第7話 約束の行方

ギシャーーーーー!!!!!


そこにいたのは全身金属でできた……まるで仮面ライ〇ーみたいな虫系だと思われるモンスターだった。


俺は思わずモンスターとエフィーを何度も交互に見る。



『あいつだの!エフィーの村を襲ったのはあいつだの!』


いや、わかったけど、なんであれに襲われてお前やお前の村は無事なの?

どう見てもお前の戦闘力が5だとしたら、あいつ53万よ?


なんならあいつが呼吸するたびにエフィーの一族を殺していって、一夜のうちに全滅したとか言われた方が納得できるぞ?



 

ギシャーーーーー!!!!!


そんな俺の考えをよそに、そのモンスターはエフィーを視界に納めると突撃してきた。

早っ……。

それは武術の達人が行う縮地のごとき素早さだった。


そんな速度から繰り出されたカマ型の腕による攻撃をなんとエフィーは避けた。


はっ???


いや、油断してエフィーを回収しなかった俺もちょっと酷いけど、普通に避けたぞ?

どうなってるんだ?


しかも……



『みんなの仇!とりゃーなの!』


グシャーーーーー!!!!! 


蹴り飛ばしやがった……って、足なんかどこにあんだよ?モフモフに埋もれてるだろうが!


ギシャーーーーー!!!!!


しかしモンスターもただでは退かない。

蹴られたところからバッタの羽のようなものを 広げて空中で旋回すると、再びカマ型の腕で攻撃した。


それを避けるエフィーと、カマを振り乱すモンスター。


一進一退の攻防が続いたが、ついに均衡が破れる。


モンスターのカマがエフィーを捕えたんだ。


「エフィー!」

『キミは逃げて!』

エフィーはこちらを心配してか、吹っ飛ばされながら逃げろという。

いいのかな?語尾が変わってるぞ?

 

「いや、問題ない。とりあえずヒールな」

しかし俺はエフィーとモンスターの間に割り込み、カマを剣で防ぎつつエフィーに回復魔法をかける。


思わず見入ってしまったが、俺の目から見ると別に大した事はない攻防だ。

速度も速いけど十分対処できるし、カマも防げる。

金属の体だから固いとは思うけど、火は弱点だろう。



爆炎融解メルトバーン!」


ギシャーーーーー!!!!!

 

俺の火魔法であっさりとモンスターの両腕が溶けていった。



『キミ、強いの……』

「俺からすると、お前の強さがビックリなんだが」

きっとお互いに驚いていた。

そういえば偶然合流して一緒に探索していたけど、お互いのまともな戦闘は見てないもんな。


『ここまで到達する速度が異常だったの。それに、途中のモンスター全部瞬殺してたから強いとは思ってたの。でも、あのモンスターを瞬殺は異様なの』

「俺はそのちっこい体でアレを蹴り飛ばした上に、普通にやり合ってたお前が信じられなかったよ」

『エフィーは誇り高き精霊族の戦士なの。強いの!』

「精霊族?妖精じゃなくて?」

まじかよ……。


これだけファンタジーに染まった世界ならどこかにはいると言われつつ、ずっと発見されなかった精霊族。

彼らには魔力の毒を中和する力があるとされ、ずっと探索されてきた。


魔力の毒というのは、その名の通りで、一般人が多く魔力を吸ってしまうと毒を飲んだように苦しみはじめ、死に至るんだ。

だから世界ダンジョン協会はダンジョンの攻略を掲げている。


7つの高位ダンジョンを攻略すれば世界が救われるとか言うあれだ。

怪しいけどな。


そんな攻略の一方で、一度だけ精霊族が現れたことがあるという。

その精霊は人間に対して共存も模索したが、強欲なものが多いため断念したと宣言し消えてしまったという。

模索の最中に能力を使って魔力中毒になった人間を救ってしまったのが問題だったらしい。

妖精を捕まえようとしたやつらがいた。


それ以降、人間は精霊を見ていない。

少なくとも公式には。

まぁ騒ぎになりそうだしモフモフ妖精でいいか。うん、そう思おう。それがいい。


『決めたの!エフィーはキミについていくの!キミは仲間の仇を取ってくれた。エフィーを助けてくれた恩人なの!』

「う~ん。どうしようかな~」

『なんでここで悩むの?普通は喜ぶところなの!』

「モフモフにあまり興味ないしな~」

『酷いの!エフィーはいつかナイスバディなお姉さんになってキミを悩殺してやるの!!!』


ちっちゃいおててを天に掲げてアホな宣言をするエフィーだった。

まったく、何を言いだすんだこいつは。

俺は仮にお前がナイスバディのお姉さんになっても悩殺されたりはしないぜ?


でもあまりにも意気込んでるから、ちょっと悪戯を……

 

(こちょこちょこちょこちょ)

 

『あっ、こら!やめるの。あっ……くすぐったい、あぁっ』

「かわいいな~」

『も~なの……』

顔を真っ赤にしながらちっちゃく丸くなってしまった。


その後機嫌を取って口をきいてもらうまでに1時間もかかった……。



めんどいな。やっぱどっかに置いていくか……




<お兄ちゃん……>



ん?

今、遥の声が聞こえたような……。


<お兄ちゃん……助けて……>



これはアレだな。


渡したお守りを通じた救援要請だな。



もちろん行くぜ。


何があったのか知らんけど、ピンチなんだろう。


俺はもう吹っ切れた。


茜のことはもうなんというか心の奥底に押し込んで蓋をした。




これからは俺を慕ってくれたり、大事にしてくれるやつらを、俺も大事にしていくぜ。


俺は魔力で空間をこじ開け、声がした方につなぐ。

そしてそこに入る。




『なんなの???』

 


……いっけね、置いていくところだった。

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