第7話 心は変わる
「はぁ、ちょっと疲れたな。ここらでひと休みしよう」
「そんなんでいいのかねぇ?」
よし、もう驚かないぞ。こいつらがいきなり話しかけてくることはもう分かってるんだ。
「なんだよ、いいじゃん別に」
「時間は誰も待ってはくれないんだぜぇ?」
なんかめっちゃかっこつけてるんだけど。見た目では分からないけど、そんな雰囲気がじわじわ伝わる。
「じゃあちょっとだけ休んだら行くよ」
「ふん、まぁいいだろう」
うざい。なんかうざい。これは早く次のやつを見つけたほうがいいな。
——五分ちょっと
「そうだ、名前言ってなかったね。僕は左東朔矢。好きなように呼んで」
「了解。俺はカーボだ。よろしくな」
「うん、よろしく」
「ところでサクヤ。次のオトシモノがどこにあるのか分かってるのか?」
「全然」
「ほう、そいつは困ったな」
「えっ、なんで?」
「実を言うと、俺も知らないんだよ」
「えぇー!?」
「悪いな」
「嘘でしょ……なんかこう、魔王様からヒントとかもらってないの?」
「そんな記憶はない」
「マジかよ……」
いやいやいや、オトシモノってお助けアイテムじゃないの? なんなのこいつ。マジで使えないじゃん! どうすりゃいいんだよ……。
「あのさ」
「なに?」
「魔王様を呼ぶってのはどうだ? まだ呼んでないんだろ?」
「あっ、そうか! それ忘れてたわ」
いいこと思い出したぁ。これで次のオトシモノは見つけられる。
「なら早く呼ぼうぜぇ。俺も久しぶりに魔王様の顔が見たいしさ」
「……ちょっと待って」
「ん?」
危ない危ない。こいつに流されて使うところだった。たしか三回までしか呼べないんだよね。今ここで使っちゃったら、次は見つかっても残りの六個でなんか問題が起きたときに終わる。かといって、次に進めなきゃそれはそれで終わるし。どうしよっかなぁ……。
僕はあれこれ考えていると、
「ああ、やっぱり
気づかぬうちに昔の
「あっ、ごめん。大丈夫?」
「いいってことよ。俺は蹴られるために生まれてきたんだからさ」
「ははっ、言えてる」
そういえば昔はよくサッカーやったなぁ……。誰かに聞かれたら小六で昔を語るなって言われそうだけど。
でも、僕にとって幼稚園のときはもう昔なんだ。あのときは外で遊びたい年頃だったから、お父さんとよく公園でサッカーしたっけ。
あれ、なんで今こんなこと思い出したんだろ……。てか、なんでサッカーやらなくなったんだっけ。
「なあ、思いっきり蹴ってくれよ。絶対ゾクゾクするぜぇ」
「なんだよそれ、気持ち悪い」
「いいから蹴ってくれよ。俺を空まで上げてくれ!」
「しょうがないなぁ」
カーボを空高く上げる気持ちで思いっきり蹴ろうとしたとき、突然頭の中に昔の記憶が流れてきた。
『いたっ! もうサッカーなんてきらい! やめる!』
『大丈夫か?』
『あたまいたい……』
『病院行こう』
『えっ!?』
『しょうがないだろ。ちゃんと見てもらわないと分からないし』
『……』
そうだ。あのとき思いっきり蹴ろうとして、空振りして地面に頭を打ったんだ。それでそのまま病院に行ったから、痛みと怖さで悪い思い出になってたんだ。今の今まで忘れてたな……。
「……ヤ」
「……い」
「おい、サクヤ!」
「うわっ、びっくりしたぁ」
「どうしたんだよ、いきなり動かなくなっちまってよぉ」
「あぁ、ちょっと昔のこと思い出してた」
「ほーん。そんなことはどうでもいいんだよ。蹴られるのを待ってる俺の気持ちを考えろ!」
「もう、うるさいなー。蹴ればいいんでしょ、蹴れば」
僕は雲に届かせる気持ちで思いっきりカーボを蹴り上げた。
「ひゃっほーい! これだよこれ! ゾクゾクするぜぇ!」
「ははっ、めっちゃ喜んでんじゃん。でも、これは楽しいわ」
——キュピーン!!
謎の効果音とともに、突然カーボが光った。
「なんだなんだぁ?! 俺の体が
落ちてきたカーボをキャッチして、何が起きてるのか確認してみた。
光は消えたけど、ボールの模様がさっきと変わっている。
「おいおい、そんな顔でこっちを見るんじゃねぇ」
じっくりとその模様を見てみると、それが模様じゃなく文字になっていることが分かった。
「これ、熱海銀座商店街って読めるけど……もしかして次のオトシモノもここなの?」
「そういやさっき上から見たとき、あっちに商店街っぽいのがあったな」
「マジで!?」
「おうよ。俺についてきな」
「え?」
カーボを地面に置くと、自分でころころ転がり始めた。僕が蹴ったわけじゃないのに。
魔王様のオトシモノは、意外と奥が深いのかもしれない。いや、ただよく分からないだけか。
そんなことを考えながらカーボについていくと、商店街が見えてきた。
商店街の雰囲気はやっぱり好きだ。いろいろなお店があって、どこを見ようかワクワクする。
「おいサクヤ、これじゃないか?」
「これか!
カーボの前には、僕の背中にぴったり合いそうなリュックがあった。
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