心理掌握
遠慮なく、彼女の胸を掴むと、力強く果実を潰す様に込めた。
「うっ、ふッ…ぐッ」
「俺の方が良いんだ?こんな事されても?」
痛みで目を細める。
けれど、白宮桃花は、遠崎識人のご機嫌を損ねてはならないと思った。
笑みを浮かべながら、彼の手首に手を添えた。
「いいよ、遠崎くん、ならっ…なんでも、してあげる…ッ」
彼女の言葉に、遠崎識人は目を細めた。
笑みを浮かべると、指の力を緩める。
そして、彼女の耳元で囁く様に呟いた。
「いいね、従順な子は嫌いじゃないよ、白宮さんだけは、優しくしてあげるよ」
その様に約束をした。
更に、近くに居た鞭野瑪瑙も話に乗る様に遠崎識人に告げた。
「そ、そうよッ、あんたの方がマシッ!だから、鬼怒川に権利を譲らないで、ねえッ!!」
そう言った。
どうやら二人とも、鬼怒川万次よりも、遠崎識人の方が良いと断言した様子だった。
とても残念そうな表情を作りながら、遠崎識人は鬼怒川万次に告げる。
「…と言うわけだ、鬼怒川くん、残念だけど、彼女達は君よりも、俺を選んだらしい」
故に。
この話は無かった事にして欲しいと。
しかし、鬼怒川万次は納得しない。
ぬか喜びをした様は、王様を喜ばす道化師の様なものだ。
この鬼怒川万次を道化と馬鹿にしたと、憤っている。
「へえ…それがどういう意味か、分かってんのか?」
椅子を掲げながら、遠崎識人に接近する。
椅子で殴り掛るかと思ったが、それは無かった。
監視カメラが教室に取り付けられている。
暴力行為は禁止であり、そうすれば減点となってしまう。
だから、あくまでも凄んでいるだけだ。
その凄みすらも、遠崎識人から見れば人を喜ばす道化の行動としか目に映っていなかった。
「戦争だぞ、テメェを奴隷にすりゃ、必然的に負債証書も俺のもんになるからよぉ」
どうやら、ゲームで勝負を付けようと思っているらしい。
その言葉を聞いた遠崎識人は、彼はなんて優しい人間なのか、と思った。
「はは、鬼怒川くんは優しいね…俺はキミの事は、要らないかな」
自分ならば…彼の身分は買わない。
そのまま、退学になって貰う。
だから、鬼怒川万次の言葉はとても優しいと思っていた。
踵を返す遠崎識人。
少なくとも、今は戦いをする気は無かった。
無論、鬼怒川万次がゲームを要求すれば、話は別だが。
それをしないと言う事は、鬼怒川万次も、ゲームをする気は無かった様子だった。
「じゃあ行こうか、今日は争奪戦で午後は無いみたいだから…二人とも、俺の寮部屋においでよ、一緒に遊ぼうか」
と、二人に声を掛ける。
この時、命令権は使役しなかった。
それでも、二人は自らの意思で遠崎識人に付いていく。
心の掌握を完了させていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます