第53話 モンスターにとっての、レジェンドとは
メルンを連れて兄の居住空間に入ると、ヴィーザルとはまた違ったイカシタ恰好をしたアルと、綺麗なお姉さんの姿……に見えるアルが座っていて、この兄妹、姉妹にしかみえねぇ……って思いました。
いや、一応アルは男性の服装をしてるけど、ウサギ獣人綺麗な人多いなと思ってたけど、本当に綺麗だな!
「奴隷の刻印を消してやるが、暫くはそのままがいいんじゃないか?」
「と言うと?」
「少なくとも、お前達がフェンリル兄妹のモノだと周囲が理解するまでは……だ」
「ああ、なるほど。手を出されにくくする為に」
「そう、それに奴隷の証があれば自分にテイム仕掛けてくる奴がいても弾き返せるというメリットがある。俺は神だから別に弾き返せるが、お前等はどうだ?」
そうヴィーザルが告げると苦々しい顔でアルは「それもそうだな」と口にし、兄妹は「テイムされるのは怖いです……」と答えた。
「お前たちの場合はカオルからされる『テイム』は身を守る為の保険であり、奴隷であるという事もまた、身を守る為の保険になる。アルの場合は魔物獣人と言うだけでテイムしたがる馬鹿は出てくるし、ウサギ兄妹はその見た目だから変態は欲しがるぞ」
「「ヒイイイイ! 奴隷のままが良いですぅ~~」」
「オレはテイムされて奴隷の証は取っ払いたい」
「ならテイムされてこい」
そう言うとアルは私の元に来て、私とお兄ちゃんより少しお兄さんかな? 多分14歳くらいの子に見えるけど、「テイム……してくれる?」と照れた顔でデレられるとヤバい。
「テイムしちゃっていいの?」
「他の奴の命令聞くより、アンタの命令聞いた方が良さそうだからな」
「ふむ。ではアルフォンスを『テイム』!」
そう言うとテイムが発動し、私とアルとの間に契約の印が交わされた。
これで後は首輪を外すだけだ。
「ヴィーザル、首輪外してあげて~」
「良いだろう。『汝を縛る奴隷の印は、神ヴィーザルの名の元消し去れ』」
そう言うとアルから首についていた首輪がボトリと落ち、これにて奴隷ではなくなったという事だ。
ホッと安堵したけど、やっぱり神はスゲェや! と思ったのも内緒である。
「アル、良かったね!」
「ん……」
「これからは、私と一緒にカオルちゃんの護衛ですね~」
「おう……」
「ちなみに、ご自分のステータスは一応見ておいた方が良いですよ?」
「「「ステータス?」」」
「はい! 私たちや、ファリスさんが奴隷契約したという事は、恐らくレベルが上がって色々スキルが覚えられるようになっていると思いますので~」
そうサトリちゃんが告げると、アルは急ぎ「ステータス」と口にして尻尾が逆立っていた。
「お、俺のレベルが! なんだよ69レベルって! 俺はもともと……28レベルしかなかったぞ」
「きゃあ! 私たちのレベルも上がっているわ!」
「わたしも、凄ーい!」
「ふふ、これが恩恵ですね~。解らない事は相談してくださいね~」
サトリちゃんのお陰で何とかなりそうだと思っていると、アルがトコトコとやってきて「オレのステータス決めて貰いたいんだけど……」と言ってきたので見る事にした。
どれどれ……。
一言で言えば、アルは戦闘向けではなく、お爺ちゃんと同じ『隠密』系だった。
【影分身】【影縛り】と言った、影が付くものが多いけれど、影や闇を使ってのモノが多すぎる。
唯一の闇攻撃が【串刺し】という攻撃。
威嚇にも使えるらしい。
「影や闇関係が多いのね……」
「ブラックキャットだからな」
「ああ、確かに」
ブラックキャットは闇に紛れての攻撃が得意と記憶にあるけれど、奇襲攻撃に強いというだけで、いきなり戦闘となると弱い特性がある。
更に言えば、サトリちゃんと同じ『聞き耳』も持っていたので、正に隠密!
いいなぁ……。ちょっとカッコイイ。
「でも、全体的に強さはプラスになってるんだね。だってレジェンドブラックキャットになっているし」
「え!?」
そう言ってもう一度自分のスキルボードを見つめるアルはフルフル震えつつ口をパクパクさせていた。
どうしたんだろうか?
「カオルや、ワシらモンスターがレジェンドになるという事はな?」
「うん」
「モンスターで言えば、神に等しい存在になったという事じゃ」
「ほうほう」
「その切っ掛けを作ったカオルには、忠誠心を誓っておるわけじゃ」
「ほむ」
「アルもそれを思って口をパクパクしておるんじゃろう。心が追い付いてないとも言うがな」
アル、混乱しているのか。
猫って混乱すると飛び跳ねるのかと思ったけど違うんだな。
そこは猫モンスターたるや……って奴かな?
「オレが……レジェンド? オレが?」
「レジェンドだと悪いの?」
「いや、オレ……仲間からも毛嫌いされていたから良く分からねぇ」
「なんでアル毛嫌いされていたの?」
「闇と影使いって、使えるモノの多さで嫉妬されるんだよ」
「なるほど」
それで毛嫌いされていたのか。
それは今度行った時お礼参りしないといけないかも知れないけれど、まずは喜ぼうという事になった。
さて、ウサギの2人はと言うと……。
「私たち、元々が一般的な獣人だから……」
「取れるモノと言っても殆どないですね」
「そうなのよ」
「二人ともそれでも身体強化は使えますよ~?」
「それだけでも随分違うかも」
「そうねぇ……」
そう口にするのはウィルさんの方、妹のメルンちゃんだけど、彼女はもう別の事に興味を持ってあちらこちらキョロキョロしている。
「メルン、どうしたの?」
「うん、お腹空いたなって」
「そうね……」
「ああ、そう言えば」
「急いでご飯にしましょう」
時間はもう夕刻を過ぎようとしていた、急いでご飯を作らねば。
とは言え、どうしようかなぁ。
「ヴィーザル、ミラーちゃん1人出して」
「料理用だな」
「そう。後今日は魚料理の変わった奴を1つ出そうかと思ってる」
そう、刺身である。
無論さわびは付けないよ。
私たち獣にとってカライのはダメだからね。
猫モンスターとウサギ獣人は何を食べるんだろうか……。
「アルは何でも食べる?」
「食べる」
「ウサギの二人は?」
「野菜が好き」
「私もお野菜大好きよ」
「なら、今日は野菜、魚……」
「私はお肉が大好きですよぅ……」
「サトリちゃんはお肉好きだね!」
これは今回、色々ちゃんぽんご飯になりそうだ。
統一感はないけど諦めよう。
「明日お祝いするから、今日は簡単に行きます!」
「「「やった――!」」」
「お肉もお魚も出すからね!」
こうしてお夕飯はご飯に味噌汁、オーク肉の焼肉のタレジャンジャン焼きにお刺身で、急いで作った料理になってしまったけれど、皆さん美味しいと言って食べてくれて良かった。
正しお刺身は――好き嫌いがあったらしく、アルと私は食べられたけれど、他はアウトだったのは残念だったなぁ……。
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