第二章 第二次世界大戦の始まり

13 Fall Weiss

1939年9月1日、夜明け前の静寂を切り裂くように、ドイツ軍の砲声がポーランド国境沿いに響き渡った。私は作戦本部でその瞬間を迎え、長い準備期間を経てついに始まったこの作戦に胸を高鳴らせていた。ヒトラー総統の下、我々はポーランドに対して圧倒的な軍事力を投入し、一気に東方への道を切り開く計画を立てていた。


主力部隊はポメラニア、シレジア、モラヴィアから一斉に進軍を開始し、同時に東ポメラニアとスロヴァキアからも挟撃を仕掛けた。この多方面からの攻撃は、敵軍の防衛線を混乱させ、迅速に制圧するためのものであった。我々は最新鋭の戦車と航空機を駆使し、まさに電撃戦と呼ぶにふさわしい攻勢を展開した(まあ実際のところは殲滅戦理論に沿ってだったのだが)。

戦車部隊はI号戦車やII号戦車を主力としつつ、より強力なIII号戦車やIV号戦車も投入され、その数は約2,400両に上った。6個の装甲師団が編成され、集中運用によって敵の戦線に次々と突破口を開いていった。突破口から進撃する戦車部隊は、後続の歩兵部隊と連携し、孤立した敵部隊を各個撃破していく。この新しい攻撃理論は、これまでの戦争の常識を覆すものであり、その効果はすぐに明らかになった。

空軍もまた、この作戦において重要な役割を果たした。1,180機の戦闘機、290機のJu 87 シュトゥーカ急降下爆撃機、290機のハインケル He 111爆撃機、さらに240機の水上機が一斉に出撃し、敵の補給線や通信網を徹底的に破壊した。空からの圧倒的な制空権を握ることで、地上部隊の進軍を効果的に支援し、敵の反撃を未然に防いだ。


私は作戦本部でこれらの報告を受け取りながら、順調に進む作戦に手応えを感じていた。同時に、ヒトラー総統と同様にフランス軍の動きには大きな懸念を抱いていなかった。彼らが我々に対して積極的な攻撃を仕掛けてくる可能性は低いと考えていたのだ。その予想は的中し、フランス軍は象徴的な動きを見せるに留まり、実質的な介入は行われなかった。


しかし、ポーランド軍も決して手をこまねいていたわけではない。彼らは行政機関を引き連れて撤退しつつも、各地で抵抗を試みた。しかし、その軍備は我々に比べて劣っており、機動性や統率力、さらには装備面でも大きな差があった。旧式の飛行機や限られた予備兵力では、我々の猛攻に対抗することは困難だった。


9月9日から10日にかけて、ポーランド軍はブズラ川を渡り、南への夜襲を試みた。この作戦は一時的に我々の一部隊を混乱に陥れたものの、空軍の迅速な対応と第二軍、第三軍の包囲攻撃によって、最終的には大損害を与えることに成功した。


一方で、都市部への攻撃も進行していた。ワルシャワは何度も空爆にさらされ、その度に大きな被害を受けた。9月25日には一日中続く激しい爆撃が行われ、街は瓦礫と化していった。私はこの報告を受けながら、戦争の残酷さと、それでも目標を達成するための必要性との間で複雑な感情を抱いていた。


ポーランドの同盟国であるイギリスとフランスからの実質的な支援はほとんどなく、彼らの援助を待ち望んでいたポーランド軍と市民たちは、次第に希望を失っていった。フランス軍は象徴的な動きを見せるだけで、積極的な攻勢には出なかった。イギリス空軍も数度の航空機による攻撃を試みたが、その成果は限定的であり、逆に多くの機体を失う結果となった。


9月28日、ついにワルシャワ市は降伏を宣言した。ヒトラー総統は10月5日に現地を訪れ、作戦の成功を自ら確認した。私はこの瞬間を見届けながら、計画通りに進んだ作戦と、それに携わった全ての将兵たちの努力を誇りに思った。


しかし、この成功の裏で、私は深い懸念を抱いていた。ポーランドやフランスには打ち勝てるかもしれないが、巨大な空軍力と海軍力を持つイギリスや、膨大な兵力と工業力を誇るソ連、そして底知れぬ国力を有するアメリカとの対峙を考えると、我々の未来は不透明であった。

イギリスは海上に強力な艦隊を保有し、空軍も優れた戦闘機を有している。彼らが本格的に参戦すれば、我々の海上補給路は断たれ、戦略的な不利を強いられることになるだろう。また、ソ連との関係も不安定であり、独ソ不可侵条約が崩れる可能性は常に存在していた。ソ連は膨大な領土と人口を有し、その工業力は我々を凌駕していた。もし東方で戦争が拡大すれば、我々は二正面作戦を余儀なくされる危険があった。

さらに、アメリカの動向も気にかかっていた。彼らは現在中立を保っているが、その経済力と工業力は戦争を一方的に有利に進める力を持っている。もし彼らが参戦すれば、我々は戦争の泥沼に引き込まれる可能性が高まるだろう。アメリカの参戦は、ヨーロッパ戦線だけでなく、世界全体を巻き込んだ大規模な紛争へと発展する恐れがあった。


ポーランド侵攻の成功は、一時的なものであり、真の試練はこれからである。ヨーロッパ全土を支配下に置くためには、さらなる戦争が避けられないことを私は痛感していた。しかし、その前に立ちはだかるフランス、イギリス、ソ連、アメリカとの対峙に備える必要があった。私たちの勝利は、これらの強大な敵に対しても継続的でなければならない。

ドイツ軍はポーランド侵攻において圧倒的な数的優位と高度な戦術を発揮したが、それはあくまで一つの戦線に過ぎない。真の敵は、多面的な戦争において我々の全ての力を試すものであり、その準備は今、必要とされている。私たちは勝利の余韻に浸ることなく、次なる挑戦に備えなければならない。

戦争は単なる軍事力の競争ではなく、戦略的な思考と国力の総動員が求められるものである。私は、ドイツがこれから直面する試練に対して、全力で備える決意を新たにした。ヒトラーの指導の下、我々はさらなる勝利を目指し、ヨーロッパの新たな秩序を築くために進み続けるのである。


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