鬼怒川の刺客
遠崎識人が教室の机に座っている。
彼の存在は、他の生徒からは異質としてみられていた。
突然、教室のドアが開き、一人の生徒が入ってきた。
教室の一角に立つ彼女は、髪の毛が黒白に分かれ、印象的な存在感を放っている。
白い髪は滑らかで光を反射し、黒い髪は深い影を与え、どちらの色も彼女をより神秘的に見せる。
表情は無表情で、目も虚ろに見え、周囲の環境をまるで意識していないかのようだ。
左腕には包帯が巻かれており、痛々しいところを隠すようにさりげなく手を折り曲げている。
服装は整った学園の制服だが、全体からは一種の冷たさや距離感を感じる。
「おい、あれ…」
「あぁ、哭目だ…」
周囲の生徒たちが彼女に視線を向けるが、彼女は気にする様子もなく、ただ静かに立っている。
時折、髪が風に揺れ動くが、その動きにも感情はなく、機械的だ。
目の前の光景は何事もないかのように、淡々とした表情を変えることはない。
教室の明かりがキラリと光り、哭目の髪が揺れる。
遠崎が顔を上げ、哭目の存在に気づく。
「ん?なんだい?」
視線に気が付く遠崎。
哭目が遠崎の近くに歩み寄る際、周囲の視線が彼女に集まる。
彼女が遠崎の横に座る。
遠崎が無言ながら余裕のある表情を浮かべる。
哭目が遠崎の顔をじっと見つめている。
突然、周囲の生徒たちが囁き始める。
「きっと、遠崎くん、鬼怒川に目をつけられたんだ」
「あぁ…彼女が出てきたってことは、そういうことだろうな」
人の噂話など樹にせず哭目香々が静かに遠崎の方を見つめていた。
「彼女も可愛そうに…鬼怒川に敗けて、奉仕係になっちまったんだろ?」
「あいつのエロ動画、まだネットに出回ってるよな…」
「あんなに可愛いのに…勿体無い」
生徒たちの間に、哭目が鬼怒川万次の女であることや、彼女が抱えている問題についての噂が広がる。
哭目が少し目を逸らしながら、淡々とした口調で遠崎を誘う。
「ねえ、遠崎くん、ちょっといい?」
「いいとも、どこへ行こうか?」
遠崎が冷静な表情を崩さずに、誘いに応じる。
「ねえ、教えてあげなよ」
「絶対罠だって…」
「いや、でもさぁ…」
生徒たちが震えた視線で二人を見る中、遠崎は余裕を保って行動する。
哭目が無感情なまま、遠崎の隣に立ち、その場から離れる準備をする。
「更衣室に、行きたいの」
「勿論、それじゃあ行こうか」
生徒たちが彼女に同情の眼差しを向けるが、哭目はそれに気づかない。
遠崎が周囲を一瞥し、思考を巡らせながら先に歩き出す。
二人が教室の外へと進み、周囲の生徒たちが胸の内に複雑な感情を抱えつ見送る他なかった。
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