第2話 ローズとデューク 天国でも一緒
今日は久しぶりの休み。
掃除洗濯を済ませ、お茶とお菓子で一服してるとこ。
ふと庭を見れば桜の木に黒猫のクロマメがやってきた。クロマメは真っ黒な毛色で金色の目が綺麗な美猫。今日の癒しはクロマメだ。
その隣には白いモヤの塊が。カカオだけでなくクロマメも?
そのモヤの塊がだんだんと人の形になってくる。シルバーの髪、パープルの大きな目。
色白でちょっと痩せた綺麗な女の人。おそらく20ぐらいかな?赤い膝丈のワンピースの上に黒いフード付きの外套、手には長い枝のほうきを持っている。茶色のショートブーツを履いていて左手には金の腕輪。
魔女じゃね?絶対に魔女じゃね?少しパニックになった。
前回の事があるからすこーし慣れたけどそれでもびっくりしたよ。
私は窓を開けて庭に出た。魔女はゆっくりこちらに歩いて来る。そして「こんにちは。」と。
私も「こんにちは。」少し緊張してご挨拶をした。
「これから雨が降るよ。」そう言って洗濯物を指差した。
「そりゃたいへんだ。教えてくれてありがとう。」慌てて洗濯物を取り込んだ。
「私待ち合わせしてるの。しばらくここにいていい?」そう魔女さんが言った。
「どうぞ。この椅子に座って待ってていいですよ。」とテーブルセットにうながした。
「ありがとう。」
「待ってる間、お茶いかが?」
「はい。」と返事がきた。
外套を脱いで椅子に座った。
髪が膝の辺りまであった。なっがー。
私はお茶とお菓子と煮干しを用意した。
煮干しはクロマメ用。お茶は日本茶でお菓子は饅頭という日本風のおやつだ。
うちに紅茶はないのさ。昨日から切らしてる。
二人?は美味しそうにモグモグ食べた。
魔女って饅頭食べるんだね。
うん、これ見てるだけで癒し。
そして予言?通りに雨が降ってきた。
魔女さんに饅頭はどこかで食べたことあるのか聞いてみた。
彼女は世界中を回って色々な物を見たり食べたりしてきたんだそう。甘いお菓子はどこの国のも美味しいって。日本茶も飲んだことあるみたい。
「そんなに若いのにそんなにあちこちに行ったの?すごいね。」と聞いてみた。
「見た目は若いけど本当は500歳なの。」
「えっっ!!」私よりずっと歳上じゃん!!
「えへへっ。」魔女ははにかんだ。
それから色々な話をしてくれた。
彼女はローズといってやっぱり魔女だった。
昔は仕事で薬師をして薬草を薬にして売っていたそう。最近は薬師以外にもウェートレスとか薬屋の店員とかいろいろやったらしい。
魔法はちょっとだけ使えるって。
やっぱ飛べるよね?ほうき持ってるもん。
昔々、天涯孤独の彼女は寂しいので友達を作った。でも周りの人達は月日が経つといなくなりまたローズは一人になる。それの繰り返し。
同じ所にも住み辛くなって転々と住まいをかえあまり人とは関わらないようにしてきた。
最初から一人なら寂しくないから。
そんな彼女は一度だけ結婚をした。
魔導士の人でデュークという。寿命は普通の人よりずっと長くしばらくは一緒にいれた。でも魔導士の寿命は魔女のそれよりも短くてまた一人になった。デュークは亡くなる前にローズにこう言った。「世界はすごく広い。色々な物を見て、体験して。貴方の寿命が尽きたら、僕が迎えに行くよ。その時にいろいろ体験した事を教えて下さい。」
ローズはとても悲しかったけど200年ほどの月日をかけて世界中を旅してきた。デュークにお話を聞かせる為に。
そして、とうとう寿命が尽き亡くなった。
なんだそれ?どっかで聞いた話?小説か漫画か?
ローズは「また、デュークに逢える。そうしたらお話を沢山お話するの。」と嬉しそうに言った。
クロマメが「にゃーん。」と鳴いた。
すると雨がやんで明るくなった。桜の横で白いモヤが光った。それが人の形になった。
男の人だ。黒い髪、金色の目。目鼻立ちがはっきりした美丈夫だ。白いシャツに黒いトラザウス黒いブーツ。そして黒いフードつきの外套に長い杖。左手には金の腕輪。デュークだ。
クロマメに似てるな。
「ローズ。」そう言いながらこっちに歩いてきた。
「デューク。やっと会えた。」
「そうだね。たくさん待ったよ。」
「私デュークにたくさんお話ししたい。」
「楽しみにしていたよ。」
そして二人は抱き合った。
クロマメが「にゃーん。にゃーん。」と鳴いた。
桜の木から虹が空に向かって伸びていく。
「さあ、行こう。」
「そうね。」
手を繋ぎ二人は桜の方へ歩いていく。
「ゆめちゃん、またね。」そう言って虹を渡って行った。
クロマメは「にゃーん。にゃーん。」と鳴いた。
私は「またね。」と言って手を振った。
しばらくすると虹は消えた。クロマメは何事もなかったように行ってしまった。
椅子のほうを見ればローズが持っていたほうきが置いてあった。忘れ物?
ローズ意外にうっかりさんだな。
誰も見てないなちょっと借りてみよう。
飛べるかな?飛べるかな?
えいっ!!やっ!!
やっぱり飛べなかった...。だよね...。
夕方、パートナーが帰ってきた。
今日のご飯は麻婆豆腐に中華風スープ。
ご飯はチャーハン。後はザーサイ。
デザートはなぜかマスカット。
食後のお茶は烏龍茶。
日課のお話はやっぱり今日の出来事とほうき。
「随分と立派なほうきだね。」
「飛べそうな感じでしょ?」
「もしかして飛ぼうなんて思ったりした?」
「うーん。ちょっとだけ。」
「飛べた?」
「飛べなかった。」
「やっぱりためしたんかーい。」
「恥ずかしながら。」ポリポリ。
その夜また夢を見た。
小じんまりした可愛らしい家の庭でシャボン玉で遊んでいる。二人ともキャッキャって言いながら楽しそうだ。大人でもシャボン玉するんだね。七色のシャボン玉が沢山飛んでとても綺麗だ。
「あのーほうき忘れていったよ。」
「あーあれ。新しくデュークに作ってもらたったからもういいの。あれはゆめちゃんにあげる。」
「うん。でもー飛べなかった...。」
「あらーそう?じゃあお庭のお掃除に使って。」
「うん。じゃあありがたく貰っておくね。頑張ってお掃除する。」
「それとーどうして私の名前知ってるの?」
「それはゆめちゃんが名前を書いたからだよ。」
「名前を書いた?」
「そうそう。確かにゆめって書いてあったよねー。」とデュークがうなずいた。
「ふーん。」
「そろそろ朝だよ。またねー。」二人が手を振った。
「うん。またねー。」
そこで目が覚めた。
ベッドから起き上がり庭を見た。
やっぱりほうきはあった。私じゃ飛べないやつだけど、練習したら飛べるかも?なんてね。
また二人に逢えるかな?
私もパートナーとシャボン玉作ってみようかな。
さて、身支度をして仕事にいくかー。
帰りに紅茶買ってこよう。
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