世界を救うためのダンジョン探索から帰ってきたら恋人は寝取られ、探索失敗の責任を押し付けられたからブチ切れて日本最強パーティから脱退したら、あいつら勝手に自滅していった

蒼井星空

第1話 寝取られと濡れ衣は我慢できない!こんなところ抜けてやる!!!

「残念ながら責任を取るものは必要。それは貴様だ、沖田!」

「ふざけんな!こんなところやめてやる!」


突然で申し訳ないが、俺は沖田紘一。

一応日本ダンジョン協会トップの探索者であり、有名探索者パーティ"明星"のメンバーだ。

いや、だった。


たった今日本ダンジョン協会も"明星"も脱退したから、フリー探索者だな。よろしく。



なんでこんなことになったかと言うと、酷い裏切りにあったからだ。



7年前、この世界に流星が降り注ぎ、落ちた場所にダンジョンが出来上がった。

そして一部の人たちが魔力を持った。

世界は大騒ぎだったらしいがそれは割愛する。


そんな最中に、この事態は予言されていた物であり、高位ダンジョンを全て攻略すれば世界は救われるという話が出回った。主張しているのは世界ダンジョン協会で、彼らは100年前に見つかった不思議な石板を掲げていた。



それから数年で各国にダンジョン協会が作られ、多くの探索者が産まれた。

俺もその一人だ。


俺には才能があった。

両親が他界し、叔父の世話になっていた俺は、叔父から貰った不思議な刀を使ってダンジョンでモンスター相手に無双した。ひたすら殺し続けた。

なぜかって?モンスターが俺の両親を殺したからだ。探索者だったから仕方ないと言えば仕方ないがな。


日本では日本ダンジョン協会主導のもと、全国民の魔力チェックが行われ、適性があったものは全員探索者として育成しようとした。徴兵制もないのに思い切ったことをしたと思うが、それは国内に高位ダンジョンができてしまっていたからだ。


世界ダンジョン教会は高位ダンジョンを各国の責任で攻略するよう要請した。勝手な話だろ?


しかしダンジョン産のドロップ品を占有したアメリカや中国、ドイツが他国の探索者排斥のためにこの話を受けたため、日本もなし崩し的に受けざるを得なかったらしい。


それで高位ダンジョンである東京ダンジョン攻略のために日本ダンジョン協会が優秀な人材を呼び集めて結成したのが元所属先の"明星"という探索者パーティだった。


そこで俺たちは東京ダンジョンの探索を進めていった。

そんな折になんと中国が国内の高位ダンジョンの攻略に成功したと発表した。

 

高位ダンジョンを有する国々である、アメリカ、中国、ドイツ、ブラジル、インド、オーストラリア、そして日本はD7という情報共有及び相互支援を名目とした組織を作っていたが、中国の発表は各国にとって寝耳に水だった。


そんな状況に焦ったアメリカは自国の探索を加速させ、日本にも同じことを求めた。


半年前の話だ。

それに応えたい日本は大規模な東京ダンジョン攻略を計画し、自信満々に俺たち"明星"および上位パーティを送り込んだんだ。


そこに待っているのが地獄だとも知らずに。


俺たちは70層までは順調に攻略したが、そこからは厳しい道のりだった。

流れくるマグマ、蔓延する毒、大地と空を埋め尽くすモンスター。


死に物狂いでなんとか進んだが、限界は96層で訪れた。

すでに他のパーティは離脱した。


戦士の鍵沼琴音、魔法使いの綾香、神官の宮永遥、そして魔法剣士の俺……あと騎士の横田那月。全員が傷ついていたが、そこで琴音が致命的な傷を追った。

巨大な竜に対して挑発するような形で火球を放ったせいで攻撃を喰らったんだ。

 

さらに悪いことに直前の探索の大ケガ(?)によってリーダーの葛野秀明は不在。

そんな中で俺は帰還を宣言し、問答無用で全員を連れ帰った。

気を失った琴音は問題ないし、幼馴染で仲の良い遥、寡黙な那月は大人しく従ってくれたが、ロリ巨乳から情けないとか、弱虫とか、愚図とか口汚く罵られるのはイライラした。帰還に当たってさすがに配信は止めていたが、あまりにも酷い罵倒だったので一応録音しといた。


で、帰ってきたら出迎えてきたんだ。


「残念だったな、紘一」

「それが命からがら仲間を守りつつ帰ってきた仲間に言うことか?」

クソ野郎……葛野秀明は相変わらずクソ野郎だった。


見た目はさわやかイケメンで社交的だからファンが多いが、こいつの性格はだいぶ歪んでる。

今も仲間たちを治療室に送って人目がないことを良いことに俺に嫌味を言いに来やがった。


「仲間を守った?一人だけ無傷で、他は怪我だらけ。琴音に至っては致命傷に近い。どこが守れているんだ?」

「てめぇ……」

俺たちは96層まで行ったんだぞ?

日本ダンジョン協会の甘い見立てとは全く違う地獄のような環境の中でだ。

『今のお前らなら鼻歌交じりに100層まで行けるだろう』とか言い放ったお前の親父の顔を殴らせろ。


「お~怖い怖い。日本一の探索者・沖田紘一は仲間を満足に守ることもできず、さらにダンジョン探索失敗のイライラから不運にもケガで参加できなかったリーダーに当たり散らしましたってか?」

「ぶっ殺されたいらしいな……」

「ぐっ……」

疲れていたこともあるが、さすがにこの挑発は許せない。

魔力を解放してクソ野郎に放つと、こいつは耐えきれずに蹲る。

弱すぎて泣けてくるね。こんなのがリーダーだと?


「俺を殴りたければ殴ればいいさ。そうすれば明日の一面はお前に決まりだな。まぁ、気にするな。ちょっとくさい飯を食ってくるだけだろう。茜に……遥のことも心配するな」

「てめぇ、あいつらに何かしやがったら許さん」

「ははっ。彼氏気取りか?茜は抱き心地が良かったぞ?」

「なっ……てめぇ!」

「ぐはぁ」

俺は一応力を押さえつつクソ野郎をぶん殴った。

汚いことにしょんべん漏らしながら気絶しやがった。


その後でクソ野郎の父親のクソおやじ……葛野章人からも探索失敗の責任を被れとか言われたからふざけんなとなったわけだ。

75層までしか攻略実績がないのに、中国が高位ダンジョンを攻略したとか言うニュースに対抗して金だけ投入するからこんなことになるんだろ?

そもそも、もし俺一人だったら先に進めたんだが……。

 

政府と協会のせいじゃねーか!

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