第10話 チートキャラ
さて、次はどこだろう。早く話しかけてこないかなぁ……。
ワクワクしながら待っていたけど、それから五分経っても十分経ってもメガネは話しかけてこなかった。
「いや、まだ?! いつなの?」
めっちゃ時間の無駄なんだけど。もしかして、なんかやらないとダメなパターン?
なんかってなんだよもう……。いや、待てよ? メガネだからかけないとダメってことかも。僕は視力はいいからメガネはかけたくないけど——これは度が入ってないから大丈夫か。
ゆっくりとメガネをかけてみた。絶妙なフィット感だ。
これが
ひとりでポーズを決めていると、
「五分、いや三分」
メガネから声が聞こえてきた。やっぱりかけないと動かないやつだったのか。
「何が?」
「私が次のオトシモノを見つけるまでの時間よ」
「早すぎでしょ! そんなことできるの?」
「余裕ね。だって私、
「透視!? なにそれチートじゃん! すっげー!」
「でしょ? 私ってすごいのよ」
「うん! すごいすごい! マジですごい!」
「だよね! やっぱり私、すごいよね!」
「……うん、すごいよ」
「あはは! やっぱり私ってすごいんだ! あはは!」
「いや早くやってよ!!」
「えっ?」
「透視だよ、透視! まだ見てないのに勝手に盛り上がっちゃったけど、実際にやってくれないとほんとにすごいか分かんないじゃん!」
「そ、そうよね。あはは……。私ったら、
「いや、バカではないけど」
「ううん。私はバカなの。そうだわ。私ってバカなのよ! 残念な女なのよ!」
「
もうなんなんだよ。やっぱり魔王様のオトシモノは変なやつばっかじゃん!
でも透視能力が本当だったらかなりやばい。今までひとつ探すのにめっちゃ時間かかってたから、ここで短縮できるなら絶対したい。
どうにかして自信を取り戻してもらおう。
「あの、メガネさん」
「なによ。てかその呼び方やめてくれる? 私はメネカよ」
「ごめん。じゃあメネカさん」
「さんもいらない。
「……分かった。じゃあメネカ」
「なに」
「そのぉ、透視能力を使って魔王様のオトシモノを見つけてくれない?」
「嫌よ」
「えっ」
「今はそんな気分じゃないの。だからあっち行って」
「えぇ……じゃあ外していいってこと?」
「それはダメ!」
「どっちだよ!」
「あんたの頭の上に乗せなさい。それならいいわ」
「へいへい」
めんどすぎる。もしかしたら今まででいちばんめんどいかも。こういう人が現実にいたら、僕は絶対に好きにならないだろうな。
そう思いながら僕はメネカを頭の上に乗せた。
「はぁ……私だって……」
「えっ? なんか言った?」
「私だって透視能力は使いたいわよ」
「じゃあ」
「でも! 今は太陽の光が強すぎてできないの。あの
「太陽……」
もしかして、光に弱いってこと? だとしたら……。
僕はツクリさんからサオリさんを出して、バサっと広げて影を作ってみた。
「えっ、なになに? 何が起こってるの?」
「メネカ、光が苦手なんでしょ? だから影を作ってみたんだけど……どうかな?」
「どうもこうも……最高じゃない!!」
「おぉ」
「なによもう! こんなすごいのがあるなら最初に言ってよね!」
「ごめん」
「でもありがと! これなら私も全力を出せるわ!」
「じゃあ……」
「ええ。使うわ、透視能力」
「よっしゃあぁぁぁ!」
思わず大声が出た。
変なストレスが溜まってたのもあるかもだけど、やっと進めるっていうのとチート能力が目の前で見れるっていうのがあったから、自分でもびっくりするくらいの大声だった。
「うっさいわねぇ、そんなに喜んじゃって。バカみたい」
「ごめんごめん。メネカの力が見れるって思ったらうれしくなっちゃって」
「そ、そんなこと言っても……なんも出ないんだから!」
今のはどういう意味だろう。まぁ気にしなくていいか。
「えーっと、またかけてもいい?」
「ええ、いいわ。でも、私がいいって言うまで目を閉じてて」
「……分かった。じゃあよろしくね」
「任せなさい! いくわよぉ……レッツ透視!」
どこかで効果音が鳴った気がした。たぶん僕の頭の中で勝手に鳴ったのかも。
「いいわよ」
メネカの合図があった。目を開けてみる。
「……すっげー! これが透視か! やっべー!」
周りの建物がすべて
どこまで続いてるか分からない。ずっとずっと先まで透けてるから。
——ぐいっ!
「うわっ」
いきなり頭が引っ張られた。
「あっちを見て。ここからちょっと離れたところに、なんか落ちてるわ!」
「あれだよ、あれ! やっぱメネカはすっげーや!」
「でしょ? やっぱり私って天才だわ! あはは!」
ちょっと離れてるといっても、見えた先は
それが見えるほど僕の視力がいいわけがない。メネカの能力は透視だけじゃなかったんだ。さすがはチートキャラだな。
——僕たちは岐阜
魔王様のオトシモノは駅のホームにある。近づいてみると、それはシルクハットだった。マジシャンが使うような、そんな感じのやつだ。
「よかったじゃん、見つかって」
「うん。メネカのおかげだよ。ありがとう」
「あったりまえじゃん! だって私、天才だもん!」
「うん。マジで天才だよ!」
「ヤッフー! あっ、そうだ。あんたの名前聞いてなかったわね」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「私だけ言って終わってたのよ」
「あー、そっか。僕は左東朔矢。よろしく!」
「あはは、よろしくって……これでお別れよ」
「……だね」
「じゃあね、サックー。せいぜい残りも頑張りなさい!」
「せいぜいって……」
メネカがすっと消えた。今まででいちばん静かになった気がする。
サックーって呼ばれるのは初めてだった。まぁ、悪くないかも。
僕はメネカを外した。なぜか
そのあともかけようと思ったけど、なんか誰かにからかわれそうな気がしたから、ツクリさんの中にそっと入れた。
誰もいないのにそんな気になったのは、仲間が増えているからかな……。
——ピーンポーンパーンポーン。
突然、上のほうからよくあるチャイムみたいのが聞こえてきた。でもあれはたぶん、魔王様の声だ。
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