演技
「そうかな、だったら、俺の杞憂で、問題は無いけど…」
彼女が胸元を隠す手首に遠崎識人は手を添えた。
腰元に手を添えてベッドの方へ誘導するとゆっくりと彼女をベッドの上へ押し倒した。
「それでもね、俺にとっては、白宮さんも大事なんだ」
甘い言葉が耳元で囁かれた。
思わぬ言葉に白宮桃花は耳を疑ってしまう。
「え…」
遠崎識人の表情は真剣だった。
しかしその表情とは裏腹に遠崎識人の心の中は冷静を保っている。
「実を言うと一目惚れなんだ、だから、鬼怒川くんに、キミだけは渡したく無かった」
そのように調子のいい事を言った。
しかし悲しい事に白宮桃花は遠崎識人の言葉の真偽を確かめる事が出来なかった。
その言葉が本当であるかのように感じてしまったのだ。
「きゅ、急にそんな事、言われても…」
しどろもどろとなってしまう白宮桃花。
「本当だよ、けれど俺は、あまり人との距離を掴めなくてね、白宮さんを、どうすれば俺だけのものに出来るのか、それだけをただ考えていたんだ」
自分の悪い部分を彼女に見せる。
遠崎識人がそう考えていたのだと白宮桃花は認識した。
「悪かったと思っている…その証拠に、俺は、白宮さんだけには、強制的な命令を使っていないんだ」
遠崎識人は自分の頭を下げた。
白宮桃花は遠崎識人の言葉に少しだけ違和感を覚えていた。
その言葉が本当であるのならばそもそも白宮桃花をすぐに解放しただろう。
「…だったら、負債証書、無かった事にしてくれないの?」
という事は他にも理由があるという事だ。
勿論、遠崎識人はあらかじめ用意していた言葉を口に出した。
「怖いんだよ…今の俺とキミは、負債証書でしか繋がりが無いと言う事に…」
この繋がりが消えてしまったら自分達の関係はただの他人になってしまう。
彼女は遠崎識人がご主人様であるからこそこうして自分のそばにいてくれている。
「これが無くなってしまえば、今の関係も壊れてしまう…いや、白宮さんから見れば、こんな関係、無かった方が良かったかな…」
罪悪感を浮かばせる。
少なくともそう感じ取れる表情をした。
遠崎識人が後悔しているように見えたので白宮桃花は遠崎識人に自分の気持ちを口にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます