第5話 自由を謳歌してたらモフモフ妖精と遭遇した

あぁ~気持ちが良いね~。



見渡す限りの海と空。


春の穏やかな日差しに、心地よい海風。

太陽が反射する海面はキラキラと輝いている。



そんな海の上を俺は飛んでいる。



えっ?なにをしてるのかって?


俺は太平洋ダンジョンに向かっている。


これは太平洋にあるダンジョンで、あまり知られていないが高位ダンジョンの1つだ。


そもそも世界に7か所ある高位ダンジョンを攻略すれば人類は救われるとか言われているが、あれは怪しい。

どう考えても言われているダンジョン以外にも高位と思われる場所があるからだ。


7か所というのはアメリカ、中国、ドイツ、インド、ブラジル、オーストラリア、日本だが、他にも南極、太平洋、大西洋、南アフリカなどに高位ダンジョンがある。

高位ダンジョンというのは100層以上の階層があるダンジョンのことだ。


もちろん、その7つだけに何か秘密があるのかもしれないがな。


まぁ、そんなことはどうでもいい。


俺自身は生きて行かなきゃならない。

でも俺には探索者以外の生き方はわからない。

だから探索したいんだけど、日本ダンジョン協会を脱退した俺は日本国内のダンジョンには入れない。


そんな中で行けるところと言ったらここ、太平洋ダンジョンしかない。

海の上に浮かんでいる入り口から入っていけるやつなんてほぼいないし、ここは高位探索者で自らの力で入れるやつなら誰でも入っていいことになっている。

世界ダンジョン協会のお達しってやつでな。



見えてきた見えてきた……って、なんだ?

なんで太平洋ダンジョンの入り口が黒魔力で覆われてるんだ?



せっかく良い気分で飛んできたのを邪魔された俺は警戒しながら太平洋ダンジョンに入った。


中は少し魔力が多いくらいで普通に見えた。


と、そこで変なものが落ちてるのに気付いた。


手のひらサイズで、少し金色っぽい美しい白い毛で覆われた……なんだこいつ?

持ち上げてみたが、気を失ってるみたいだ。

子猫のようにも見えるが、尻尾がないし、耳はどちらかと言うと兎みたいだ。


毛並みがとてもいいせいか、手触りが柔らかで心地良い。


『むぅ……はっ、だれ?ってうわぁ』

それを眺めていると、突然目を覚ました。

そして目の前にいる俺に驚いて俺の手から落ちそうになったので、支えてやる。

人間の言葉を喋ったよな?


「大丈夫か?そこで転がってたから」

『なんと?エフィーを助けてくれたのね?』

「拾っただけだが……」

『あなたはここに入れる人?……たしかに魔力が多い……強い』

なんだろう。思いっきり探られている。ならお互い様だよな。

俺はこの不思議な生物に鑑定をかける。


『うわぁあぁ』

するとなぜか目を回す……エフィーってのは名前っぽいな。

表示された情報によると種族は妖精、特性は魔力耐性、名前はエフィーだった。


「どうして妖精がこんなところにいるんだ?」

『エフィーは一族に嫌がらせをしたモンスターをやっつけにきたのね。絶対に探し出して倒すのね』

どう見ても戦闘能力があるようには見えないが、小さな手でファイティングポーズを作り、しゅっしゅっと空を殴っている。


「その魔物はお前が倒せるようなやつなのか?」

『それは言ってはいけないのね。エフィーは全力を尽くすのね。頑張るのね』

「そっか」

頑張ったら全てが叶うなんてことはない。

俺もちょっと前に思い知ったばかりだ。



「で?どんなやつだ?どうせ暇だし、なんなら手伝うぜ?」

『ほんとうなのね?キミはいいやつね。助かるね』

掌でピョンピョン跳ねるエフィー。

可愛らしかったので反対の手で撫でたら怒られた。




「で?どこにいるって?」

『わからないのね。でも、こっちだって言われてる気がするね。進むのね!』

「おぃ!ちょっと待てよ!やみくもに走ったらまずい」

『えっ?……えぇえぇぇえええぇぇぇええええええ!!!!』

言わんこっちゃない。まぁ助けてやるか。

俺はしぶしぶエフィーを探してダンジョンを進んで行った。



「そもそもお前はどこに住んでるんだ?」

『エフィーはエフィー達の村に住んでるのね』

「その村はどこにあるんだ?」

『え~っと……う~んと……』

「わからないんだな……」

『そんなことないのね!エフィーの村はバフィーの丘を越えて、アンフィ―の森のすそ野の、ラフィ―の平原の森寄りにあるのね!』

「どこだよ……」

俺とエフィーはそんな他愛のない会話をしながらダンジョンを進んで行く。


太平洋ダンジョンの上層部はなぜか機械とかゴーレムが多く、一部魚人が出てくる程度で、あまり敵は強くない。

それでも一定数襲ってくるのが普通であり、そんなモンスターを全て瞬殺で薙ぎ払いながら俺は進んで行く。


『キミはめちゃくちゃ強いのね!ビックリなのね』

さすが高位ダンジョンだな。

なぜかエフィーを連れたまま進んでしまっているが、50層を超えたあたりでモンスターの数が凄まじい数になった。


前回来たときは発見されたばかりのここの調査という名目で世界ダンジョン協会のチームの一員として来たからここまで深く潜っていない。

観測はだいたい40層まで調べればそこが低位(30層まで)、中位(80層まで)、高位(100層まで)かはわかる。

ダンジョン内に漂う魔力の濃度や、20層や40層で出てくるボスモンスターの強さでな。


でも今回は行けるところまで行ってみるつもりだ。

ストレスも貯まっていたし、自分がどこまでできるのかを確かめたいという気持ちもあった。


そこにエフィーの仇探しも加わった。

どこから来たのか分かんないけど、50層でもいないとなるともっと先か?

そんなモンスターに荒らされたらエフィー達なんかあっさり全滅しそうだけどなにかあるのか?



『いたのね!あいつなのね!?』

エフィーがそう叫んだモンスターと遭遇したのは、なんと79層だった……。

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