世界を救うためのダンジョン探索から帰ってきたら恋人は寝取られ、探索失敗の責任を押し付けられたからブチ切れて日本最強パーティから脱退したら、あいつら勝手に自滅していった
第2話 最低な親子(濡れ衣を着せる父親、恋人を寝取った息子)……どっちもクソだな
第2話 最低な親子(濡れ衣を着せる父親、恋人を寝取った息子)……どっちもクソだな
「おい」
「どうしたの、紘一?そんなに血相を変えて。帰って来たばかりなんでしょ。少しは休んだら?」
俺はクソ野郎を殴った後、こいつを訪ねた。
幼馴染で、一応彼女のはずの宮永茜だ。
彼女もこのダンジョン協会の東京本部で働く探索者だ。
日本では30か所ほどのダンジョンが出来上がっていて、そのうちの9割を管理するのが日本ダンジョン協会だ。
残りの1割は政府か、政府系の企業が管理している。
全ての探索者はダンジョンを管理している団体に所属してダンジョン探索を行う。
茜もランクは低いが探索者であり、日本ダンジョン協会に所属して活動している。
ご近所さんだからこうやってすぐに訪ねられる距離に住んでる。
というか、ほぼすべての探索者やダンジョン協会員は拠点としているダンジョンの付近に住んでるから当然だ。
あのクソ野郎も近所だ。
尋ねた理由は一応確認するためだ。浮気のな。
クソ野郎の妄想って可能性も多少はあるからだ。
「お前、秀明と寝たのか……」
まぁほぼ確定だろうけどな。
あのクソ野郎は見た目は良いし、社交的だ。
それにプライドも高い。
すぐばれるような嘘はつかない。
「どうしてそれを?」
「否定はしないんだな」
やっぱりだ。
俺の問いかけに対して、視線を泳がした。
そして改めて俺を見た茜の目に浮かぶのは諦め。
言い訳位してほしかったが、こいつはこういうところはさっぱりしている性格だ。
「確証があるんでしょう?なら言い訳しても無駄よ」
茜に向かってどうして?と言いたかったが、表情を消し、淡々と語るこいつの顔を見ると俺も諦めの境地に達してしまう。
「……半年は長かったのよ」
お互いに見つめているようで相手を見ていない無為な時間が流れた後、ぽつりと茜が呟く。
「それはダンジョン協会の計画で仕方なく……」
「そんなのは関係ないわ。あなたの思いは重かったけど、嬉しかった。でもなくなると寂しくなるものね……」
勝手な言い分に頭の中で何かが蠢く。
仮にそうだったとして、その無茶な計画を作ったダンジョン協会の中枢にいる奴と浮気するのか?
決して俺がやりたかったことじゃないことに国民の期待とか、家族・友人・恋人のためとか、それでも断ろうとしたら協会からの追放をちらつかせてきたやつと?
脅してきたのは葛野の父親……ダンジョン協会会長の方だが、お前にはそれを愚痴ったから知ってるよな?
「もういい。さよならだ」
「……そう。勝手にすればいいわ。私には関係ないから」
殴りたくなる衝動を押さえつけるので精一杯だった。
告白してきたのは茜だ。
当初は恋愛なんかに全く興味がない俺だったが、心が疲れているときに優しくされた。
お返しにと、食事したりプレゼントを贈り、一緒に旅行したりしていく中で俺も真剣に好きになった。
もともと幼馴染で仲は良かったから。こいつと、こいつの妹の遥。よく一緒に遊んだ。
俺の両親が死んだときもずっと一緒にいてくれた。
この先もずっと一緒にいたいと思っていた。
約束もしていたよな。
それを……。
もうよそう。
終わったことだ。
そもそも俺には不要だった。
その日は食事を採る気もしなくて、そのまま家に帰って寝た。
翌日……
面倒臭い。呼び出しだ。
「来たな沖田君」
「……」
クソ野郎の親父……日本ダンジョン協会会長の葛野章人が俺を待っていた。
こいつに対して全くいい感情を持っていない俺は特に言葉は返さず、ぶすっとした会釈だけで答える。
「まずいことになった。まさか失敗するとは思わなくてな」
パンチングマシーンの的にしたら人気が出そうなムカつく顔でこんな無責任な言葉を言い放ったのが責任ある協会長だとは俺には思えなかった。
バカじゃねぇか?
「戦闘力で言えばキミは中国の探索者の誰よりも強いはずだ。そんな君がだ……。これは責任を取ってもらうしかない」
頭大丈夫か?
中国のダンジョンと東京ダンジョンの難易度が同じだと誰が言ったんだ?
高位ダンジョンって括りはあっても、そもそも階層が同じかどうかすらわからないんだぞ?
「退任されるんですか?お疲れさまでした」
「……ふざけるな!?なぜワシが退任するのだ!?」
いきなり怒り始めた。まるで風船のように膨らんだ顔に針でも差したい。
隅っこに控えてる協会員さん、針くれねぇかな?……だめだ。あれは会長派の人だな。
「責任を取るのはトップの役目では?」
一応言っておく。
「何を言っているのだ?協会は万全の準備をした。失敗したのは現場の責任だ」
「万全の邪魔をした、の間違いじゃないか?あと、現場の責任であれば、"明星"のリーダーは葛野秀明だな」
「残念だが秀明は参加できなかった。参加していたらこんな失態はなかっただろう」
俺の"万全の邪魔をした"のあたりでピクピクしていたが、しれっと自分の子供の責任は回避しやがった。
「残念でしたね。治療術師に頼めば即回復できそうなケガで参加できないとピヨピヨ泣く姿は滑稽だった」
「貴様ぁ!!!!!!」
なんなら下半身に蹴りでもくれておけばよかったな。
そうしたら無事に不能にしてやれたのに。
「そうやって粋がるのも今のうちだぞ?すでにマスコミには発表したのだ」
「はん?勝手にしろ!こんな組織、こっちから願い下げだ!」
そうやって周囲を埋めるのはお手の物だろうな。
そもそもそっち方面で準備万端だっただろうし。
「残念ながら責任を取るものは必要。それは貴様だ、沖田!」
「ふざけんな!こんなところやめてやる!」
こうして俺はフリーになった。
よく考えたら、この方が良くないか?
メンバーはクソ野郎にクソ女1、クソ女2と寡黙でいるかいないかわからないやつと、あと遥。
遥だけは気がかりだが、他はどうでもいい。
せっかくフリーになったんだから、フリーでも行ける太平洋ダンジョンで遊んでこようかな。
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