第4話 はじめてスーツを買う。
ムラなくパウダーが塗り込まれた陶器ばりに白い顔。
カミソリのように鋭い細眉。
伸びのいい赤いアイシャドウに
立体感命の涙袋。
薄い唇にボリュームを添えるローズ系のリップ。
イヤーロブとヘリックスにつけられた片耳3個ずつの、スパイラルバーベルやセグメントクリッカーのピアス。
ウェーブのかかったハーフツインのセミロングヘア。
ジャボやフリルのついたミルキーホワイトのブラウス。
対して闇のように黒いジャンパースカート。
大きなリボンのついたハンドバッグ。
とりあえず面接に向けての準備を進める事にした私。
まずは履歴書作りで必要になるはずの証明写真でも撮ってこようと玄関に向かったのだが、靴箱の鏡に映る見慣れたはずの自分の姿に違和感を覚え、思わず立ち止まった。
「あれ? もしかしてこの格好で証明写真はヤバいんじゃね? 普通にスーツとかいる系じゃね?」
昼の世界との繋がりが希薄なせいで、危うくその点を見落とすところだった。
(相手はお昼勤めの“真面目企業ちゃん”だもんな。スーツいるに決まってるよな。面接も当然スーツかな? メイクとかアクセサリーもどうにかした方がいい?)
私は履きかけていたショートブーツを脱いで、回れ右をした。
「またヤベーやらかしするとこだったじゃねぇか。やらかしに愛され過ぎて迷惑だろっ。2度と近づくなっ」
◆
「そもそもスーツなんて持ってねぇんだよ」
ということで
いろいろな価格帯のレディーススーツが取り揃えられている中、ブランド志向の私はつい見栄を張って、そこそこ高級なフルオーダーのスーツを注文ようとした。
しかし――。
安物の梅干しのような顔をした店員が「まぁ仕上がりまでに最低2ヶ月はみて欲しいですねぇ!」などと舐めた事を抜かし、私は唖然とするしかなかった。
(に、2ヶ月!? 1週間後に面接なんだぞ!? まっっったく間に合わねェじゃねーか無能!)
その後ゴネまくっていたら店から
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