依存
「さて、どうしようか、出来ればキミには『覚えていろ、こんちくしょう』と言ってこの場から離れて頂きたいけど…」
紳士的な言葉を口にしながら遠崎識人は彼女にお願いをしていた。
女子生徒はこれ以上遠崎識人に手を出す事は得策ではないと判断した。
苦渋の決断。
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら踵を返した。
「くッ、こ、今回の事は、お姉様に連絡させていただきますッ!自分の行いが、今後どのような結果に至るか、覚えていなさい!!」
女子生徒は遠崎識人に対して捨て台詞を口にすると即座にその場から退散していく。
女子生徒が消えた事で遠崎識人は小さく息を吐いた。
どうやら笑っている様子だった。
「あの子、面白いね…さて、鞭野さん、勝手に、俺の元から離れたら、ダメじゃないか」
遠崎識人はそう言って鞭野瑪瑙に近づく。
恐怖とショックのあまり腰が砕けて立つ事ができなかった。
「ふっ…ぅぐッ…ひぐっ…」
感情がぐちゃぐちゃになっている。
子供のように彼女は泣きじゃくっていた。
「ははは、どうしたんだい?鞭野さん、そんな泣いちゃって」
遠崎識人は子供をあやすように彼女に言葉をかける。
「こわッ…怖かった…怖かった、のッ」
そう言っていた。
彼女の言葉が本当であるように下半身が濡れているのを確認した。
失禁している様子だった。
遠崎識人は大して嫌悪感を抱く事なく彼女に近づいた。
「へえ、鞭野さんから、そんな言葉が聞けるなんて、とても珍しい事だね」
幼児退行を起こしている彼女を見ながら遠崎識人はそのように言った。
さすがにここまで弱っている彼女を前に鞭を振るうような真似はしなかった。
「おいで、怖かったんだろう?特別に抱き締めてあげるよ」
遠崎識人がそう言って彼女の肩に手を置いた。
鞭野瑪瑙は遠崎識人の体に抱きついた。
あんなに嫌悪感を抱いていた遠崎識人が今では何よりも大切な存在に思えた。
「う、っ…っ」
遠崎識人の胸で泣き出す鞭野瑪瑙。
膝をついて彼女が抱きやすいようにしているのでズボンが彼女の体液で染みていた。
「安心すると良い、キミが幾ら、最低な人間でも、こうして恨みを晴らされようとも、キミは俺の所有物である限り、手を出させはしない」
精神を蝕む甘い誘惑の言葉を口にする。
その言葉はどこまでも彼女の不安を消してくれて心の底から安心を抱かせる。
「勿論、キミのお姉様とか言う方がたにも、ね?」
どうにもその言葉が決め手だった。
顔からたくさんの涙と鼻水を出しながら遠崎識人に甘える鞭野瑪瑙。
「遠崎、…とぉ、さきぃ…」
そうつぶやきながら決して遠崎識人から離れようとしなかった。
そんな彼女の状態を見て遠崎識人は頷く。
「(うん、存分に、俺に依存してくれれば良い、そうなれば彼女は二度と、俺には逆らえない)」
これで鞭野瑪瑙は心身ともに遠崎識人の事を主として従ってくれるだろう。
「(俺を第一に考え、俺を慕い、俺だけを求める、俺の居ない世界なんて、考えられないくらいに…ね)」
順風満帆な学園生活を過ごせそうだと遠崎識人は思った。
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