第9話私の好きな先生2

小園先生は、額の汗を拭きながらアイスコーヒーを飲んでいた。

先生はいい匂いがした。

「先生、いい匂いしますね。香水ですか?」


先生は振り向き、


「香水?……あ、あぁこの匂いね。シーブリーズ」

高校の男子が使ってたな。

でも、違うような気がした。


「シーブリーズはそんな、いい匂いはしませんよ!」


先生は、禿げた頭をかきながら、

「実は香水なんだ。バレたか。僕の姪っ子が、美容関係の仕事をしていてね。もらったんだ」


「良いですね」


わたしはアスティーを飲んだ。


「矢口君は何故、世界史じゃなくて地理を選択したのかい?」


わたしの高校では、社会は選択科目だったのだ。


「ち、千夏が世界史受けよって……」

「千夏?」

「あっ、坂本です」 

「あぁ〜、男の子と手を繋いで登校してた坂本かぁ〜。相手は福満だったな」

「そうです」 


小園先生は腕時計を見た。安そうなジーショックだった。

「まだ、後20分は来ないなぁ〜。ちょっと、タバコ吸ってくる」 


田舎の無人駅の端っこには、灰皿があり喫煙出来るのだ。


その姿のを遠目で見ていた。


小園先生の喫煙姿はカッコよかった。男子がたまにタバコを吸っているのを見ると、かっこよくタバコを吸っているつもりでも、小園先生には勝てない。何十年も喫煙しているんだろうな。


「悪い、悪い。昔は学校でもタバコ吸えたんだよ!」

「えぇ〜、学校で?」

「職員室に灰皿があってね。今はどこも、禁煙だけど」


わたしは、チャンスだから思っている事を話したいと思った。


「小園先生は、女性に興味あります?」

「何だよ、突然。……あるよ」


「じゃあ、年の差は?」


「3歳から60歳までの女子なら問題ないよ!いいのでしょうか〜クイズ〜年の差なんて〜」


「何、バカな事言ってるんですか?」

「い、いや、君が年の差と言ったから。昔。あったんだ、クイズ年の差なんて!ってのが」


「先生、わたしは先生みたいな男性が好きなんです」


「……そうか、頑張れよ!オッサンは、イヤらしいから気を付けろよ!」


「違うんです。先生の事が好きなんです」 


「冗談はよしこちゃん」


「わたし、本気です」


「年の差30だよ!しかも、先生はハゲで、糖尿病で、水虫だよ!」


「良いんです。わたしは先生が好きなんです!」


「そうか。でも、それは許されない。実は……」


その時、ちょうど電車がきた。

電車の中は冷房が効いていて涼しかった。


小園先生は、話の続きをし始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る