第49話 サル獣人は差別の対象、でも私は気にしない
早速行ってきました商業ギルド!
ソロ獣人の料理人なんているんだろうか?
そもそも「料理人募集しています」で見つかるだろうか。
そんな不安も抱えつつカウンターに座る事数分後――商業ギルドマスターであるショナさんが対応してくれた。
ヤギの獣人さんで女性だ。
「えーっと、料理人をお探しなんですよね?」
「はい!」
「つい最近首になった料理人ならいます。そちらなら直ぐにでも手配できますが……」
「おおって……何か問題でも?」
「ええ、それがサル獣人なんです」
「サル獣人だと何か問題でも?」
「彼らは見た目が殆ど人間と変わらない為、獣人の中には好ましく思わない者もいます。人前に出る職業には付きません」
――なるほど、そこは獣人ならではの差別があるのかな?
そう思いつつ話を聞く。
「勤勉ですが群れで生活する為、人数が多いんです」
「なるほど、それで人数はどれくらいいるんですか?」
「約15人程に」
「多いですね……」
「1つの家族だと思ってください。ご兄弟と、その家族なんです」
「と言うと、結構ご年配の方から若い方まで?」
「上は40代から、下は14歳までですね」
「なるほど」
「この15人で1つのレストランを任されていましたが、オーナーが変わってからゴッソリと交代になりまして」
「どこのレストランです?」
「潮風スープと言うのが有名な」
――思い出したぞ、あのクソ不味いスープのお店か!
「私たちも潮風スープは好きだったんですが、今の料理になってからは薄くって」
「分かります、体に優しいと言えば聞こえはいいですが」
「そうなんですよね……」
「分かりました、その15人丸っと雇います」
「宜しいので? 直ぐ給料の前借をされると思います。何せ住む場所が、」
「住処も用意しましょう。寧ろ、衣食住をお約束します」
「まぁ!」
そう言えば驚いて声を上げるショナさんに、私は笑顔で「レアスキル持ちですので一時的にそこに住んで貰いますが、その内ちゃんとした家を用意するとお伝えください」と言うと、首を傾げつつ「畏まりました」と言ってくれた。
「では、直ぐご契約されるという事で」
「はい」
「では、衣食住を約束するというお約束で宜しいですね?」
「構いません」
「畏まりました。今日の昼には皆さんに来て貰いますので、昼に商業ギルドへとお越しくださいませ」
「ありがとうございます」
こうして15人のサル獣人さんを雇う事に成功した私は、居住空間スキルで兄のいる部屋に戻り、事情を説明して一時的に私の居住空間で生活して貰おうかと思っている事を伝えると、それはNGだと言われた。
「急いで屋敷を買おう。このフェンリル孤児院の隣の家が売りに朝出てたんだ」
「おお、隣の御屋敷が?」
「手配して俺が説明するからカオルも来るように」
「はい」
と、もう一度商業ギルドに向かい、ショナさんを読んで貰うと急ぎやってこらえた。
そして事情を説明し、フェンリル孤児院の隣の屋敷を一括購入することを決め、ショナさんは私たちがそれだけのお金を持っているから貴族様ですかと聞かれたものの――。
「俺達はSランク冒険者です」
「え、あ、Sランクだったんですね!」
「ドラゴンを良く狩るのでそれでお金が溜まりやすいんです」
「凄いです! なるほど、理解しました。ではフェンリル教会の隣の御屋敷をご購入という事で」
「はい。出来れば追加料金を支払いますので、今日から雇う方々をその屋敷迄案内していただけたらと思います」
「畏まりました」
と、すんなり決まり、家の鍵も3つ貰って家路につく。
取り敢えず屋敷の方は既に私の名義で購入したので、屋敷をチェックしに行くと、まだ引っ越して掃除をしたばかりなのでとても綺麗だった。
なるほど、それであの値段は理解できる。
タウンハウスくらいの大きさで、部屋数も十分足りるし、食糧倉庫も台所もシッカリしていた。
せめて食器類くらいはとネットスーパーで真っ白なモノを買い、フォークにスプーンなどと言ったものもひと揃えしたし、後は料理用のボウル等もひと揃え出した。
後は15人分のベッドを組み立て済みで購入し、枕と布団も購入。
これで寝る所は何とかなるだろう。
「料理の事はさっぱりだから、カオルがいてくれて助かるよ」
「ふふふ。お昼には来られるって言っていたから、お腹を空かせているかも知れないわ。簡単に作れるスープとパンくらいは出してあげていいわよね?」
「気遣いが出来る良いオーナーだと思うよ」
その言葉にニッコリ笑い、屋敷を出て孤児院から居住空間に入り、お昼の準備を行う。
15人となると簡単な具沢山スープを今から寸胴鍋3杯分は作った方が良いだろう。
それにオーガ肉の焼肉のタレで味シミさせた手抜き料理にサラダ。
後は困った時の大量買いのクロワッサン!
「ヴィーザル! ミラーちゃん3人程お願い」
「まさか本当にもう雇ったのか?」
「うん、15人のサル獣人さん達」
「ふむ、人前に出るのを嫌がるサル獣人は多い、朝の屋台などはどうするんじゃ?」
「屋台はしないわ。このウエスタンではね」
「と言うと、お店するんですかー?」
「そういう事~」
「「ほう~?」」
「まぁまぁ、何事も一歩からね」
そう言って野菜タップリ中華スープを作っていく。
【本物の】潮風スープを今度作って貰おう。
その為にも、私たちが食べている味を知って貰うのだ。
その一心で中華スープを作り、全員屋敷で食べられるように大量に作ってからアイテムボックスに入れ込んで、昨夜の残りのビーフシチューも少し味見して貰おう。
これはこれで人気が高く、ほんの少し残ったくらいだけど。
そんな事を思っていると、あっという間に昼前になり、出来上がった料理を持って外に出ると、フェンリル教会の隣のタウンハウスを見て呆然とする15人程の方々が。
「すみません、遅くなりました?」
「え! あ、えっと」
「オーナーのフェンリルです。名をカオルと言います」
「お、オーナさんでしたか! この度は我々を雇って頂き本当に感謝しております!」
「いえいえ、ではこちらのタウンハウスをお貸ししますので、家と思って使って下さい」
「このタウンハウスで、我々が使っていいのですか?」
「はい、衣食住を賄うと言ったはずですが……」
「いえ、有難くお借りいたします!」
「では中へどうぞ」
こうして彼らを招き入れ、まずは厨房にて挨拶となった。
リーダーはカルロさんと言う45歳の方で、弟のヘンリさんと、両方家族で厨房を任されて生きてきたらしい。
サル獣人は人間に近い為、雇って貰える職業がとても少ないんだとか。
「それで、俺達はどこで仕事をすればよいのでしょうか」
「まずは研修を受けて貰います」
「研修……ですか」
「はい、私はこのメンバーの料理を一人で担当しているんですが、正直味には煩い方です。彼らも私の料理で慣れているので舌は肥えてます」
「つっても、塩コショウくらいの料理だろう?」
「いえいえ、そう思われても仕方ないかと思い、簡単ではありますが、料理を作ってきておりますので食べて頂こうかと」
「有難い、もう数日あまり食べられてなくて」
「では、お皿とか用意しましょう。まずは食べながら話せたらと思います」
こうして料理をアイテムボックスから出した途端、全員のお腹が鳴り、香りを嗅いで「知らない料理ですね」と口にしていた。
それもそうだろう。
こちらにしてみれば異世界の調味料を馬鹿にしてはいかんよ。
「中華スープとオーガ肉の甘辛炒めにサラダ、後はパンとなります。では、頂きましょう!」
さて、どんな反応が来るのか……でも相手は料理人だもの、覚悟はしないとね!
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