ゲームの提案

しかし遠崎識人は彼女の愚弄に対して不問にした。


「分かっているさ、だから、〈オクトコンパス〉のアヴァターをさっき解放しておいた」


そう自慢げに言いながら、アヴァターカスタムで早速〈オクトコンパス〉をレジェンドスキンに変更した。

信じられないと言った具合で、鞭野瑪瑙が遠崎識人を見た。

アヴァターを解放するだけでも1万ポイントが必要になる。

しかも、自分がそのアヴァターの適性があるのかどうかすら確認せず、浅慮で解放したのだ。

たった一分も掛からない内に、2万ポイントが浪費された。


「そ、それだけで、2万近いポイントが消えてるのよッ!?」


遠崎識人を糾弾した。

しかし、彼は悪びれる様子は無かった。

そも当然だ、そのポイントは遠崎識人のものだ。

それをどのように使おうとも、遠崎識人の自由なのである。


「良いじゃないか、まだ30万近いポイントは残っているから」


彼女のポイントだけではない。

五味山と呼ばれる男子生徒からも、10万近いポイントを毟り取っていた。

なのでせしめて40万近いポイントを遠崎識人は保有していたのだ。


「だから、それは私のポイントなんだってッ!!」


それでも彼女は自分の所持していたポイントを返す様に言った。

そんな彼女の言葉を、遠崎識人は無視しながら、どうすればこの新しいアヴァタースキンを使って遊べるかを考える。


「うーん…折角手に入れたスキンだし、これを使って遊んでみたいな…あぁ、そうだ、二人とも」


そして、遠崎識人は、鞭野瑪瑙と、白宮桃花の二人に提案をした。


「折角だし、ゲームをしないかい?」


Fight/destinyファイト・デスティニー〉で対戦をしよう、と誘ったのだ。


「はあ?!なんであんたの為にゲームなんかしないといけないの?!」


しかし、鞭野瑪瑙は否定的だった。

ただでさえ、先程のゲームで嫌な思いをしたのだ。

何故、再び嫌な思いをしなければならないのか、と言った風だった。

遠崎識人はそうか、と残念そうに言いながら、首元のネクタイを緩める。


「なら、このままキミたちを使って遊ぶけど?」


アヴァターを使えないのならば。

後は、二人を使って夜を迎える他無い。

彼の言葉に先程まで騒いでいた鞭野瑪瑙は押し黙る。

白宮桃花は、口を開いて、遠崎識人に告げる。


「…わ、私は、遠崎くんの好きにして良いよ」


ゲームでも肉体でもどちらでも良い。

けれど実際は、ゲームで遊ぶ方が良かった。

未だ、肉体を貪られる心の準備が出来ていない。

その準備の時間を作る為に、ゲームをして時間を稼ぐのも良いと思った為だ。

遠崎識人は笑みを浮かべる。


「まあ、そう畏まらないでよ、折角のゲームだ、楽しくやりたいし」


そう言った後に、口を閉ざす遠崎識人。


「…いや、それでも真剣にやって貰わないと困るなぁ…だったら」


ゲームと言えども、手を抜かれては楽しくない。

なので、二人が本気になる様にゲームに条件を付け加えた。


「キミたちが本気になれる様に、賭けようか」


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