意地悪
――神様の意地悪
また、何言ってるんだって思った?
でも、これはある意味本当の話なんだ。実は、神様に意地悪されたの。私は今、大学1年生だけど、意地悪されたのは高校3年生の卒業するほんの少し前。
私は私立大学入試を受けたから、もうその頃には合格が分かっていて、あとは国立大学の子の応援と卒業式を迎えるだけだった。そんなはずだった。
意地悪されたのは、風もだんだんと暖かくなってくる、そんな頃だったな。第一志望の私立大学の合格が決まった翌日のこと。
意地悪される前の私は、こんなことを考えていた。
――卒業式で、私のことをずっと支えてくれた
それも皆の前で。
!!!
目を光らせてくれたのなら嬉しいな。びっくりしたかな。
楓真とは3年間クラスが同じで、環境委員会で一緒に活動したり、最寄り駅も同じだったりして仲が良かった。一緒に帰ったことも何度かあったし、幼馴染みたいな関係だった。その中でも、一番のきっかけはお互いの趣味がチェロ演奏だったことかな。楓真は私よりも何倍も上手だけれど。
最初は楓真に対し好意が湧くなんて一ミリも思っていなかった。でも、人間というのは不思議なもののようで、一緒にいる時間が長いほど好意を抱きやすいみたい。私もその罠にまんまと引っかかってしまった。
そんな楓真に卒業式のときに皆の前で告白しようと思ったんだ。私の学校の卒業式では生徒が体育館のステージに立って自由にパフォーマンスできる機会があったから、そこで告白の手紙を読もうと決めていたの。私、ここで人生最大の勇気を振り絞るつもりだった。たとえ振られても、嫌われても、無視されてもいいから楓真にこの気持ち、絶対伝えるんだって。
あっ! 楓真を好きになったのが、神様の意地悪ではないからね。
ここからが意地悪の話。
卒業式前、私は「身体困難症」という病に侵されてしまったんだ。
……そんな病気、調べても見つからないって?
実は、世界で私だけが罹った病なんだ。つまり謎の病。
病院の先生は、私の病気について次のように言っていたよ。
「検査によれば、身体の様々な機能が低下していくと思われます。例えば、手で物を持つのが困難になるほか、声を発することもできなくなり、その他全身に痛みが走るでしょう」
と。
そう言われてから数日後、本当に物を持つことができなくなり、文字を書くことはできなくなった。また、声を出すことも次第に難しくなった。ついには私の声が消えた。そして、深夜には全身に激しい痛みが襲った。そんな痛みを言葉で表現することがどんなに難しいことか。まるで自分の体でないような感覚が続いた。
一言でいうなら辛かったよ。
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