羽虫
鞭野瑪瑙に売られ、売春をさせられていたが、鞭野瑪瑙が奴隷となった為に、彼女たちが持つ負債証書の中から、新しいメンバーとして彼女が抜擢されたのだ。
「は、はいッ…本当にそうです、お姉様ッ!!」
名前を呼ばれて嬉しそうに表情を明るくさせる本登と呼ばれた女子生徒。
何故、奴隷だった筈の彼女が、自分のポジションに立っているのか理解出来ず、鞭野瑪瑙は声を荒げて彼女達に呼び掛ける。
「え…ちょ、なんで、お姉様、鞭野ですッ、鞭野瑪瑙、無視、無視なんて、しないでッ」
そう言って部室に入り込む。
すると、部室の中に居た男子生徒が立ち上がった。
彼らは、お姉様に買われた奴隷であり、現在ではボディーガードとして活動している。
既に部外者として認識されている鞭野瑪瑙の前に立ち憚り、通せんぼをしていた。
「ん…なんだか羽虫が居ない?気のせい?」
「本登ちゃんさぁ、羽虫が居るから、掃除してくれない?」
「そうそう、気色悪いしさぁ」
鞭野瑪瑙を羽虫と称して蔑む。
本登と呼ばれた女子生徒は、お姉様の役に立つ為に、笑みを浮かべて了承の言葉を口にした。
「はい、お任せ下さい、お姉様ッ」
鞭野瑪瑙にとっては気に食わない事だろう。
誰よりも尊敬しているお嬢様を取られた気分になっていて、本登と呼ばれた女子生徒を睨み、声を荒げる。
「なによ、あんた、私の、お姉様を、お姉様って言うなッ」
ゆっくりと、彼女は鞭野瑪瑙へと近付く。
そして、彼女は手を振り上げると、思い切り彼女の頬を叩いた。
唐突な攻撃、その衝撃によって、鞭野瑪瑙は目を丸くしていた。
「…え?」
自分が、叩かれた。
両親や、お姉様ですら彼女に暴力を振るう事は無かった。
可愛いと言われ続けた彼女の顔、その片頬が紅く染まっている。
鞭野瑪瑙の呆然とする顔を見て、恍惚に浸る彼女は踵を返してお姉様がたに向けて軽く一礼を行う。
「それではお姉様、今から羽虫を捨てて来ます」
そう宣言すると、お姉様たちは軽く手を振って彼女に別の命令も口にする。
「おっけー、それが終わったらネイル塗って」
「あと、稼いできた子の現金徴収も宜しくぅ」
雑用を押し付けられるが、彼女にとって苦痛な事では無かった。
体を他の男性に貪られる事に比べれば、お姉様がたの命令の方が何十倍もマシであるからだ。
「はい、それでは…」
男子生徒たちが、彼女を掴んで引っ張っていく。
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