校舎裏
そして、校舎を離れて、監視カメラの無い校舎裏へと連れ込んだ。
壁に向けて思い切り押されると、彼女は地面に向けて尻持ちを突いた。
怒りを浮かべながら、鞭野瑪瑙は彼女を睨む。
「なによ、この、私を、叩くなんて」
頬を抑える。
未だに痛みが治まらず、熱を帯びていた。
鞭野瑪瑙の反応に、彼女は深く溜息を吐く。
「鞭野さん、貴方、まだ分からないんですか?」
そう言われて、彼女は反論した。
「なにがッ!」
一体何が分かっていないと言うのだろうか。
自分よりも上からの目線で高尚に説教を行う彼女に対してそう告げた。
しかし、彼女の口から出てくる言葉は鞭野瑪瑙を絶句させるようなものだった。
「貴方は、お姉様がたに捨てられたんですよ」
その言葉を聞いて鞭野瑪瑙は心臓を跳ね上がらせる。
薄々感じていた事だ。
しかし、それを頭の中によぎらせる真似はしなかった。
今までお姉様たちと共にした時間。
それが全てなかった事になるなど思いたくはなかったからだ。
「そ、そんな筈ない、お姉様がたは、私は特別って」
弱々しく彼女は反論した。
根拠のない自信だと鞭野瑪瑙自身も思っている。
子供のようなセリフに彼女は思わず鼻で笑ってしまった。
「ふふ…そんな話、信じてたんですね、嘘ですよ」
そんなはずはない。
彼女はそう言いたかった。
けれどもお姉さまたちの反応からそのように言う自信がなかった。
彼女はメガネをあげる。
鞭野瑪瑙と彼女が入れ替わる際にお姉さまたちから聞かされていた言葉を思い出していた。
「貴方って単純で…頭の悪い馬鹿だから、騙されたんですよ」
鞭野瑪瑙は扱いやすい。
なぜならば自分の意志があまりない。
少しおだててやればどんな汚い事でも彼女は率先して行ってきた。
これ以上ない道具だ。
従順さは他の生徒にはない利点だった。
だからこそ彼女は安く見積もられていた。
代用品として扱う分には使いやすく不要になれば戸惑いもなく簡単に捨てられる。
それが彼女を選んだ理由だった。
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