第10話 【四条 雪花】は惑わす

 ◇生徒会室にて



「国見くん、この前のアドバイスありがとうね。誠くんも分かってくれたわ」


「そ、そうなんだ。それは良かった」


「ん?どうしたの?顔が赤いわよ?」


「い、いや!別に!?」


 もしフリーだったら好きになっていたかもなんて言われたせいで、意識しちゃってますなんて馬鹿げた話だ。

そもそも、会長はそんなことを言った意識もないはずだし。


 すると、副会長である式野しきの 玄弥げんやが俺の肩を叩く。


「ん?」


「国見。少し話しいいか?」


「...へ?」


 そうして、生徒会室を出て、階段の踊り場で話を始める。


「国見に頼みないことがあるんだ」


「...俺に?何?」


「...会長と佐藤先輩を別れさせるのに協力して欲しい」


「...はぁ?」


 この瞬間、少しだけイラっとした。


「俺は会長が好きだ。ずっと前から。そして、佐藤先輩のことが大嫌いだ。...それに国見も会長のこと好きなんだろ?俺はお前を認めている。1年の時から生徒会をやっていて...本当は副会長もお前の方が適任なことは分かっていた。だから、お前になら負けても構わない。けど、あんな軽薄でどうしようもないほど頭が悪くて...生徒会室であんなことをするようなやつに...会長はふさわしくないんだ」


 ...式野も知っていたのか。あのことを。

てか、あの人たちどんだけやりまくってんだよ。


 確かに俺は会長に意識をしてしまっている。

けど、俺が会長と付き合ったって幸せにさせる自信なんてない。それは式野も同じ。

あの佐藤先輩の適当さがむしろ会長にはあっている気がするのだ。


「...悪いが、協力はできない」


「...なぜ?」


「シンプルに俺が本当に会長のことを落とそうと思うなら、別れさせるために策を練ったりする気はないからだ。そりゃ、会長本人から別れたいから協力してくれって言われたらするけど、部外者の人間が勝手にふさわしくないとか言って別れさせるのは違うだろ。そんなことをしても会長は振り向かない。そうだろ?」


「...それは...分からないだろ」


 分かっているのに認めない様に更に苛立った。


「じゃあ、なんで佐藤先輩と付き合う前に会長に告白しなかったんだ?」


「それは...自信がなかったから...」


「じゃあ、あの時から式野はどう変わったんだ?会長と距離は縮まったのか?どんな努力をした?...結果は言うまでもないだろ。厳しいことを言わせてもらうと、それは我儘だ。自分の気に食わない人と付き合うくらいなら、せめて自分が認めたやつと付き合って欲しいなんて、そんなのやめろよ。もし、本当に会長が好きならちゃんと自分の力で奪い取ってみろよ。俺が本気で会長を好きになったら、俺はそうする」


「...そうだよな。悪い」


「いや、すまん。俺も熱くなった」


 そうして、二人で生徒会室に戻り、俺はそのままバイト先に向かうのだった。



 ◇バイト先


 今日は仙道とはバイトは被っておらず、他のバイトの人と一緒にせっせと働いていた。


 時刻は8:00を回った頃。

もう1時間でバイトが終わりだなと考えていると、1組のカップルが入ってきた。


 それは会長と佐藤先輩であった。


 うげっ、まじかよ。と、見渡すが全員他の仕事をしていたため、手が空いていた俺が席の案内に向かう。


「...いらっしゃいませ。2名様ですか?」と言った俺を見て、少し驚いた顔をしたのちに不適な笑みを浮かべてこういった。


「...もう少しで3名になるかもしれないんです」と、お腹をさする。



【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093083893021242


「...え!?」と、驚く俺と「...え?」と、絶望したような表情を見せる佐藤先輩。


「...誠くん。今日はそういう話をしに来たの」


「え?いや、俺...そんな...」


「...私は何度も忠告したはずだよ。覚悟はできてるよね」


「...に、2名様...ご案内いたします」と、俺はひきつった笑顔でそう言った。

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