負債額を増やそう


「そして、改めて聞くけど、二対一、バトルの方法は五回戦型式、一度でも私達が勝てば、その時点で負債証書の譲渡、この内容に間違いはないかしら?」


遠崎識人は頷く。

しかし、彼女が口にしていない情報がある事を告げる。


「うん、後は、キミたちが敗けた場合だね、その時は俺は、キミたちを使って遊ぶ…あともう一つ」


指を一本立てる。

遠崎識人は笑みを浮かべながら言う。


「もしも、実力差を感じて消化試合になってしまわない様に…一回、キミたちが敗ける度に、負債額を倍増させる事とする」


「はあ!?」


鞭野瑪瑙は、唐突な後出しに突っ込んだ。

負債額の倍増、それは出来ない事では無い。

責務者は負債者にポイントの貸し出しが可能となる。

その貸出分のポイントは、その分借金として彼女達が返さなくてはならなくなってしまう。


それを利用して、ポイントを貸し付ければ、負債額が膨れ上がるのだ。

勿論、彼女たちにポイントが渡ってくるのだが、それを使用する事が出来ない様にする為に、ポイントを使用不可にしなければならない。


その方法はある程度複数存在している。

しかし、かなり回りくどい方法だった。

それは、学園側が用意した負債証書なのだが、あくまでも退学者を生まれない様にする為に必要な処置なのだ。

負債額を増やす、と言った方法は学園側は用意しておらず、生徒たちが勝手に抜け道を探ったに過ぎない。


そして、一回戦毎に彼女らが敗ければ、1万のポイントが2万、2万から4万、と膨れ上がり、最終的に32万のポイントとなってしまう。


「流石に、二人分に貸し出したら俺の方がポイント0になっちゃうから、これはあくまでも目安と言った所かな、最終的に32万の負債を抱えて貰うよ」


「ひ、卑怯じゃないッ!!だってさっきはそんな事言ってないのにッ」


遠崎識人は御尤も、と首を縦に振った。


「しかし、考えて見て欲しい、一度でも勝てば負債証書は譲渡される、そうなると…借金もチャラだ、どれ程、後付けをしても、キミたちが一度でも勝てば良いんだからね」


確かに。

二人は、遠崎識人を一勝する為に作戦をして来た。

今更、更に借金を増やされた所で、負債証書さえ貰えば後はどうとでもなる。

勝てば良いだけの話なのだから。


「~~~ッ!やるわ、やれば良いんでしょう!!」


そう言って、〈Fight/destinyファイト・デスティニー〉を起動する。


二人ともやる気になった事を確認して、楽しそうに遠崎識人は笑った。


「うん、それで良いんだ、いやはや、楽しくなりそうだよ」


目を細めて遠崎識人は笑った。

彼も、同じ様に〈Fight/destinyファイト・デスティニー〉を起動した。

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