第18話 全てが終わり始まった日
「...」
「...ぱい」
「...」
「...んぱい?」
「...」
「先輩!」
「うぉっ!?びっくりした!?な、何だよ!せ、仙道...」
「...何回も呼んでたんですが?」
いつものようにアルバイト先のファミレスで皿洗いをしていたのだが、どうやら心ここに在らず...といった具合だったらしい。
あれから2週間経ったというのに...あれは何もできずにいた。
俺は...調子に乗っていたのだ。
仙道の件も、雪花の件も、少なからず俺は解決の役に立っていたと思っていた。
しかし、それは大きな間違いだった。
あれは結局、彼女の達による解決であり、俺の力ではなかったのだ。
...最低だ。俺は。
強くスポンジを握りしめる。
「...先輩」
「...大丈夫。俺は大丈夫」
「...明日バイト休みですよね?一緒に行きませんか?...勅使河原先輩の家」
「...俺が行っても...迷惑なだけだよ」
「だとしてもいくべきです。行きもしないで決めつけて、そんなこと言うのは間違ってます」
「...」
それからその日は何度も仙道に誘われた。
内心、怖くて怖くてしかたなかった。
お前のせいでこうなったんだと言われるのが、怖かった。
でも、それは逃げだ。
解決すると言ったくせに最悪の結果になって、その責任を取らないどころか目を逸らして、自分だけのうのうと生きていくなんて...ダメだ。
『分かった。いくよ』
そう返事をすると、もう一通別の人からRINEが届く。
『最近生徒会に顔出してないけど大丈夫?私でよければ話し聞くけど』と、雪花からの連絡だった。
『ありがとう。大丈夫。明日仙道と一緒に勅使河原先輩に会いにいく予定だから。それで少しは何かが変わると思うから』
すると、一瞬で既読がつき、『私もいく。勅使河原先輩とは私も関わりあるし』と言ってくれた。
相変わらず、優しい人である。
◇翌日
「...なんで会長さんがいるんですか?」と、やや怪訝な表情を浮かべながらそんなことを言う仙道。
「あら?何か不都合でも?私は勅使河原先輩とは交友関係があるわけだし、会いにいくのは不思議ではないでしょ?むしろ、ほぼ関係のないあなたが来ることの方がおかしいと思うのだけれど」と、煽りながらそんなことを言う雪花。
「...俺一人の方がいいかな」
「「それはない」です」
そうして、少し緊張しながらインターホンを押す。
「...」
反応は...ない。
少し間隔を空けてもう一度押してみると、『...はい』と、てっしーさんらしき人の声が聞こえる。
「...てっしーさん。俺です...。国見です」
『...もしかして、詩のお友達?少し待っててね』
どうやら、出たのはてっしーさんではないようだった。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093084458832677
「どうぞ」
出てきたのは若々しい感じの女性だった。
まさかあれがお母さん!?若すぎだろ!?と思ったが、普通にお姉さんだよな?
そうして、リビングに案内される。
「お、お邪魔します」
「どうぞどうぞ。...あの日からほとんど部屋から出てこなくてね。まぁ、高校に関しては今まで皆勤賞だったし、今回の一件について学校の理解も得られてるから。課題さえやれば卒業は問題ないみたい。そこは安心して。あっ、自己紹介遅れちゃったね。私は勅使河原
「あっ、はい...」
「さて、ここに来たということは詩のお友達ってことでいいんだよね?あっ、コーヒーと紅茶どっちがいい?」
「えっとコーヒーを...」
「紅茶でお願いします」
「私も紅茶で!」
「はいよ」
そうして、少ししてからお盆に乗っけて持ってくる。
「...さて、せっかく来たんだし妹に声かけてみる?あんまり期待はできないけど」
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