第33話 てっしーさんが家で待つ

 いつも通り家に帰ると、家の前にフードを深く被り、少し怪しい格好をした女性が立っていた。


 ...誰だ?不審者?


 そう思いながら近づくと、そこに居たのはてっしーさんだった。



【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093085463634093


「...てっしーさん」


「...久しぶり。国見」と、少しだけやつれた姿で立っていた。


 こうして、姿を見たのはだいぶ久しぶりな気がする。


 あの日も、お互いに電話とRINEでやりとりをしていたこともあり、外に出られるほどに回復していると言うことにほっとする。


 そうして、少しだけ頬が緩む俺を見て、「何ニヤニヤしてんの?」と、少し眉間に皺を寄せながら聞いてくる。


「いえいえ!何でも!お久しぶりです。どうしたんですか?」


「...国見と話がしたかったから」


 そう言われた俺はそのままてっしーさんを部屋にあげた。


 部屋にあげた後は特に何を話すわけでもなく、無言の時間だけがすぎて行った。


 けど、別に気まずいとかそういうのはなくて、心地の良い無言の空間とでも言うべきなのか、良い雰囲気が流れていた。


 しかし、てっしーさんがその沈黙を破る。


「...二人とは仲良くやってるの?」


「二人?あー、雪花と莉来ですか?まぁ、仲良くはやってますね」


「...そう。どっちかと付き合ったの?」


「いや、付き合ってないですよ。迫られてはいますが」


「付き合う気はないの?」


「ちゃんと真剣に考えてはいるんですが...。俺的には今の関係も悪くないなとは思ってるので...。ほら、やっぱりどっちかと付き合ったら、今までのようには居られないかなって思ってるので」


「...そうだね。そっか。それで?何か悩み事があるの?」と、むしろ俺が聞こうかと思っていたようなことを言われる。


「悩み事...。まぁ、色々あるといえばありますかね」


 進路のこと、二人のこと、てっしーさんのこと、アイラのこと、元カレたちのこと...。

パッと思いつくだけでこれくらいは出てくる。


「...そう。何ができるかはわからないけど、何かあれば私に何でも言ってね。私は...国見のことを助けたいと思ってるから」


「ありがとうございます」と、頭を下げる。


「そういうのはやめてよ。頭を下げなきゃいけないのは私の方なんだから」


「...いやいや。それで?本当に話に来ただけなんですか?」


「...まぁ、それだけじゃない。一応、報告というか...。高校の方は補習と保健室登校で無事卒業できそうなことと、行きたい大学も決まったから」


「よかったですね。俺も安心しました」


「うん。だから、あの日言えなかったことを言いたくて...。私は...国見が好き。これが言いたかった」


 思わず言葉に詰まる。

何となく、そうかもしれないと思っていたが、改めて言われると照れると言うか...。


 そうして、俺はあの日のことを思い出すのだった。

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