世界を救うためのダンジョン探索から帰ってきたら恋人は寝取られ、探索失敗の責任を押し付けられたからブチ切れて日本最強パーティから脱退したら、あいつら勝手に自滅していった
第4話 最低な浮気(遥(=元恋人の妹)視点)
第4話 最低な浮気(遥(=元恋人の妹)視点)
「お姉ちゃん、どういうこと?」
「なんのこと?」
私は浮気したお姉ちゃんを許せなかった。だから問い詰める。
「お兄ちゃんのことよ!どうして浮気なんか。しかもあんなやつと!?」
葛野秀明のことをお兄ちゃんは毛嫌いしていた。
私も好きじゃない。
見た目だけがいいけど、自分のことしか考えない自分勝手な人。
なんでそんな男と浮気するの?
お兄ちゃんへの嫌がらせ?
「子供にはわからないわ」
「子供扱いしないで!」
そんな私の質問を流そうとするお姉ちゃんが大嫌い。
昔からそう。
私の方がお兄ちゃんのこと好きだったのに、それを知りながら奪っていった。
お兄ちゃんも嬉しそうにしてるからきっとお兄ちゃんから告白したんだろうけど、それでも最低の状況で最低の浮気をするなんて。
「重かったのよ。そして寂しかったの」
少しうつむきながら姉の放った言葉は到底許容できない言葉だった。
「だからってなんであのクズ野郎なのよ!一瞬で治るケガで探索計画から逃げたクズよ?それこそCランクのお姉ちゃんでも治せたでしょ!?」
「ふふ……そうやってバカにするのよ、あなたは。理由なんてどうでもいいわ。私は半年間1人だった。そこにいたのは彼だった。それだけよ」
なによその理由。
そんなのお兄ちゃんに関係ないじゃない。あなたの心が弱かっただけでしょ?
しかもお兄ちゃんは自分が行きたくて行ったんじゃないのよ?
勝手に期待と計画を背負わされて逃げ道を塞がれたのよ。
塞いだ理由にお姉ちゃんと私がいるのに、それを……
「もういいでしょ?終わったことを蒸し返さないで。出て行ったんでしょ?終わりよ、それで」
余りにも身勝手な言い分に呆然としてしまう。
一方的にお兄ちゃんを傷つけて。
何かお兄ちゃんに恨みでもあるの?
何年も何年もずっと私たちを守ってきてくれたお兄ちゃんに?
パシ――――ン!!!!
私は思いっきり姉をひっぱたいた。
「気がすむなら叩けばいいわ。どうせ回復するしね」
姉は何の感情も籠っていない表情でそう告げる。
そこに立っているのはもう私の知っているお姉ちゃんじゃなかった。
「悪いが、"明星"には再び東京ダンジョンの攻略に行ってほしい。これは私の一存ではなく、政府決定だ」
暗い気持ちだったので今日は体調不良と言って帰りたかったが、その前に召集がかかった。
部屋にいるのは"明星"メンバーとダンジョン協会会長の葛野章人、協会員の皆川夢乃、あとは防衛庁から来たという役人が2人だ。
どう見ても嫌な予感しかしない中で告げられたのは無謀な命令だった。
お兄ちゃんがいても無理だったのに?
私の頭の中は疑問符でいっぱいだった。
「今回は僕が行くからな。問題ない」
なぜそこで自信満々でいられるのか、不思議でしょうがない。
葛野なんか100人いてもお兄ちゃんにはかなわないのに……いや、100人の葛野が気持ち悪く笑いかけたらお兄ちゃんが悶絶するかも……。
「まじ前回はなかったから今回はちゃんとしろって感じ~あっ、お金はちゃんと頂戴ね♡」
お兄ちゃん曰くクソ女1号がケバい顔で枝分かれした髪の先を弄りながら答える。お金……の部分だけしっかりと会長の方を見て言い切ったが、金の亡者にもほどがある。
「今回わぁ、ちゃ~んと秀ちゃんが守ってくれるからだいじょ~ぶよね~」
お兄ちゃん曰くクソ女2号があざとさ全開の表情と身振り手振りでクソ野郎にしなだれかかりながら何か言ってる。
88層で出て来たファイヤードラゴンさん、この2人を炭にしてくれないかしら。
「……」
「那月は賛成だってさ」
何も言ってない気がするけど、賛成だという葛野の言葉にも反応しない……。
この人が喋ってるの見たことない。
「もちろん遥ちゃんもいいよね?」
「……」
葛野が防衛庁の人をちらちら見ながら言ってくるが、良いわけがない。
「ダメに決まってるでしょう!あなたたちは紘一くんがいても無理だったのよ?どうやって90層以降を進むつもりなの?そもそも今回は他のチームは不参加よ?前回あんなことがあって、みんな敬遠しているわ?」
協会員の夢乃さんだけがまともだったよ。
「まったく。怖気づいて不参加表明とは情けない」
一瞬で治るケガで不参加を主張した半年前のお前に聞かせてやりたい。特大ブーメランすぎて帰ってこなかったの?
そんなやり取りを見ていると、不意に葛野が近寄ってきてこっそり耳打ちしてくる。
そんなに近付いたら吐き気を催すからやめてほしい。
「キミが参加しないなら無理にでも茜さんを連れて行くしかなくなるよ?いいのかい?」
なっ……。
こいつ、最低だ。
戦闘能力の低い治療術師のお姉ちゃんをあんな場所に連れて行って生き延びれるわけがない。
キッと睨むが、ニヤニヤと見返してくる。
最低すぎる……。
もしかして前回もこんな方法でお兄ちゃんに無理やり行かせたの?
そしてその間にお姉ちゃんを寝取ったの?
最低すぎる……。
私はそれでも頷くしかなく、そんな私を見た夢乃さんが反対を主張してくれたけど、結論は変わらなかった。
***
『それではインタビューの時間です。今日は"明星"の琴音さんと綾香さんにお越し頂きました』
『『こんばんわ~♡』』
夜のニュースに調子に乗った2人が出演していた。
お兄ちゃんのせいで失った信頼を回復するんだとか、バカじゃないかしら。
『お2人は来週から再び東京ダンジョンを攻略するとか。意気込みをお願いできますか?』
お兄ちゃんのことはあれ程あしざまに罵っていたアナウンサーが笑顔を浮かべながら聞いている。
『はい。前回はまだまだ余力が残っていて、私も必殺技を温存していたのに急に帰らされてふがいない結果に終わったの。今度こそ私の力を見せてやるわ♡』
相手が止まっていないと攻撃をあてられない固定砲台の魔法使い綾香があざとく答える。
『私は紘一がミスしたせいで攻撃を受けてしまい、無理やり連れ戻されてしまいました。出て行ってくれてせいせいするわ。今回はあんな弱虫のザコじゃなくて、私たちのリーダーの葛野秀明さんが参戦してくれるから、問題はないわ♡』
フォン……
ミスしたのはお前だ。不用意に竜に攻撃して光線を喰らっただけだ。
あまりにも不快なインタビューだったから思わずテレビを消した。
「あなたも行くんでしょ……?秀明の足手まといにならないようにね」
「……」
そしてなにも分かってないのにしたり顔で言ってくるお姉ちゃんをもう一回ひっぱたきたくなったけどやめておいた。
私はただお兄ちゃんがくれたお守りを握りしめ、眠りについた。
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