他プレイヤー


『おい、見たか?』


零算学園のメッセージアプリには複数のグループチャットが存在する。

それは、仲の良い生徒同士による専用のチャットルームであったり、匿名で生徒を貶す事が出来る陰口用のチャットルームなど。

他にも、〈PVP〉専用のチャットルームなどがあった。


『無差別級、匿名のルームが二十五くらいあったぞ』


と、〈PVP〉専用のチャットルームに滞在する生徒の声が聞こえてくる。

その声に反応し、〈PVP〉のマッチングルームを確認する生徒。


『一律1万ポイントで受け付けてるらしいな…同一人物か?』


匿名で作られた〈PVP〉のマッチングルームに目を細める。

しかし、プレイヤーの中には、この展開に対して対して珍しく無いと言い張る者もいた。


『いや、人数的に一クラスがやっているんじゃないのか?』


同時に25のマッチングルームなど、数を考えれば、クラス単位で行っているのだろうと推測する事が出来る。

その生徒の声によって、成程、と納得する者が多数いた。


『あぁ…そう言えば去年も、ポイント毟り取られたEクラスが起死回生を狙ってやってたな』


そのクラスは、多くのポイントを奪われた事で、過去最多の退学者が続出した年だった。

彼らはどうにかしてポイントを獲得する為に、〈PVP〉で無差別級に参加し、言っt発逆転を狙ったらしいが、全ては無意味に、強者に蹴散らされてしまった。


『今回のEクラスも絞られてるからな、だから必死になってるってワケだ』


Eクラスの惨状を知る他の生徒たち。

彼らは底辺と言う存在を見下ろす事で安心感を覚えていた。

だからか、底辺から這い上がろうとする者を見ると、どうにかしてでも底に叩き付けたい衝動に駆られてしまう。


『仕方がねぇ、遊んでやるか、匿名だし、恨まれる必要も無い』


下卑た笑い声が喉奥から出て来る。

彼らの不幸は、即ち彼らの不幸を和らげるものだ。

足し合わせると、多幸感を生み出すので、それを貪る為に躍起になる。


『さくっとポイントだけ奪って、家に帰してやるか』


退学者を見送り、自分たちもああならないようにしなければ。

と、安堵をする為に、生徒たちは、その匿名の〈PVP〉に参戦した。


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