消化試合

第二回戦。


「(最初から、自分の力で戦えば…ッ、敗ける事なんて、有り得ないッ!)」


白宮桃花を足手纏いと認識する鞭野瑪瑙。

彼女の援助など必要無く、自分の力で戦う事に決めた。

〈スプリンガルド〉を近距離戦闘型ビルドに構築。

螺旋回転の手刀ドリル・アンド・ハンド

発条の手首を回転させ、ドリルの様に攻撃するスキルだ。

打撃系のスキルは〈オクトコンパス〉には通じない。

なので、貫通系ダメージが通るスキルを選択したのだが。


「この、ッ、このぉッ!!」


遠崎識人に向けて腕を振るう。

攻撃を与えようとしても、遠崎識人には通じない。

ドリルの先端を突き刺すよりも早く、鉤爪の生えた触手で弾かれてしまう。

二本の触手でも、まだ遠崎識人と対等ですら危うい。

なのに、遠崎識人は触手スキル〈滄溟の触手フィーラ・パス〉をランクCにまで上昇させている。

ランクEであれば触手の片方にAIアシスト補正が入り、ランクCで触手の数が四本に増える。

滄溟の触手フィーラ・パス〉に加えて、〈悪魔魚の鉤爪デビルフッシュクロー:C〉によって鉤爪が触手の全面に生え揃い、凶悪な代物と化していた。


彼女の〈螺旋回転の手刀ドリル・アンド・ハンド〉を触手で前腕部分を絡めると、そのまま残る三本の触手で胴体と頭部を掴み無理矢理引き千切る。


「来なよ、白宮さん」


アヴァターロストする鞭野瑪瑙に代わり、〈クロスエッジ〉こと、白宮桃花が彼女の代わりに戦闘を開始する。

その後〈クロスエッジ〉を操作し、全く同じビルド構成で戦っていた為に、〈オクトコンパス〉による攻撃を受けて遠崎識人が簡単に、第二回戦も勝利した。



「なら…ならッ!!〈極限解放マキシマムストリーム〉でッ!!」


第三回戦からはアヴァターが使用出来る必殺技が解放される。

熱し不朽の砂地ホットプレートデザート〉では彼女の〈発条跳躍ホップ・ステップ〉によって跳躍する際に衝撃が吸収されてしまい、上手く移動する事が出来ない。なので、彼女は〈スプリンガルド〉の必殺技の内、一つの〈極限解放マキシマムストリーム〉を解放させて、それを発動するのだった。


「喰らいなさいッ!!」


周囲に大量のトランポリンを展開させ、それを踏む事で高速で跳ね返る事が出来る〈跳躍する怪人の喜劇スプリング・サーカス〉を使用。


「はは…いや、弾丸すら見切れる俺が、その程度の攻撃、避けられないと思うのかい?」


音速すら回避する事が出来る遠崎識人が、避けられない筈が無かった。

最終的に、多くのスキルを獲得した遠崎識人の操る〈オクトコンパス〉によって勝利を掴む。


四回戦、五回戦は最早消化試合だった。

自暴自棄と化した鞭野瑪瑙の特攻を冷静に対処し、何とか勝ち筋を掴もうとする白宮桃花を倒す、手古摺る事すらなく、遠崎識人は五回戦を全勝して見せた。


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