自室へ招く
「まあ寛ぎなよ」
遠崎識人はそう言いながら学生服を脱ぐ。
白宮桃花は、敷かれた座布団に座った。
周囲を見回す。
男子学生用の学生寮はマンションの様な構造だ。
寮と言うのは名ばかりであり、殆ど生徒の自主性を重んじている。
なので、基本的に一人暮らしのようなものであり、一人部屋にはキッチンやバスルームがあった。
「(殆ど、女子寮と一緒だけど…)」
しかし。
何も無い。
多感な時期の学生ならば、自宅から持ってきた家具や生活用品で個性を出し、それなりに自分用の部屋へとカスタムするのだろうが、それが無い。
遠崎識人は転校生である事は聞いている。
だから、まだ自分の部屋を作り切れてないのか。
だとすれば…荷解きの済ませてない段ボールくらい積んでいるだろう。
だが、部屋を探ってもそれらしいものは何処にも無かった。
「(…遠崎くんって、どんな人なんだろう)」
全容が掴めない。
飄々とした人物だと思った。
適当に喋っているかと思えば、人が変わった様に雰囲気が変わる。
それが少し怖くもあり、どこか安心感もある。
彼女から見れば、それが遠崎識人と言う存在だった。
「お待たせ、取り合えず、野菜ジュースで良いかな」
冷蔵庫から持ってきたのは200mlの紙パックジュースだった。
ちらりと、鞭野瑪瑙は彼の冷蔵庫の中身を確認したが、ぎっしりと野菜ジュースでいっぱいだった。
「(まさか、食事をこのジュースだけで済ませてるの?)」
と、食生活に対して心配していた。
渡された野菜ジュースを飲みながら、遠崎識人はベッドの上に座り、首を傾けながら〈イデア〉を操作している。
彼が確認しているのは、この学園に必要不可欠であるポイントに関してだ。
このポイントは基本的に学園内で使用出来る専用のポイントであり、昇格戦を除いて、クラスのランクを上げるのに必要なものであった。
Eクラスの生徒がDクラスに上がる場合、実力を考慮した上で〈100万ポイント〉必要になる。
DクラスがCクラスに上がる場合は、〈500万ポイント〉、更に上に上がれば上がる程にポイントが必要になってくるのだ。
更に十日に一度、生徒はクラスに応じたポイントを支払う義務が存在する。
Eクラスならば1万ポイントの支払いであり、これが月に3度あるので、月3万ポイントの支払いとなる。
そしてDクラスは月に2万ポイント、月に3度あるので、合計で6万ポイント必要。
「(へぇ…結構、重要なものなんだ、これ)」
更に、ポイントを消費する事で、そのポイントに応じた現金が支給される。
基本的に1ポイント=100円であり、100ポイントで1万円になる。
それとは別に、生徒には学生寮を除いた生活費を5万円支給される。
こちらの生活費はクラスが上昇する毎に支給額が上昇する。
他にも、ポイントを稼ぐには、クラスメイト同士で行う対人戦、週に一度行われる自由参加型のバトルロワイヤル、それ以外だと、授業で定期的に行われるテストで評価が良ければポイントを得る事が出来るらしい。
「(それ以外の使い道は…と)」
〈
世間一般では課金をする事でポイント購入が出来るのだが、零算学園の設定により、学園内専用のポイントのみでしか購入が出来なかった。
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