第14話 飛行は続くよどこまでも
「残りは二個か……」
長かったオトシモノ探しの旅も、あとちょっとで終わりだ。ここまでいろいろなことがあったなぁ。
あっ、しくった。どこ行ってるのか魔王様に聞くの忘れてた。
暇そうな感じだったから逆にこっちが早く終わらせたいって気持ちになってたけど、あれは分かっててやったのかも。魔王様くらいになると僕なんかの心も読んでそうだし。
まぁいっか。もうあんま興味ないし。
僕はシイラさんをツクリさんの中に入れようと思い、持ち上げようとした。
「おもっ!」
なぜかシイラさんがさっきよりも重たくなっていた。持てないわけじゃないけど、ずっと持ってたら疲れる重さだ。
「なんでこんな重くなってるの? てか最後までとかけっこうきつくね?」
一瞬、シイラさんをここに置いたままにしたくなったけど、その気持ちは遠くへ投げ捨ててツクリさんの中に入れた。
「よし、次のオトシモノを探そう」
僕は近くに置いておいた紙飛行機を手に取った。
「よっしゃ! さっさと行こうぜ!」
「うわっ、びっくりしたぁ」
めっちゃ元気だ。スタートしたばかりの僕みたい。
「行くってどこに?」
「そんなの決まってるだろ? 魔王様のオトシモノがあるところだよ!」
「えっ、もしかしてヒント的な感じじゃなくて、どこにあるかが完全に分かってるってこと?」
「知らん!」
「はっ?」
「でも分かる! 体がそっちに飛びたがってるんだ! 今すぐにでも飛んでいきたい!」
「そ、そう」
よく分からないけど、飛ばせばいいってことだよね?
「じゃあ飛ばしてもいい?」
「おうよ!」
「いくよ? ほいっ!」
「ヒャッフー! 風が最高に気持ちいいぜ!」
すごく
「お前、最高だな! 名前なんていうんだ?」
「左東朔矢だよ」
「サトウサクヤか! いい名前だな!」
「あ、ありがとう」
「俺はコウキってんだ! よろしくぅぅぅ!」
「うん、よろしく」
なんだか自分が急に大人になった気分だ。自分よりもうるさいのがいると、こうなるのかもしれない。
もし女子の前でかっこつけたくなったら、うるさい友達にそばにいてもらおう。
あれ、うるさい友達なんていたっけ? てか、僕に友達なんていたっけ?
この世界に来てからかなり時間が経ってる気がする。そのせいで、記憶もどんどん薄くなってる。まだ消えてないのがすごいんじゃないかって思うほどだ。
そういえば魔王様も見どころがあるかもって言ってたな。
もしかして僕、すごいのかも。主人公みたいな感じなのかも。まぁ主人公ではあるか。他に誰もいないし。
「おい、サトウサクヤ!」
「なに? てかなんでフルネーム?」
「んなもん、いい名前なんだから全部言ったほうがいいだろ!」
「そうなの?」
「そうだ! そうに決まってる! はっはっは!」
「それで、さっきのはなんだったの?」
「ああ、そうだ忘れてた! この先の突き当たりで右に曲がるぞ!」
「分かった。でもそれ、別に言わなくてもいいよ」
「なんでだ?」
「だってコウキが進む方向に行けばいいだけじゃん」
「はっはっは! たしかにそうだな! でも俺は言うぞ! そのほうが親切だからな!」
「そ、そう」
たしかに親切ではあるけど、近くでずっと大きな声を聞かなきゃいけないのはなかなかきつい。てかこれって、逆に不親切なんじゃね? ぷぷっ……。
「なんだ? なんかおもしろいことでもあったのか?」
「いや、なんでもない」
「そうか! おっ、きたぞー! よし言うぞ! 右に曲がりまぁす!」
「なんでそこだけ変な言い方なんだよ!」
「そのほうがおもしろいからに決まってるだろ! はっはっは!」
マジで元気だな。どこからそんな気持ちが出てくるんだ。
てか、ちょっと疲れたな。さすがにシイラさんが重すぎる。
「ねぇコウキ! そろそろ休まない? 僕ちょっと疲れちゃった」
「なに弱気になってんだ! サトウサクヤならできる! まだまだ行くぞ!」
「え〜そんな〜」
そのあともコウキは全然休ませてくれなかった。
自分は飛んでるから疲れないくせになんて思ったけど、コウキの体がどういう仕組みになってるかは分からない。
もしかしたらめちゃくちゃ筋肉みたいのがあって、それをずっと動かし続けてるかもしれない。いや、ないな。紙だし。
それにしても不思議だ。
僕が駅で飛ばしてからコウキはまだ一回も落ちてない。しかもまったく落ちる気配がない。
コウキはほんとに紙飛行機なのか? 紙飛行機型のドローンだったら許さない。
「サトウサクヤ! あとちょっとだぞ! 頑張れ!」
「はぁ、はぁ……おぉ」
「声が小さい! 最後まで本気を出せ!」
「おー!」
なんなのこれ……。コウキって、実は熱血教師? てか僕はいったい何をやってるの?
このままだと最後には「夕日に向かって走れ!」なんて言われそうだ。絶対やらないけど。なんと言われようとやらないけど!
「見えたぞ! もう目の前だ! 俺の目がどこにあるかって? それは俺も知らーん! はっはっは!」
「そんなの聞いてない……ってえっ!?」
僕は驚いてその場に止まった。ここまでついて行くのに必死で全然気づかなった。
コウキが進むその先には、僕の家が見えた。
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