第32話 面白いこと

「お、星矢ちーっす。なーなー、ちょっといいかー?」と、永丈さんの歓迎会を主催した良助に声をかけられる。


「...また宿題見せろってか?」


「ちゃうちゃうwいやー、昨日生徒会室の前を通った時、面白いことを聞いたんだが」


「...面白いこと?」


「うん。どうやら、星矢...。副会長と春川大樹、佐藤誠、謎の一人を加えて4人に狙われるっぽいぜ?」


「...どういうこと?」


「いやー、たまたま生徒会室の前を通ったら、ちょっとだけ扉が開いてたんだよ。だから興味本位でのぞいてみたら、その4人がお前の名前を出してなんか企んでたっぽいぞ」


「...まじかよ」


「おー。マジマジ。だから、色々と気をつけろ」


「...気をつけろって言われてもな」


「狙われるのは多分...お前と...元カノの3人。そして、アイラちゃんだからな。しっかり守ってやれよ」


「...なんでアイラが?」


「さぁ?俺に言われても分からないけどねー。まぁ、なんかあったらいつでも声をかけろよ、力になるからさ」


「...おう」



 ◇放課後 雪花の部屋


「ということなのですが...」と、先ほど聞いた話を一応、報告する。


「なんですかそれ!?てか、なんで大樹くんまで!?あの二人はまだ付き合ってるはずだし...どういうこと!?」と、バイトが休みだった莉来も一緒に雪花の部屋に来ていた。


 しかし、どうやら雪花のほうはそれがやや不服な様子であった。


「...まぁ...そうね...。きっと...その人達を集めたのは副会長でしょうね。彼と付き合う前も後も結構色々としてきたし...。それで...なんで莉来もいるの?」


「いや、二人に関係ある話だし」


「二人きりになろうとしてもだめですよ!まったく!油断も隙もないんですから!」


「...っち」と、小さく舌打ちをする。


「でも...どうします?別に現状では何かされたわけじゃないですし...。ていうか、あの氷丈さんでしたっけ?あの人はどう伝えるんですか?私か、雪花先輩のどっちかが伝えますか?」


「...いや...ちゃんと俺から伝えるよ」


「...そう」


 そんな空気になっていると、突然扉が開いて、小さい女の子がトコトコと歩いて俺の膝の上に乗る。

完全にデジャヴである。


「心地が良い場所である」といい、すっぽり収まる妹ちゃん。


「...何この子!?かっわいい!!」と、興奮する莉来。


「...私は五月蝿い女性が嫌いです。よって、私はあなたが嫌いです。早々にご退室をお願い申し上げます」


「いやーん!可愛い!!!!」と、そのままほっぺをプニプニし始める。


「や、やめとぇくださぁいぃ!わたしはぁそんなふうにしゃれるのはいやでずぅ!」


「ね!お姉ちゃんって呼んで!ほらほら!」


「...おびませぇん。あなとぁもみてないでえ、たしゅけてください」と、俺に助けを求めてくる。


「...莉来。落ち着け」


「はーい!」と、ようやく手を離す。


「...まったく...常識がない人ですね。私はバカな大人は嫌いです」


「まだ子供だもーん!」と、6歳児を軽やかに煽る16歳児。


「...ふん」と、言いながら、その子は体の向きを俺のほうに向けると、俺の胸に頭を擦り付け始める。


「なっぁ!?//うらやまけしからん!」


 すると、妹ちゃんは悪そうな笑みを浮かべながら「小さき子供の特権なり」と、言うのだった。


 流石は会長の妹という感じであった。


 そうして、一旦妹ちゃんと軽く遊んだのちに、会話を再開させる。


「とりあえず、情報共有は頻繁に行いましょう。ここの3人...いえ、念の為、勅使河原先輩と氷丈さんも入れたグループを作りましょう。そして、何かあれば逐一報告すること。いいわね」


「「はい」」


 こうして、この日は解散となるのだった。



 ◇


『...あの二人が会長の家から出てきました。つけますか?』と、電話先の副会長がそう言った。


「いや、尾行はもう終わりでいいです。まぁ、これでわかったと思います。彼がどういう人間か」

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