第29話 さようならと告白
「先輩、あれ先輩のクラスの人たちですか?てか、あんな白髪美人うちの学校にいました?」と、バックヤードに戻ると仙道に声をかけられる。
ちなみに雪花は本日お休みである。
「今日転校してきたんだよ」
「へー。そうなんですか。でも、なかなかの見た目ですね。白髪で褐色の肌は。ダークエルフ感がすごい。エロい」
「...仙道...女子とは思えない発言だな」
「え?そうですか?私めっちゃエロいの好きなんで!そういうのめっちゃ見ますよー」
後輩女子にそんなことを言われて、なんで反応するのが正解なのだろう...。
そうして、出来上がった特盛ポテトやらなんやらをお盆に乗せて、テーブルに持っていく。
「おっ、来た来た~。やっぱポテトは正義よな~」
「それ!けど、見た目のポップさに騙されちゃだめだよ?こいつらはめっちゃカロリーあるんだから!天使であり、悪魔だよ...」
「...真面目そうな顔で何を言ってんだよ」
「星矢は何時までバイトなん?カラオケはこれない~?」
「無理だな。8時までだし」
「そっかー。しゃーなしだな。んじゃ、また今度遊ぼうぜ~」
「おう」
それから2時間程度居座ってから退店していくクラスメイト達。
「んじゃ、また明日な~」
「はーい」
その後、散らかったテーブルを片付けに行くと、手が止まる。
テーブルの上には見慣れた折り方をされた小さな紙のようなものがあったからだ。
恐る恐る開封するとそこには懐かしい字で『バイト後、お店の前で待っています』と、だけ書かれていた。
...と、その手紙を開いてぼーっとしていると、「先輩?大丈夫ですか?」と、仙道に声を掛けられる。
「...あっ、大丈夫。なんでもない」
そのことが気になりながらも、なんとかバイトをこなすのだった。
◇
「先輩、お待たせしました!」
「...おう」
いつも通り、仙道と一緒に裏口から帰る。
すると、その暗い路地の中で一人の女の子が立っていた。
それは当然、氷丈だった。
「...久しぶり...。国見」
「...久しぶり。氷丈さん」
「え?転校生さん?先輩、知り合いなんですか?」
「...まぁな」
「あの時のこと...謝りたくて...」
「...今更...どうでもいいよ」
「よくないよ!」と、氷丈さんは叫ぶ。
「...あー...これ私いないほうがいいやつですよね?」と、そのまま帰ろうとする仙道の手を握る。
「...せん...ぱい?//」
「過去のことは...許すつもりはない。あの時...俺はすごく傷ついた...。もうだれも信用できなくなるくらい疑心暗鬼になって...、死ぬほど氷丈さんのことを恨んだ」
「...うん」
「もしかしたら何かそういわないといけない理由があったのかもわからないけど...。けど、今の俺がここにいるのは...クラスメイトと仲良く楽しい学校生活を送れているのは...あの経験があったからだと思ってる。だから...俺に許してもらおうなんて思わなくていい。俺は許さないから。だから...お互い...もういいだろ。きっと...氷丈さんもずっと後悔しただろ。それで...それで十分だから」
「...うん...。ありがとう...。これは...その...許してほしいとかじゃないんだけど、知っておいてほしいんだよね。私は...国見が好きだった。だから...恥ずかして...拒否しちゃった。けど、すぐにそれが国見にとってどういうことを意味するかを理解できてなかった...。すっごく後悔して...何もできない自分をどんどん嫌いになっていって...。最後に国見に拒否されて...なおさらその気持ちが分かった...。ごめんね。けど...、私は...また会えてうれしかった...。ありがとうね...」と、涙を流しながら氷丈さんは言った。
「...おう」
氷丈はそのまま俺たちに背を向けて歩いていく。
その瞬間、空から雪が降ってくる。
その光景がなおさらあの卒業式の瞬間を思い出させた。
そうして、去っていく氷丈さんの背中を見た瞬間、自分の気持ちが爆発した。
言いたかった...あの言葉を。
「俺も...!!俺も好きだった!!俺も...好きだった...」と、必死に...そういった。
氷丈さんは少しだけ立ち止まった。
けど、振り返ることはなく、何も言うことはなく去っていくのだった。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093084847353469
その時、ようやく自分の中の気持ちの整理がようやくついた気がした。
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