新たなるモフモフと共に、商売繁盛とダンジョンに潜る!

第52話 ブラックキャットのアルと、ウサギ獣人兄妹

 さて、やってまいりました奴隷市場方面。

 扱いが雑な奴隷商もいれば、しっかりした奴隷商もいる、そこで分担して【アイテムボックス持ち】を探して貰う事になった。

 兄とヴィーザル、私とサトリちゃんとで二手に分かれると、奴隷商ごとに聞いていく。



「すみません、こちらに【アイテムボックス持ち】の奴隷っています?」

「うちにはいねぇなぁ」

「そうですかー」



 それが何件か続いた時、兄が「見つけたぞ」と走ってきた為そちらに向かう。

 その時ギラリとした視線を感じたので、思わず「お?」と思ったけれど一人の猫獣人と目が合った。

 兄に止まって貰い、その猫獣人の元へと向かう。



「貴方猫獣人なのに何で奴隷なんかに?」



 ストレートに聞くとプイッと顔を背けられた。

 男の子の猫獣人のようだが、不思議である。

 すると――。



「そいつは猫獣人じゃなくて、猫のモンスターですわ」

「猫のモンスター?」

「ブラックキャットっていうモンスターのね。隠し部屋にいたのを連れてこられたんですけどねぇ……この通り愛そうも悪し売れ残っちまって。テイム出来る奴もいねーしで困ってるんですよ」

「あ、私テイムできますよ」

「お、嬢ちゃん出来るなら安値で売るから貰ってくんねーかなぁ」

「ふむふむ」



 とは言え、無理やりテイムはしたくない。

 私たちとこの子だけにして欲しいと伝えると、奴隷商は下がってみている様だ。



「貴方魔物だったのね」

「お揃いですね~」

「……オレは、弱いから捕まったんだ」

「強くなりたいです? ドラゴン倒せるくらい」

「そんなチートありゃ苦労しねぇよ」

「私としては長毛種の貴方のモフモフに興味が……」

「そ、そんな顔してオレの体目当てかよっ!」

「人聞きが悪いですね。私はモフモフを愛するフェンリルです」



 そう言うと「モフモフ?」と首を傾げる猫型モンスター。

 本来の姿に戻れるかと聞くと、これは見事なビックキャット!



「良いですねー。実に欲しいですねぇ」

「そういう獲物を見る目で見んなよ……」

「良いでしょう。衣食住をお約束する代わり、私の奴隷になりません?」

「実は私も~奴隷になりそうなところを助けて頂いたんでうすよ~」



 そう言うと私はコソコソっと少年に話しかける。

 実はこちらには奴隷の証を消せる獣人がいる為、問題なく自由にはなれるけどテイムはしますよ……と。

 これに彼は反応、「是非に!」と伝えた為、契約成立である。



「奴隷商のおじさま、この子私が引き取るわ」

「有難いねぇ」



 こうしてお金を払い、奴隷の手続きを終えて【テイム】すると、猫型モンスターというか少年をゲットした。



「貴方名前は?」

「アルフォンス」

「じゃあアルって呼ぶね。これからよろしくね」



 取り敢えずモンスターであるアルフォンスを仲間にしたことで、彼のレベルがドサッとあがったらしく、アルは自分の体に違和感を覚えたようだ。

 そこは後で身ぎれいにして貰ってからと言う事で……続いてアイテムボックス持ちの元へと向かう。

 そこには、ウサギ獣人の2人の兄妹がいて……。



「此奴らアイテムボックス持ちでウサギ獣人なんで値段馬鹿みたいに高いけど、それでいいなら売ってやっても良いぜ?」

「彼らは何故奴隷に?」



 ウサギ獣人は見目麗しいものが多い為、奴隷でも高く売れるらしい。

 そこにアイテムボックス持ちになれば更に値段は跳ね上がるのだとか。




「此奴ら冒険者のポーターしてたんだよ。でもその冒険者が借金払えねぇって言うんでこいつらが出された訳」

「なるほど、その冒険者は屑だな」

「はは、言えてる。そいつはもう売れたがな」



 どうやら、彼らを売った冒険者は奴隷になって既に売られた後らしい。

 ザマァないなと思いつつ、我々と会話させて欲しいというと奴隷商は後ろに下がった。



「えっと、ウサギ獣人の兄妹さん」

「あ、アタシと妹を別々にしないで頂戴!」

「おっと、兄ではなくオネェさんでしたか」

「お兄さんよ! この見た目だから女性的な喋り方の方が良いって前の主に言われて癖になったの……」

「な、なるほど」



 何処にでも自分の理想を押し付ける奴っているんだな……。

 気持ちは分からなくないけれど。



「私があなた方二人を購入した場合、お二人にお願いしたいことは、露店販売なんですが……」

「「露店販売?」」

「ええ、イエスタで私が料理したのを、朝と昼に露店販売してくれる人を探してたんです」

「ポーターとかじゃなく、露店販売……」

「安全面は恐らくバッチリですよ? 私神格持ちのフェンリルなんで、フェンリルの所有する奴隷にナニカしたら倍返しじゃ足りないですもんね?」

「……お兄ちゃん」

「そうね……でも、アタシ達2人とも高いわよ」

「んふ――。一括で支払ってあげるし、衣食住は約束するわ。後賃金もね」



 そう私が告げると目を見開いていたけれど、ちょこっと近寄り耳を借りると、アルに行った時と同じように、奴隷の証を失くせる獣人がこちらに居る事を説明すると、是非にと言う事になった。



「この2人買います」

「おお、お買いになりますか」

「どうしましょう? お金での支払いが良いですか? それともドラゴンでの支払いが良いですか?」

「ドドドドドドド……ドラゴン!?」

「今ならファイヤードラゴンにウインドドラゴンが居ますけど」

「是非、是非その二体で支払いを!」

「じゃあ、交渉成立ですね?」



 ドラゴンは素材も高い上に肉も旨い。

 その為高値で取引されているし、私たちは幾らでも狩れるので、ドラゴンを売って兄妹を購入した。

 これで、計3人の奴隷を購入したわけだけど、取り敢えず問題は汚れね!



「お兄ちゃん、身体の汚れと服の汚れを何とかしたいから居住空間で綺麗にしたいです」

「ならアルとえーっと」

「アタシはウィル、妹はメルンよ」

「じゃあ、アルとウィルは俺が切れにしてこよう。ヴィーザル付き合ってくれ」

「分かった」

「じゃあメルンちゃんは私が綺麗にしてくるわ」

「お洋服用の付与アクセサリーを、3つ分買ってきますね~?」

「サトリちゃんお願いね~」



 こうしてサトリちゃんと護衛のラテにお願いして、私たちは各々居住空間を出すと驚かれたけれど、まず今日はこの出来事で終わりそうな感じかな。

 外も夕焼け空だし、色々説明もしなくちゃ。


 と――私の居住空間に入ると、ミラーちゃんが沢山いてメルンちゃんは一瞬気絶したけれど、持ち直してお風呂へと向かい、身体を綺麗に洗ってあげるとホッと安堵したようで「こんなに贅沢したの初めてです」と可愛い笑顔で言ってくれた。



「兄妹でうちに来られてよかったね。ごめんね、私が沢山いて」

「ビックリしました」

「あれがミラーちゃんっていうレア魔法なの。付与魔法を頑張って貰ってるのよ」

「なるほどです」

「ウィルとメルンちゃんはイエスタが主な拠点になるかな」

「はい」

「ふふ、イエスタの人達は皆良い人ばかりだから安心してね」



 そう言って身体を綺麗にすると、暫くバスタオルを巻いて過ごして貰い、程なくしてサトリちゃんが帰ってきて獣人用の洋服付与の付いたアクセサリーをメルンに装着。

 可愛らしいフリルの洋服を着たメルンちゃんが出来上がった。

 これにフリフリエプロンは、さぞかし男性陣のハートを鷲摑みするだろう。

 後はお兄さん……のウィルと猫のアルだけど、どうるかな?


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