そして彼の部屋で



『なんで、私、だけ?』


不思議そうに遠崎識人に聞く白宮桃花。

白宮桃花の表情を見て遠崎識人は何かを察していた様子だった。


『悩んでいるように見えたから、かな?…俺の言う事は聞いてもらうよ』


時にはご主人様としての命令を向けてでも彼女と一緒になりたかった様子だ。

そう言われてしまえば彼女は断る事が出来なかった。


『わ、分かった』


そう言って遠崎識人に了承の言葉を口にする。

通信アプリは自然と切られて再び遠崎識人と鞭野瑪瑙は会話を続けている。

とてもスムーズな会話でこうして誰にも察せずに会話出来る事に白宮桃花は驚いていた。


「(遠崎くん…通信アプリを使いながら、会話もしてるんだ…そんな事、出来る人っているんだ…)」


最初から遠崎識人の事はただものではないと思っていた。

今回の件でその感情がより一層膨らんでいた。


自分だけ呼ばれていたので彼女は午後の授業はなぜ呼ばれたのかその疑問だけが悶々と頭の中に残っていてうまく集中する事が出来なかった。


「えぇと…遠崎くん、来たけど…」


遠崎識人の部屋へと入っていく。

あらかじめ遠崎識人が彼女に教えておいた自分の部屋のキーパスワードを使って入ってきた。

部屋の中にはすでに遠崎識人がベッドの上に座っていて首を傾けながらイデアを操作している。

彼女が入ってきた事で遠崎識人は白宮桃花の方に顔を向けて軽い挨拶と共に命令を行った。


「まあ、取り合えず…脱いで貰おうかな」


その言葉に心臓の鼓動が跳ね上がる。

昨日と同じように恥ずかしい事をやらせるのだと白宮桃花は悟った。


「あ…う、うん…(また、やる、んだ…)」



シャツに手を掛ける。

ボタンを外して下着姿になる。

スカートを外して、ブラジャーやパンティを脱ぎ捨てた。

遠崎識人の前で裸になるのは恥ずかしいのか。

乳房が見えない様に手で隠して、顔を遠崎識人から背けていた。

そんな彼女の赤くなった表情を見る為に、彼女の顎に手を添えて顔を自分の方に向ける。


「鞭野さんと、距離が近かったから、ヤキモチを妬いてたんじゃない?」


いきなり遠崎識人は核心を突いた。

自分の心の中で思っていた事を当てられて彼女は心の底から恥ずかしさを覚えた。


「…っ、そんな事、無い、よ」


軽く口で否定する。

本当はそうであると自分で認めてしまったら。

まるで遠崎識人の事を愛しているように思われてしまいそうだった。


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