第28話 ファミレスで歓迎会
何やら音がすると思って目を覚ます。
そのまま薄目を開けると、そこには仙道が目を閉じながら俺に迫ってきていた。
「ぬわっ!?な、何してんだよ!」と、全身を使って逃げる。
「っち!もう少しだったのに!なんで起きるんですか!」
「いや、何してんだよ!お前は!」
「キスです!ちゅーです!キュッセンです!ビジーです!」
「...後半は何語だよ...」
「全く!先輩が倒れたって聞いたから様子を見に来てあげたのになんですか!全くもー!」
「...おう。さんきゅな」
すると、カバンから弁当を取り出す仙道。
「はい!これ先輩のです!」
「...え?いや、俺教室に帰ったら弁当あるけど「これは私が朝5時に起きて作ったんですよ!特に自信作なのはこれです!この唐揚げ!なんと、機械の中にぶちこんで30秒で出来あがっちゃう魔法の一品なんですよ!」
レンチンだよね?それ。
「...おう。ありがたいんだけど、俺教室に戻ったら弁当が「はい、あーん!」
人の話を全く聞かない仙道だった。
「...あーん」と言って口を開けると、喉ちんこにぶち込む勢いで口の中に入れてくる。
「ちょっ!?ごほっごほっ!!」と、俺がむせると待ってましたと言わんばかりに飲みかけのお茶を手渡してくる。
「ごめんなさい!今からしか飲み物がなくて...!先輩とならしていいもいいですよ?間接キッス//」
「ごほっ!ごほっ!」と、その飲み物を手に取ろうとすると、横から現れた雪花がひょいと奪い取り、未開封のお茶を手渡してくる。
「あらあら、トイレで倒れた哀れな星矢くん。随分と元気そうね?」
「...ごほっ...うん...ごほ...。雪花が先生呼んでくれたんだろ?ありがとうな」
「...別に。大したことじゃないわ」
「そうそう!大したことじゃないです!」
「あなたは黙ってなさい」
もらったお茶を飲み、少し落ち着いたタイミングで、俺の弁当まで持ってきてくれていた雪花。
「はい、どうぞ」
「...悪いな」
「ちょっとー。私の愛妻弁当はどうするんですか?」
「ちゃんと食べるよ。安心しろ」
「それで?なにがあったの?貧血?」
「...まぁ、そんな感じだ」
「...そんな感じね。そう」
多分何かがあったであろうことは雪花は気づいていたと思う。
けど、俺が話す気がないということを察すると、すぐに詮索をやめるのだった。
そうして、お昼ご飯を食べると教室に戻った。
教室に戻ると、クラスメイトたちに心配される。
ただの貧血だったと少しぎこちなく笑うと、みんな納得してくれた。
そんな様子を遠くから見られている気がしたが、俺は気にしないふりをした。
すると、良助に声をかけられる。
「な、今日バイト?orホリデー?」
「バイトだよ。なんで?」
「いやー、折角だからアイラちゃんの歓迎会をしようと思って!」
早速名前呼びとか流石のコミュ力。
「...それは残念。俺は参加できないな」
「えー!星矢いないとはじまんねーじゃん!友達なんだろうー?可愛い女友達との再会を祝してパーっとやろうぜ!」
「...友達って...永丈さんが言ってたの?」
「おう!そして、お前が初恋の人らしいぞ?やったな!わんちゃんあるぞ!」
なんだよ、それ。今更...。と、思わず奥歯を強く噛み締める。
「あっ!いいこと思いついた!星矢の働いてるファミレスでパーティすれば一石二鳥じゃん!」
「...いや、パーティを開かれるのは困るんだが」
「えー、いいじゃんいいじゃん!てことでけってー!」と、勝手に決定される。
◇放課後 ファミレス
そうして、いつも通りバイトをしていると、6人のうちのクラスのメンバーがやってくる。
「...いらっしゃいませ。てか、本当に来たのかよ」
「おう!6名様!いや、星矢を入れて7名だな!本当はもっと連れてきたかったんだが、ここって1テーブルMAX6人だろ?てことで、選抜メンバーのみで来ました!ちなみにこの後カラオケ行くのでそれはもっといっぱい来る予定だぜ!」
「星矢ぴょんおはー」
「へー、ここで働いてたんかー。てか、客少なくね?」
「平日のこの時間のファミレスなんてこんなもんっしょ」
「可愛い子!可愛い子はいねーべか!」
「...」
「...そっすか。はーい、お客様方お静かにー。テーブルこちらになりまーす」
「「「「「冷た!?」」」」」
そうして、うるさい連中をそのままテーブルに案内する。
「...ご注文お決まりましたら、ボタンでお呼びくださーい」
「「「「「はーい」」」」」
こいつら幼稚園児みたいな返事するな。
そうして、少ししてから6つのお冷を持っていく。
「お水でーす」
「やったー!お水だー!」
「...ご注文はお決まりですか?」
「今晩はあなたをいただいちゃおうかしら♡」
「はーい。処方箋が一つですね〜」
「っふ。何?もしかしてアフターピルでも処方するつもり?もう!星矢のエッチ!」
「強めの睡眠薬出しておきますねー。つか、真面目に注文する気ないなら帰ってくれよ」
「んじゃ、特盛ポテト一つ。星矢のおごりで」
「...おごんねーよ」
「いやいや!今日はアイラちゃんの歓迎会なんだぜ!それぐらいいだろ!あっ、そういや、中学の時の星矢ってどんなんだったの?」と、最悪のフリをされて思わず手が止まる。
「...え?う、うん...。国見くんは...おとなしい感じだったかな」と、あの時のように目を逸らして髪を耳にかけながらそう言った。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093084847020136
「...大人しい感じ?へぇー!意外だわw」
「...注文はそれだけでいいのか?」
「後は適当になんか持ってきて!星矢のチョイスで!」
「...寿司屋じゃねーんだぞ。うちは」と言いながら、パーティ用のメニューとドリンクバーを追加して、そのことを伝えるのであった。
...大人しい感じ。ね。
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