第24話 そろそろ始めよう

カマキリはじっくりと俺を見据える。


人々を助けるために魔力を全開にしたから気付いたんだろう。

だがインセクトロード(笑)と違ってこいつは話しかけてきたりはしないらしい。


力関係というか、知能が逆転してるのか?

それとも話をする気はないということなんだろうか。


まあいい。何かあるならボコったら話せるなら話すだろう。

俺はゆっくりと刀を抜き、魔力を込めていく。


あんまり今まで真面目に戦った姿を見せたことはないと思うから、もしかしたら驚かれると思うし、ダンジョン協会に苦情が来るかもしれないけど、モンスターはなるべく早く倒した方がいいだろうから許してほしいな。


「沖田さん!」

そこへ声をかけてくる探索者。

確か葉月くんだったか。


"葉隠れ"という高ランク探索者パーティーのリーダーだ。

"明星"への参加要請を断った賢明な探索者の一人だ。


個人的に何度か話したことがあるし、頼まれて彼のパーティーの戦士にアドバイスをしたこともある。


「あのモンスターは僕らでは厳しいので、お任せしていいですか?」

「あぁ、問題ない」

「「おぉ……」」


葉月くんの後ろで驚いた顔をしている探索者たち。

まぁ、さっきも言った通りあんまり戦いを見せつけたことはないから、仕方ないのかな?

配信とかあんまり真面目にやってなかったし。


"明星"による東京ダンジョン攻略動画もただの垂れ流しで、ぶっちゃけ俺の戦いはほぼ見えてなかったっぽいしな。

それをいいことに、葛野親子や……もう名前も忘れたパーティーメンバーに好きかって言われたわけだな。


アレを繰り返してはいけないから、配信した方がいいのかもしれないが、そもそも彼らがやってそうだな。


「もしかして配信してる?」

「えっ、あっ、あぁ。すみません。すぐに切ります。失礼し……」

「いや、いい。映しておいてくれ。視認できるかどうかは別として、俺たち自身に今配信する余裕はないだろうからな。やっておいてもらえたら助かる。誤解されたり、嘘を拡散されるのはもう勘弁してほしいからな。記録用に」

「なるほどです。了解しました。責任をもって配信します!」

葉月くんが敬礼のようなポーズをして了解してくれたから、任せよう。

彼らは世間的な人気も高いし、解説とかも入れてくれるかもしれないし、コメント欄が炎上したりもしないだろうから、これで安心だ。


遥も俺たちの話を聞いて、葉月くんたちに頭を下げている。那月もだ。


「ん……んぁ? ここどこなの?」

そしてお寝坊さんが今さら起きやがった。良い身分だな……。そもそも斬魔精とか言われて鋼鉄の虫モンスターに目の敵にされてたのはお前じゃなかったか?

なんでずっと寝てられるんだよ。


聞いてもどうせ『沖田を信頼してるの』とか適当なことを言いだすんだろうから、ちょっとくらいお仕置きしても問題ないよな?


「ん? なんで沖田はボクの頭を掴むの?」

「とりあえずあのカマキリを倒すから、遥に抱っこしてもらってろ」

俺はエフィーの頭を鷲掴みして遥の方に押し付ける。


「えっ、あっ、はい。エフィーちゃん、おいで」

突然のことに遥は一瞬戸惑うが、エフィーは見た目可愛くて小っちゃいモフモフ妖精な姿なので、引き受けることにしたらしく両手を差し出す。

そう言えばこいつ、虫型モンスターと戦ってた時もっと大きくなかったっけ?

まぁどうでもいいけど。


「わ~いなの~。遥は柔らかいの」

「エッ、エフィーちゃん!?」

中年のエロ親父みたいな台詞を吐いて遥の胸元に飛び込もうとするエフィー。そんな姿が癪に障ったので、エフィーの首根っこを掴んで、無意味に振り回した後、遥に託す。


こっちはGとか蜘蛛とかが出てこないかと心配して恐る恐る移動してきたのに、ぐ~すか寝やがって……。


「おっ、沖田さん!?」

遥は突然の俺の凶行に驚きつつ、葉月くんの配信を意識してか、名字呼びのままだった。

もしくはまたお兄ちゃんって言いかけたのかな?

どんな呼び方でも可愛いから問題ないけども。


一応、そんな気の抜けるようなやり取りをしつつも、魔力でカマキリをけん制し続けていたが、そろそろ限界っぽいな。

巨大なカマを構えたカマキリが獰猛な叫び声をあげる。


そうだな。そろそろやろう。

思い上がった虫に思い知らせてやらないといけないしな。人間の世界に気軽に飛んできやがったけど、それがどんな恐ろしいことなのかってことを。もちろん貴様らモンスターが怯える番だぜ?


かつて乱雪が守った日本。そこに、モンスターが土足で踏み込んできて破壊し尽くすことなんか、この俺が許すはずがない。

そんなことをされたら日本ダンジョン協会会長になった叔父さんが過労死しちゃうだろ?

本人が生え際が後退してることを気にしてるっぽいんだから、ストレスを与えるようなことをするな。


 

「話せるならとっととどうやってここに来たのかとか、ここに来た理由を話してくれた方が、すぐに楽にしてやれるんだがな」

一応忠告しておくが、カマキリからの返事はない。


 

 

ということで、そろそろ始めよう。



血祭の時間をな!

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