計算通り

「…じゃあ、私が、遠崎くんの事、好きだって思えて、この気持ちが伝わった時、その時は…こ、恋人、にしてくれる…?」


彼女は自分で言って恥ずかしくなった。

けれど遠崎識人はそんな彼女を笑う事はしなかった。


「二度目は言わないよ、ただ、今はもう少しだけ…負債証書と言うカタチで、取り繕って居たい…自分勝手で、本当にごめん」


遠崎識人の人間らしい部分が見えた。

たとえどのような形であれ人を支配するというものは許されない行為ではある。

それでも白宮桃花は遠崎識人の心に触れたと思えた。


「…ううん、大丈夫、大丈夫だよ、遠崎くん、…少しだけ、この話は忘れよっか…今は、何もかも忘れて、私を、抱き締めて…」


両手を広げる白宮桃花。

目元を潤ませて遠崎識人を求めた。


「あぁ…白宮さん…」


彼女の甘える言葉に遠崎識人は抱きしめる。

彼女の柔らかな胸元が遠崎識人の胸板に押し付けられた。

首元から聞こえてくる彼女の息遣い。

両者ともに興奮していた。

少なくとも白宮桃花はそう錯覚していた。


「(これで良し…基本的に、アヴァター適性試験は校外で行われるからね、…もしも、校外で、負債証書を白紙にさせる様な出来事が起きたら、対処は出来ない)」


時間を置けば置くほどに自分の現状を深く理解する。

時間とは冷静さを取り戻す万能の薬であった。

海外へ行き彼女達が自分の境遇を思い詰めた時遠崎識人が行った魔法は解けてしまう可能性があった。

だから再び彼女との絆を強調したのだ。


「(だから、こうして縛り付けた、…多分、彼女は俺との繋がりを信じて、負債証書を他者に言う事は無い)」


全ては遠崎識人の計算通りだった。

こうすれば彼女は決して遠崎識人を裏切る事が出来ない。

その事を計算しての行動であったのだ。


「(折角の玩具だ、出来る事なら、長く使いたいからね)」


内心では遠崎識人そんな事を思っていた。

彼女達の気持ちなど度外視している。

全ては自分の悦楽のためにやっている事だった

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