第9話 【四条 雪花】は告白をする

 ◇土曜日



「...えっと...その...」


「都合悪かったかしら?」


「いえいえ。そんなことは...。けど...いきなりびっくりしたというか...何と言いますか...」


「今日は彼、サッカーの合宿でいないから」


 会長と連絡先を交換したその週の土曜日、お昼の時間に会長の家にお邪魔することとなった。


 噂通りではあったが、なかなかに豪勢な家であり、いきなり家に招待されたことに、正直困惑しているというか、何というか...。


「...すごい家ですね」


「そうね。この家に来た人はみんなそういうわね。けど、すごいのは親で私ではないから」


「...なるほど」


 コメントしずらいことでも相変わらず裏表なくハッキリいう人である。

自分のことでも、相手のことでも。

それだけに現状にかなり不満というか、ストレスが溜まっていることだろう。


「そういえば、仙道さんとはどういう関係なの?結構親しげにしていたように見えたけど」


「あー...仙道とはバイトが一緒なんです。なので、それなりに話すっていう感じですね」


「...ずっと思っていたけれど、なんで敬語なの?私たち同級生なのに」


「あー、いやー...オーラというか、佇まいというか、雰囲気というか...」


「...敬語はやめてほしいわ。距離を感じるから」


「りょ、りょーかい」と、敬礼のポーズを取る。


「さて、飲み物持ってくるわね。少し待ってて。紅茶とコーヒーだとどっちがいい?」


「コーヒーでお願い...」


「今、お願いしますというのをなんとか堪えたわね」と、楽しそうに笑いながら部屋を出て行った。


 改めて見るとすごい部屋だな...。

何畳あるんだ?この部屋...。


 でも、この部屋で何度も...って何考えていた。


 すると、少し扉が開く音がして、そちらに目を向けるとそこには扉の隙間から覗く小さな女の子...。



【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093083886902975


「...え?」


 会長には妹がいたのか。

しかし、その子は無表情は覗くだけだった。


「...あのー、お、お邪魔しています」と、会長と似たオーラを感じてか、思わず敬語で話しかけてしまう。


「...誰?」


「えっと...か、会長...じゃなくて、お姉ちゃんの...友達...です」


「...友達?...お姉様のこといじめない?」


「そ、そんなことしないですよ!」


「...」と、少し疑ったような目つきをした後、扉をもう少し開けて、中に入ってくると膝の上に座ってくる女の子。


 歳の頃は...5、6歳といった感じか?

幼稚園の制服らしきものを着ているのだが、さすがは会長の妹さんだ。かなり良い幼稚園に通っていることがわかるほど、質の良い制服を着ていらっしゃる。


「...あの...なぜ膝の上に」


「...あなたは信用できる人なのかを試すため。私は膝の上に座るとそれがわかるの」


 ほう?なるほど。

汗を舐めると嘘をついてるかどうか分かるとか、腰の形で女子を見分けることができるとか、そういうタイプの特技ということかな?


「...それで?どうでしょうか?」


「...あなたからはいい人のオーラが出てる。信用できる」


 どうやら、彼女に認められたらしい。


「...けど、お姉様をいじめるあいつは信用できない」


「それって誰のことですか?」と、話しているとおしゃれなお盆におしゃれなカップを載せた会長がやってくる。


「ごめんなさい。待たせたわ...って、柚乃ゆの...あなたまた勝手に入ってきて...」と、注意されるとそのまま何も言わず部屋を飛び出す小さい女の子。


「...ごめんなさいね。あの子...少し変わってて...。何か変なこと言われなかった?」


「いや、べ、別に...。なんか信用は得られたみたいだけど...」


「...そう。...この前、この部屋で彼としているのを見られて...。どうやら、私が彼にいじめられていると思ったらしくて...」


 なるほど...。子供からすればそう...か。


「な、なるほど...」と、コーヒーを一口。


 なかなかに美味しいコーヒーである。

最近になってコーヒーを飲み始めたのだが...、これはすごいな。


「国見くんの好きな食べ物は何?」


「え?うーん...オムライスとか?うちのファミレスのオムライスは特に絶品ですね」


「そう。私も結構好きだわ。ぜひ今度食べたいわね」と、少々の雑談を挟む。


 それから少しして「さて、相談なのだけれど...。どうしたら頻度を下げられると思う?」と、本題を切り出す。


「...そ、そうだね。例えば、週に何回というふうにルールを決めるとか。その理由はその方がお互いの気持ちを保ちやすいとか、実は週に何回以上するとそのカップルは別れやすくなるとか、そういう統計がある...みたいなことを会長が言えば最もらしいし...納得してもらいやすいとか。むしろ、何回以上するとかはスポーツにおいて、パフォーマンスを落としやすいとかも...いいかも」


「...確かにもっともらしいわね。それを言われたら納得はしそう。まぁ、下手したらいい距離感になれそうだし」


「会長はもしかして別れたいんですか?」


「今のままならね。節度のある付き合い方ができるなら続けたいと思っているわけ」


「...なるほど」


 それからもいろんな話をした。

男性の癖についたり、逆に会長のフェチについてだったり...。


 包み隠さず話してくれる会長に応えるように俺も全てを包み隠さず話した。


「参考になったわ」


「ま、まぁ...こんなのでよければいつでも相談に乗るよ」


「優しいのね」


「...そ、そうかな」


「えぇ。私が今誰とも付き合ってなかったら、きっと国見くんのこと好きになってたかもしれないわね」


「!!//」と、突然の告白じみたセリフにドギマギする俺。


 しかし、当の本人はどこか寂しそうな顔でそう呟くのであった。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093083887566627

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