第10話私の好きな先生3

小園の先生はとわたしは電車に乗った。

冷房が効いていて、涼しかった。わたしの隣に良い匂いのする小園先生が座った。

「矢口、先生には恋人がいるんだ。誰にも言っていないが」


わたしはショックだったが、先生は話し続ける。


「でもね、彼女は10年前から、植物人間なんだ。通勤途中交通事故を起こしてね。頭を強く打ってね。それから、ずっと病院なんだ。これからも、彼女に会いに行く。話しは出来ないが、喋りかけると右手で掴んで反応するんだ。だから、矢口、君の気持ちは嬉しいが、先生は彼女がいるんだ。ゴメンな」 


わたしは首を振った。

恋とか愛は強く念じると伝わると思っていたが、わたしは先生の純粋で優しく誠実な所に惹かれていたが、恋人になることは諦めた。


「小園先生」

「なんだい?」

「わたし、卒業しても先生の側にいたいんです。彼女とかでは無くて……」

わたしは言葉の表現に窮した。

「そっか、友達だな。ってか、親友。良いぞ。お前が、20を超えれば酒も飲めるし。キャサリン先生や羽弦先生なんか、飲むと面白いぞ!」

わたしは、未来が明るく見えた。


「キャサリン先生は分かりますが、羽弦先生はどんな人ですか?」


と、わたしの声は弾んでいた。


「羽弦先生は、物理の先生だから、『ガリレオ』の福山雅治のモノマネをするんだ。面白いぞ」


わたしの恋は、とても甘酸っぱくアイスティーが高級な紅茶に思えた帰り道だった。

 

それから2年後。


「小園先生、もっと飲んでくださいよ〜」


「矢口、お前、酒つえぇな?まだ、飲むのか?」


わたしは、小園先生、キャサリン先生、羽弦先生と飲んでいた。

職業は保育士。

私の好きな先生は、去年彼女さんが亡くなりフリーになったが、まだ、新しい彼女を作る気配は無かった。

わたしは、未だにオジサンが好き。

ずっと、小園先生の隣りで飲んでいたいと思う若者だった。


「私の好きな先生」終

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