秘密の会話



「えー…最短でも、一週間以上は掛かるの?適性試験って」


遠崎識人と長い期間間を空けてしまう事が嫌だった鞭野瑪瑙。

不満そうな表情をする彼女に遠崎識人は優しく諭した。


「そうらしいね、まあ、適性を一つ増やすと言う事は、自分の特技を一つ増やすようなものだ、一日、二日で身に付くワケじゃない」


これはある意味彼女達のためにもなる事だった。

遠崎識人がそう言うと彼女はしぶしぶ納得して申し込み書にどの試験を行うか選択する。


「出来るだけ早く、適性試験を終える様に、期間が短いものを選ばないと…」


白宮桃花も申し込み画面を開いてどれにするか悩んでいた。

で歌詞その悩みは試験の内容ではなかった。


「…私、は」


一応は選ぼうという素振りは見せているがどうにも指が動かなかった。

遠崎識人は彼女の些細な動きに感づいてか首を傾けながら彼女に語りかける。


『やあ、白宮さん、聞こえるかい?』


脳内から響いてくる声。

特定の人間のみと脳内で会話する事が出来る通信アプリだ。

遠崎識人の声が響いてきたので白宮桃花は彼の方に顔を向ける。

しかし遠崎識人の目線は鞭野瑪瑙の申し込み画面の方を向いていて口を開けて声を出しながら鞭野瑪瑙と話していた。


「500万もあれば、手頃なアヴァター適性があるね、面白そうなものが沢山だ」


適当に鞭野瑪瑙の相手をしている遠崎識人。

鞭野瑪瑙はそんな事知らずに遠崎識人と話している。


「遠崎、遠崎が決めてよ」


極めて自然に会話をしていた。

白宮桃花はこれが遠崎識人と自分の秘密の会話なのだと理解した。


『え、ど、どうしたの、こんな通信アプリを使って…』


鞭野瑪瑙に聞かせたくない事でもあるのだろう。

白宮桃花は遠崎識人に用件を伺う。


『鞭野さんが居るから、あまり話せなくてね、放課後、俺の寮部屋に来てもらおうか』


遠崎識人は白宮桃花にそう言った。

鞭野瑪瑙を含めていないという事は2人だけで会いたいという事なのだろう。


「そうだね…小柄なキミなら、先ずはアヴァターの方から探した方が良いかもね」


楽しそうに会話をしている二人を尻目に白宮桃花はなぜ自分だけ呼ばれるのかわからなかった。

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