子食べたてるでしょ?」
「うん、ついね。」
「で、豆大福は残さずに食べてしまったと?」
「あー。」
「六個もあったのに?一つも残さずに?」
「ははっ。....すみません。」四個ぐらいは私が食べたな。
「いくらなんでも食べ過ぎじゃない?」
「そーですねぇー。」
「僕、本当は楽しみにしていたんだ。豆大福。」ちょっと残念そう。
「あーそれは申し訳ない事をしました。ごめんなさい。今度たくさん買って来るからー一緒に食べようね。ねっ。」テヘッ。買って来たらまた食べよ。
「今度は少しでいいからね。」
「なんで?たくさん食べるでしょ?」
「それはゆめちゃんでしょ?」
あはっ。ばれてーら。
その日の夜、夢を見た。
大きなお城の庭園?花壇に花が咲いている。
ところどころに木もある。
大きな木の木陰でトラが丸まって昼寝をしている。トラは大きくてモフモフだ。よく見るとそのトラのお腹の辺りに小さなピンクのうさぎが顔を埋めて寝ているようだ。これは癒しの光景だ。
うさぎが目を覚ました。赤い目をしている。これはローゼリッテかな?
こちらにぴょんぴょんとやって来た。するとそのうさぎはだんだんとローゼリッテに変身?する。
「遊んで疲れてお昼寝してたの。」
「たくさん遊んだのね。」
「うん。かけっこしたりかくれんぼしたりおやつ食べたりしたの。楽しかった。」
「それは良かったね。」
「あとは、本読んだり、探検ごっことか、ダンスの練習とかいろいろするのよ。」
「たくさんする事あるねー。」
「離れていた時に出来なかった事を全部するつもり。」
「それはすごいね。いずれは結婚でもしちゃう感じ?」
「そうねぇーレオンがいいって言ったらね。」
「きっとするって言うんじゃない?」
「そうだと嬉しいな。でもね、一緒にいれるだけでも幸せなの。ゆめちゃんもそう思わない?」
「それはそうかも?」
そこで目が覚めた。
のそのそとベッドから這い出る。
顔を洗いながら考えた。
「一緒にいるだけで幸せ」か。
じゃあ私は幸せって事でいいのかな?
さて、今日は何をしようか?
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後日の話
ゆめちゃんはローゼリッテの本を探す。
うさぎとトラが出てくるお話はー。
あれかなー?目当ての本を探す。
あったあった。
その本は[[うさぎの王子とトラの王子は仲間となって敵国のゴリラをやっつける]]という長いタイトルの本。冒険小説。
主人公はうさぎの王子とトラの王子の二人。
うさぎの王子はローゼリッテが囮になって助かった弟の幼い王子。トラの王子はレオンの弟。
二人は仲良く王宮で遊んだ幼馴染。
トラ国はゴリラ国との戦いでは優勢ではあったが今だ戦闘は続いていた。
うさぎ王子はトラ国に逃げ延びトラ王子と会う。トラ王子は姉に庇われ逃げ延びた事とうさぎ国が陥落してしまった事を知る。その頃、トラ国ではレオンの戦死が知らされる。
二人は敵国のゴリラ国に復讐を誓う。
まだ幼なかった二人はまずは剣の鍛錬を始める。そして戦略などを研究する。
その間も国境では睨み合いは続いていた。
やがて大きくなった二人はゴリラ国に反撃をしゴリラ国を滅ぼしうさぎ国を奪還する。
うさぎ王子はうさぎ国の王となりトラ王子はトラ国の王となり二つの国は友好関係を続けお互いに繁栄する。めでたしで終わる話だった。
ローゼリッテとレオンはこの小説の序盤に亡くなってしまっていたんだ。二人の事はほんの少しだけだった
全ての登場人物達の本当の姿とか思いはわからない。
もう少し登場人物を思いながら読書をしよう。
ゆめちゃんは思った。
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